弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【書評】「悲嘆の門」(宮部みゆき)

2018年02月28日 08時57分15秒 | 書評
おはようございます!
日差しが心地よい今朝の湘南地方です。

さて、弾丸出張から帰ってきたら今日はもう月末。
明日から3月だなんて。。。。

そんな出張の移動の間でちょこちょこと読んだ「悲嘆の門」。
年末年始のために買った本だったけど、2か月遅れでの読了。

もともと予備知識なしに読み始めたのだけど、これ、「英雄の書」と同一世界なのね。
「模倣犯」のようなガチガチのミステリーかと思って読み始めたらプルプルなファンタジーだった。

あらすじについては、ちょっとググるとネタバレも含めて色々書いているので詳述は避けるけど、こんな感じ。
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サイバーパトロール会社「クマー」でアルバイトを始めた大学一年生、三島孝太郎。
殺した後で死体の足指等を切断する連続殺人と深くかかわっていくことになる。

一方、元刑事である都築は退職後、ずっと調子の悪かった足をかばい、手術の順番を待ちながらも、時間を持て余し気味にゆったりと過ごしていた。
元刑事ということもあり、町内会長に廃墟ビルのてっぺんにあるガーゴイル像が動くという情報があるので、一緒に見てほしいと言われ、事件に巻き込まれていく。

そして、孝太郎の知っている人物にまで、連続殺人の魔の手が伸びていく。
孝太郎はこの世のものではないものと「取引」をし、犯人に復讐したいと願い、事件を解決しようとしながらも、しだいにこの世の世界ではない世界に引き込まれていく。

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ネタバレにならない程度に抽象的に書くと却って判りにくいな…。

物語を綴ることを生業とする作者の、「言葉」に対する哲学を垣間見ることのできる作品。
ミステリーだと思ったらファンタジーだったのでがっかりした、という声も少なからず聞こえる(実際私もちょっとそう思った)。

でも、作者の軸足が「世相を切ること」にあるのではなく、
小説家としてどっぷりとかかわってきた「言葉」と「物語」に対する想いを綴ることにある、と考えながら読むならば、
ファンタジーとしての描写こそが宮部みゆき自身のリアリズムなのかな、と思った。
実際彼女には、どす黒い感情が行きかっている掲示板やSNSの画面からは、赤い毒虫がうねって出てきて見えているのかもしれない。

“言葉を発して終わりじゃなく、発した人の中にも、その言葉は蓄積されていく。”
という、非常にはっとさせられる一節があった。

俗っぽく言うと「言霊」とかになっちゃうんだけど、作者が作品を通して伝えたいことはちょっと違うんじゃないかなと思った。
もっとこう、「言葉」を紡ぐことの重みというか。
まったく違う角度から「言葉」に接している身としてもいろいろ頭にめぐる一節。
コメント
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