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日本株「10兆円クラブ」最多19社 新たに日立や三井物産

2024-07-05 12:47:10 | 日本経済・金融・給料・年金制度

株式時価総額が10兆円以上の日本企業が増えている。日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)がそろって史上最高値を更新した4日時点では19社と過去最多で、2023年末の10社からほぼ倍増した。

時価総額上位の顔ぶれは、その時々の産業構造や投資家の成長期待を映す。日立製作所三井物産などが今年初めて「10兆円クラブ」に加わり、その顔ぶれは多彩になっている。

 

時価総額は株価に発行済み株式数をかけたもので、将来の利益期待をもとに投資家がつけた企業価値を表す。4日は東証プライム市場全体で1007兆円となり、初の1000兆円台に乗せた。

 

 

 

 

首位のトヨタ自動車は1月、NTTが上場直後の1987年5月に記録した日本企業の歴代最大時価総額(48兆6720億円)を更新した。

トヨタは今年2月に50兆円、3月には60兆円と大台を塗り替えて63.1兆円まで駆け上がった。ハイブリッド車(HV)がけん引する商品力や値上げで収益力を底上げし、2024年3月期には連結営業利益が日本企業初の5兆円台に乗せた。

 

直近の時価総額は53.5兆円と認証不正問題が影を落として伸び悩むが、日本株の中では頭一つ抜けた存在だ。

過去の株高局面を振り返ると、バブル経済期の89年末とIT(情報技術)バブル期の00年末、10兆円企業はそれぞれ3社しかいなかった。

 

89年はNTTを筆頭に銀行、電力など規制業種が時価総額上位を席巻していた。00年末になるとソニー(現ソニーグループ)や松下電器産業(現パナソニックホールディングス)など世界で稼ぐグローバル企業が台頭した。

 

 

 

時価総額10兆円以上の企業はこの1年で急増した。事業ポートフォリオの入れ替えで収益力を高めたり、株主への利益還元や対話を強化したりしてきたニッポンの伝統企業が、海外投資家の評価を高めてきた成果だ。

日立は終値での時価総額が1月に初めて10兆円に達し、7月4日時点で17.2兆円とさらに7割強を積み増した。

 

東京海上ホールディングスも5月に初の10兆円クラブ入りした。政策保有株の積極的な売却や海外での収益力向上が評価されている。総合商社の伊藤忠商事や三井物産も今年初めて時価総額を10兆円に乗せた。

 

 

フランス資産運用会社カルミニャックのクロスアセット運用責任者、フレデリック・ルルー氏は、株式持ち合い解消を例に挙げ「企業価値創造につながるガバナンス(企業統治)の前向きな変化に、投資家の理解が広がっている」と評価する。

デフレ脱却など経済構造の好転に着目し、日本株への投資配分を高めてきた。

 

89年末に時価総額上位10社の過半を占めていた都市銀行は、バブル崩壊後の株価低迷と金融危機を経て再編が進んだ。直近のランキングでは三菱UFJフィナンシャル・グループが22.5兆円で2位につける。

元立花証券執行役員で1970年代から日本株に向き合ってきたケイ・アセットの平野憲一代表は「バブル期の銀行は『資産』とともに株価が膨張していた。今はデフレ脱却で『収益』が評価されており、極めてまっとうな株高だ」と話す。

 

日本株の特徴は主力銘柄に「ニューフェース」が少ない点だ。00年以降に創業した企業は10兆円クラブに皆無で、時価総額1兆円前後まで広げてもエムスリーMonotaROぐらいしかない。

米国では「マグニフィセント7」と呼ばれる巨大テック7社のうちメタテスラの2社が00年以降の創業だ。

老舗企業の変身への評価だけでなく、新進気鋭の企業をどう飛躍させるかが課題となっている。

(篠崎健太、今堀祥和)

 

 


一度は破綻→中年女性を虜 ハルメク、出版業で一人勝ち

2024-07-05 12:32:07 | 日本の企業・世界の企業、ビジネスマン、技術者


逆襲の始まりはプロ編集者の山岡朝子氏の編集長就任

 

経営破綻から15年、頂に立った。ハルメクホールディングスの月刊誌「ハルメク」の販売は45万部を超え、女性誌で首位だ。

2023年までの6年で3倍に増えた。その間、日本の雑誌の販売部数は4割減った。出版業の苦境が噓のようだ。

 

読者層は50代以上の女性だ。ファッションから生き方までシニアの「お役立ち情報」のみをわかりやすく掲載する。

通信販売も手掛け、読者を物販に導くことで独自の「シニア経済圏」をつくった。利用者は年135万人に達する。シニア向けでは国内有数の規模だ。

 

ゲームの利用者増を狙うポケモン(東京・港)に日本ケロッグ、シニア層を開拓したい企業から連携の依頼が引きも切らない。

今や売上高の9割が通販だ。雑誌と通販を好循環させ、したたかに成長を続ける。

 

どん底の時代がある。09年、65億円の負債を抱えて破綻した。当時の社名はユーリーグ。社員の2割が会社を去った。投資ファンドに買収されたが部数は伸び悩んだ。

 

 

逆襲は17年、山岡朝子氏を編集長に招いたことに始まる。

雑誌の創刊を2回、再建を6回経験したプロ編集者だ。山岡編集長は言う。「読者が何に悩んでいるか。全ての誌面はここから始まる」

 

毎号2000枚ほどの読者調査を分析し、加齢に伴う不安への解決策を示すにはどうすべきか考え抜く。

誌面づくりには通常の月刊誌の2倍、6カ月をかける。スマートフォンの使い方ならタップの力加減まで記し「指の腹でゴマを拾い上げる感じ」と表現した。

 

次の飛躍の舞台を海外に定める。シニア消費は中国だけで30年に約700兆円まで拡大する。23年、商品の試験販売を始めた。日本発のシニア経済圏に世界を取り込む。

 

 

株価上昇率1位 ジャパンエンジン、逆転の「脱炭素」船

AIでもない。半導体でもない。忘れられた産業だった。創業から114年、船舶のエンジンを造り続ける。

 

 

株高に沸いた23年、ジャパンエンジンコーポレーションは3900社ある上場企業で株価の上昇率が1位になった。

これまで大きく上下してこなかった株価が1年で5.8倍だ。古豪が仕掛ける「ゲームチェンジ」の衝撃がいかに大きいかわかる。

 

アンモニアを燃料とする大型船の脱炭素エンジンの試験運転に世界で初めて成功した。

陸海空の移動手段のうち、「海」の船舶は脱炭素が遅れている。アンモニアだけでエンジンを動かすことができれば二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにできる。世界の懸案を一気に吹き飛ばす夢の技術だ。

 

アンモニアは重油の2倍燃えにくく、効率よくエンジンを動かすことが難しい。立ちはだかる壁を長年培ってきた燃料の噴射技術で解決した。

新エンジンの開発に投じたのは純利益の5年分。川島健社長は言う。「会社の未来をこの技術に賭けた」

 

長い冬の時代を耐えてきた。造船業の黄金期は昭和とともに去った。エンジンの生産も低迷し、リーマン・ショック後の5年間だけで4割減った。

前身の神戸発動機は12年度から3年連続の最終赤字に陥った。工場を閉め、3割の従業員が会社を去った。新エンジンを生み出したのは生存への強い意思だ。

 

26年、新エンジンを積んだ初の輸送船が就航する。船やエンジンの生産で日本が一敗地にまみれた中韓勢はこの技術を持たない。競合は欧州の2社だけだ。脱炭素は世界の産業秩序を一変する。船の心臓部で世界標準を狙う。そして主役であり続ける。

 

 

オワコンと呼ばせない 古豪企業、時価総額2.6倍の逆襲

古豪企業が逆襲に出た。創業から100年以上の主要企業の時価総額は10年で2.6倍となり、全体の伸びを大幅に上回った。

退路なき改革が経済成長の原動力になりつつある。米中対立や人工知能(AI)の進化、変化に駆り立てるのは激変する世界で生き抜く意思だ。オワコンとは呼ばせない。未来へ向かう企業の力が大きなうねりとなってきた。

 

古豪の復活が鮮明だ。株式市場での存在感が高い主要100社(TOPIX100)のうち、創業100年以上の企業の時価総額は5月末までの10年間で157兆円増えた。

伸び率は全体の2.3倍を上回り、アップルなど米国の主要100社(S&P100、2.9倍)の伸びに迫る。

 

稼ぐ力も強い。2023年度までの10年間で古豪(金融除く)の純利益は2.5倍、売上高は1.5倍になった。いずれも全体(2倍、1.4倍)を上回る。

古い会社の再成長が経済のけん引役になっている。資金をM&A(合併・買収)などに投じ、次の成長への布石を打つ動きも目立つ。

 

 

 

キリンホールディングスは6月、2200億円で健康食品大手のファンケルの買収を決めた。

創業から139年、ビールの王者だった企業が成長領域を酒類以外に移す号砲になる。三菱重工業は造船を縮小し、工作機械事業も売却。発電設備や防衛分野に投資を集め、24年度まで2期連続の最高益を見込む。株価は1年で3倍になった。

 

日米の主要企業のうち創業100年以上はともに5割を占める。経済の土台だ。

同時に経済成長にスタートアップの勃興は欠かせない。マクロ経済はミクロ、すなわち企業活動の集積でできている。新興の伸長と古豪の自己革新がせめぎ合ってこそ活性化する。

 

オワコン。時代に取り残されたことを意味するこの言葉はもう当てはまらない。古豪企業や産業が甦(よみがえ)り、再び主役に躍り出た。

【NEO-COMPANY「第2部私たちの逆襲」

 

 

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