弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】混同の範囲

2020年05月13日 08時42分04秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
今日もやや蒸し暑い@湘南地方です。

今週から完全に衣替え。基本半袖に移行ですな。

さて、今日はこんな記事

(日経電子版より引用)
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「Re就活」と「リシュ活」 商標権侵害で訴訟

就職活動に関する2つのサイトの間で商標権を巡る訴訟が争われている。20代向け転職サイト「Re就活」(リシューカツ)と、大学生が履修履歴を登録する就職支援アプリ「リシュ活」(リシュカツ)。読み方が似る一方、使用される文字や対象とする利用者などは異なる。サービスを混同する恐れがある範囲をどう考えるかのケーススタディーにもなりそうだ。

(以下略)
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(引用終わり)

「Re就活」のサイトはこちら
「リシュ活」のサイトはこちら

うーん…称呼類否の議論でも、「美容院」と「病院」間違えるか…? ってレベルの話にも思われるけど、
一方が(ここでは「Re就活」が)周知だと、これに“タダ乗り”している、という判断になる可能性はあるんだよなぁ。。
そのあたりの、周知性に関する個別具体的な事情は分からないけれど、
その要素を除いて考える限りは、称呼ですら非類似だと思うけどなぁ…。
※実際、「リシュ活」(登録第6179363号)の審査経過でも、情報提供により一旦4条1項11号の拒絶理由が出ているけれど意見書で覆って登録に至っているわけで。

「〇〇活」の表現自体は極めてありふれているところ、「リシュ活」もその並びの言葉としてまずは把握される。
「リシュ」が何を意味しているかは即座には理解できないから「リシュ活」全体で一つの造語として認識される。

一方「Re就活」も造語ではあるものの、“再び”の意味を想起させる「Re」と、“就職活動”の略語である「就活」とを組み合わせた語であることは
容易に把握可能。

つまり、観念としては双方とも造語なのでそもそも対比はできないものだけれど、
敢えて意味を取った場合でも、その意味するところは明確に異なり、混同の余地はなさそう。

外観も、詳細省くけど明白に異なる。

取引者/需要者の注意力、という観点でみても、
・求職者(就活中の学生/第二新卒)が需要者であるサービス[求人情報の提供、就職に関するセミナー 他]についてみれば、
 それぞれの需要者は異なる
・求人企業が需要者であるサービス[求人活動・採用活動及び人事に関するコンサルティング 他]についてみれば、
 需要者=求人企業、は一致する。しかし取引で提供される具体的なサービスは異なる
つまり、抽象的な意味で“就職に関するサービス”という捉え方では一致するものの、その詳細は異なる。

そして(ここが重要なポイントの一つだと思うが)、
求職者(学生/第二新卒)であっても求人企業であっても、
それぞれに通常有する注意力を想定すれば、混同の可能性は低いように思われる。
“求人を出す企業内で、部下が上司の指示を聞き違えて発注する可能性が高い”という主張は、ちょっと厳しいんじゃないかな、と。

というわけで、周知商標へのフリーライドの議論でバイアスがかからない限りは混同可能性の主張は厳しいように思われる
(仮に「Re就活」が周知だと認定されたとしても、それは飽くまで前提条件であって具体的な混同可能性の主張は苦労しそう)。

ともあれ、今後の動きをケアしておきたいと思います。

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