2つめは、燃料カプセルまたはhohlraumに強い磁場を印加し、プラズマを閉じ込める技術である。ただし、トカマク式のようにプラズマを完全に閉じ込めることはせず、プラズマが広がる方向を制限するのが目的だ。

大阪大学は2018年に、高速点火と組み合わせた「磁化高速点火」技術を開発。2022年11月にはNIFと共同で、この磁場を使う技術をNIFの設備で検証した。

 

具体的には、hohlraumにコイルを巻いて強い電流を流し、26T(テスラ)という非常に強い磁場を印加した中でのレーザー核融合を検証した(図3(b))注1)。結果として、プラズマの温度が約4割上昇し、核融合反応の効率が3倍になったとする。

「我々の点火技術や米University of Rochesterが研究する『直接点火』方式を使えば、核融合利得を100にできる可能性がある」(藤岡氏)という。

 

注1)今回のNIFの成果では、この磁場を使う技術は用いられていない。
 
 

半導体レーザーで照射頻度を数十万倍に

 3つめが、レーザー光の電力の利用効率や照射頻度を大幅に改善する技術である。「NIFのレーザー光設備は1970年代に開発された古い技術」(藤岡氏)という。LLNL NIFも「現時点の我々のレーザー設備は効率的なものとはいえない」と認める。

 一方、大阪大学では半導体レーザーを使った、ずっと高効率で1秒間に100回の照射が可能なレーザー設備を開発中だ」(同氏)とする。具体的には、浜松ホトニクスなどと共同で開発した半導体レーザーを多数並べ、100Jの出力にする技術は「2022年度中にもメドが付く」(同氏)という。

 

 

実用化が前倒しで進む可能性も

 LLNL自身は、レーザー核融合の商用化に「あと20~30年はかかる」(同研究所ディレクターのBudil氏)とするが、残る課題の解決技術は、既に開発済みに近い状況であるため、もっと早い時期に実用化できる可能性がある。