探査機が撮影した水星。表面を構成する岩石の化学的・物理的な違いを色分けしている/NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington via CNN Newsource
(CNN)
最大18キロの厚さのダイヤモンドの層が水星の地表の下に隠れている可能性があることが、新たな研究で分かった。水星は太陽系で最小の惑星で、太陽の最も近くに位置する。
これらのダイヤモンドは、およそ45億年前に水星が誕生して間もなく形成されたとみられる。水星は、塵(ちり)やガスの渦が高温高圧の環境下で結合して惑星となった。
この時、生まれたばかりの惑星の表面には、深部のマグマの海から浮かび上がった黒鉛で出来た地殻があったと考えられる。
今回研究チームは、実験によってこの環境を再現。使用した機器は通常、極端な圧力をかけた場合の物質の反応を調べるためのものだが、同時に合成ダイヤモンドの製造にも使われる。これによって水星のマントルの深部で想定される高温、高圧の環境を作り出せるという。
研究チームはシリコンやチタン、マグネシウム、アルミニウムを含む合成混合物を黒鉛のカプセルに入れ、初期の水星内部における理論上の組成を再現した。
その後、カプセルに地球上の約7000倍の圧力をかけ、温度も最大2000度にまで上昇させた。これは数十億年前の水星の地殻付近で発生していた圧力、温度の条件に重なる。
研究者らが溶けたサンプルの化学的組成などを電子顕微鏡で調べたところ、カプセルを形成していた黒鉛はダイヤモンドの結晶に変わっていたという。
水星の表面が灰色なのは、広範に存在する黒鉛に由来する/NASA/Johns Hopkins University Applied
Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington via CNN Newsource
水星は太陽系の中で地球に次いで最も密度の高い惑星であり、その内部は巨大な金属の核(コア)が全体の85%を占める。
ベルギーのリエージュ大学の地質学部を統括し、今回の研究結果を報告する論文の共著者でもあるベルナール・シャルリエ氏によれば、水星は月や火星と比較して科学者の間での知見が極めて限られている。
ただ他の地球型惑星と異なり、太陽に非常に近いことから酸素量が極端に少なく、それが化学的な組成に影響を与えているという。
米航空宇宙局(NASA)によるこれまでの調査から、水星は炭素が豊富で、その表面が灰色なのは広範に存在する黒鉛に由来することが分かっている。
黒鉛は炭素で形成される。ダイヤモンドもまた純度の高い炭素で出来ており、特定の温度と圧力の下で作られる。
過去のデータで確認されていた水星における硫黄の存在もまた、今回実験を行う上での重要な知見となった。
地球の条件と異なり、硫黄が豊富な水星の環境を再現した実験では、硫黄を含まない場合よりもサンプルの融点が下がった。
シャルリエ氏によれば、高圧に対して比較的低温という条件は、安定的なダイヤモンドの形成にとって好ましいものだという。
研究論文では、上記の二つの要因から水星でダイヤモンドが形成される可能性があると結論する。
ダイヤモンドの層の厚さについて、研究では15~18キロとしているが、これはあくまでも推測に過ぎないとシャルリエ氏は警告する。水星の核が依然として冷え続けるのに伴って、ダイヤモンドの形成は今なお続いているからというのがその理由だ。
それらのダイヤモンドは採掘できるのかという疑問に対し、同氏は将来技術が進歩しても不可能だろうとの見方を示す。ダイヤモンドが埋まっているのは深さ約500キロの地点だからだ。
それでも、地球で起きている現象から類推するなら、水星でも地下深くのマントルが溶けて発生した溶岩の一部が地表に上昇する際、ダイヤモンドを運んでくると考えるのは合理的だとシャルリエ氏は指摘する。
CNN記事2024.08.02より引用