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【知財記事(著作権)】編み物著作権問題、法廷へ

2020年08月22日 09時32分20秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
今日も暑いぞ! @湘南地方です。

今朝は公田オフィスにて作業中。

さて、今日はこんな記事。

(IT media NEWSより引用)
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編み物動画著作権めぐり、YouTuber法廷闘争

動画投稿サイト「YouTube」で活動する「YouTuber」の富山県の女性(42)が投稿した動画を削除されたのは、該当しない著作権侵害を申し立てされたためだとして、京都市東山区の40代のYouTuberの女性らに慰謝料など110万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしたことが19日、分かった。



訴状などによると、原告と被告はともに編み物を行う様子を動画撮影し、公開しているYouTuber。原告女性がポーチとブックカバーを作製する様子を撮影した動画2本を巡り、被告女性が2020年2月、自身の著作権を侵害しているとして同サイトに通知。これにより動画は削除された。
(以下略)
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(引用終わり)

事の詳細を熟知しているわけではなく、また「編み物」という分野に決して明るいわけでもないので、
ある程度側面情報も紹介しながら。

編み物の著作権について、編み物ファンの方々の中でもかなり前から話題に上がることはあった様子。
例えば2011年のこちらのブログにはこんなことが書いてある。

(ブログ「いちご日和」より引用)
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だって、編み物なんて早い話が組み合わせの問題で。
多少違いはあれども、この毛糸にはこのくらいの太さの針で、だいたいこのくらいの目数で編むというのはやっぱり決まってくると思うのですよね。
編み方についても、結局は数パターンの編目をどのように組み合わせるか、ですから100%オリジナルなんて果たしてできるんだろうかと・・・。
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(引用終わり)

なるほど。Wikiなどを見ていても、産業としての編み物の期限ですら16世紀フランスまでさかのぼることになる。
その後連綿と紡がれてきた歴史の中で様々な編み方が考案され発展を遂げ、行きつくところまで行きついていることは想像に難くない。

編み物の著作権について判決例を見てみたら、それっぽいのが1件だけヒット。
知財高裁まで争われている(H24(ネ)10004号)。
そして、こちらのブログにとても丁寧にまとめられている。
…正直、上記ブログの説明で十分過ぎるくらい十分。
一応判決の要旨としては以下の通り(原審=H22(ワ)39994号)

[編み物の著作物性について]
原告編み物においては,編み目の方向の変化,編み目の重なり,各モチーフの色の選択,編み地の選択等の点が,その表現を基礎付ける具体的構成となっているものということができる。そうすると,原告編み物は,これらの具体的構成によって,上記の思想又は感情を表現しようとしたものであって,これらの具体的構成を捨象した,「線」から成る本件構成は,表現それ自体ではなく,そのような構成を有する衣服を作成するという抽象的な構想又はアイデアにとどまるものというべきものと解され,著作物性の根拠となるものではない。

[編み図の著作物性について]
原告編み図を美術の著作物としてみた場合,上記展開図は,直角三角形二つの最大辺同士を合わせて形成される不等辺四角形五つを,直角三角形の鋭角を中心点に合わせて並べて正五角形に近い形(正五角形の一辺に切り込みの入った形状)とし,これを横に二つ並べた図形を直線によって描いたものにすぎず,これにその他の説明のための文字,記号等を含めて考えてみても,その具体的表現において,「美術の範囲に属するもの」というべき創作性を認め得るものではない。

また,原告は,原告編み図は図面の著作物として著作物性を有する旨も主張する。図面の著作物については,図面としての見やすさや,編み方の説明のわかりやすさに関する創意工夫が表現上現れているか否かによって創作性の有無を検討すべきものと解されるところ,…原告編み図は,編み図における一般的な表示方法又は表示ルールに従い,他の編み図でも一般的に採用されている構成によって,原告編み物の作成方法を説明したものであると認められ,図面としての見やすさや,説明のわかりやすさに関し,特段の創意工夫を加えたものということはできず,図面の著作物としての創作性を認めることはできない。

まあ今回の争いが、編み物自体の話なのか、それを紹介する動画に関する映像の著作物の話なのかちゃんと把握していないのでなんとも言えないのだけども。。
事案の性質として今回は著作権侵害それ自体が争われているというよりは、YouTubeに著作権侵害申立てをしたこと(+YouTubeがこれに応じて動画配信停止したこと)が争われているものなので、そのあたりも結論にどう影響するのかは今どき感のある事案。



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