弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【どれだす?】H24(行ケ)第10326号【あでだす】

2012年11月21日 13時53分01秒 | 実務関係(商・不)
裁判所HPにアップされてましたね。

本件、「第4 当裁判所の判断」につき要点をまとめると以下の通り。

【両者の主張の整理】
<被告>
本件商標は、
(1)「4本」の細長い台形様図形から構成されている
(2)4本の台形様図形が細長いものであることもあり、
   全体の傾斜角度も比較的緩やかなものとして看取される。
(3)各台形様図形にはステッチ状の模様と多数の小さな丸点が表されている
という点で引用商標とは明確に相違。

<原告>
(1)→ストライプの本数が4本か3本かの違いは大きな相違点でない
    本件商標の指定商品(=履物,運動用特殊靴)では、靴の甲の側面に
    商標を付す表示態様が多く採用されており、
    4本のストライプの間には3つの余白部分が存在し、
    「3本のストライプ」「3本線」と認識されるおそれが高い
(2)→原告らは3本線商標を様々な異なるデザインで長年使用しているから
    需要者は3本線=原告の商品と認識・理解する
(3)→ステッチ状の模様=ありふれた携帯
    多数の小さな丸点=原告使用商標のデザインとして古くから採用されている
    パンチングの模様に相当する

【認定(特に取引の実情について)】
① 運動靴においては、靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用されている
② 商標の上下両端部は視認しにくい
③ 4本線商標の表示態様によっては、4本線か3本線か、外観において紛れる
  場合が見受けられる

【判断】
① 3本線商標は、アディダスの運動靴を表示するものとして著名であった
② ストライプの長短、幅等の相違は、3本のストライプが与える印象と比較して
  看者に異なった印象を与えるほどのものではない。
③ 商標の上下両端部の構成が視認しにくいから、4本線と3本線を区別することが困難

④ ステッチ状、丸点ともアディダスの運動靴にも用いられている例も存在する

【結論】
 単に本件商標と引用各商標との外観上の類否を論ずるだけでは足りない。
 両商標の構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引実情等を
 総合判断すると、混同を生ずる恐れがあり、商標法第4条第1項第15号に該当。




所感。

1.「多数の小さな丸点」が「4本線」の中に施されているからこそ、
  当該部分がストライプであると容易に認識できるのでは?
  カラーで出願していたら、結論は変わっていたのだろうか?
  このあたり、
  「丸点」や「ステッチ」についてアディダスの識別標識として認定しているわけでは
  ないことから、どちらに転がってもよさそうなところ。

2.「3本線により構成される商標が全て原告の独占するものではない。」
  との被告の主張にもかかわらず上記結論となっている。
  しかし、直ちに
  「3本線により構成される商標が全て原告の独占するもの」
  というわけでもないことは、よく注意しておくべき。
  本件の射程距離が、すべての3本線に及ぶわけではない
  (とはいえ、他社に対するけん制効果としては効きすぎるくらいに効くのでは?)

3.運動靴において商標を甲の側面に付することは一般的であるとしても、
  被告の使用態様をそこに特定して論じることは妥当なのだろうか…?
  判決ではニッセンの実際の使用態様が確認できないので何とも言えないが、
  というか実際被告もそのように使用していたものというのは想像に難くないが、
  「被告の使用態様」は「取引の実情」として考慮すべきことではないように思われる。
  むしろ「使用態様」により混同のおそれが生じる、ということであれば、
  無効審決ではなく不正使用取消によるべき旨示唆すべき事案に思われる。
  換言すれば、混同を生じる要素が「登録商標」そのものにあるのではなく
  「その登録商標の特殊な使用態様」にあるのであれば、それは不正使用の事案ではないかと。。


以上、ちょっとチャレンジな所感を述べてみました(笑)
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