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世界大戦の主原因は石油 米国石油業界の暴れ馬

2023-06-26 19:55:34 | 麻薬・阿片・石油

タイトルにある米国石油業界の暴れ馬とは、ロックフェラー財閥のスタンダード石油のことではありません。 米ハリー・シンクレアの事です。第一次世界大戦が終わり、第二次世界大戦が始まる前の頃の話です。

第一次世界大戦の中途で自壊を起こして没落したロシア帝国が、レーニンの登場によって暫定国家的体系を樹立し、社会主義国家として世界に再出現した時、石油帝国主義の将軍たちは困惑の極みに達しました。

ロイヤル・ダッチ・シェルのデターディング(元々は蘭ロイヤル・ダッチ石油の社長。 後に英シェル石油、そしてロスチャイルドが資本参加し、合弁会社のロイヤル・ダッチ・シェルとなり、その責任者)も、ロックフェラーも、旧ロシア帝国の資本家が持て余している石油利権を捨て値で買い込んでいましたが、ソビエトは国内の全産業を国有化して外国資本主義の侵入を禁止しました。

1922年にはジュネーブ会談が行われ、英・米が主となってその利権回復を図りましたが、遂に成功を観ずして終わります。 引き続いて、ハーグ会議となり、ソビエト代表のリトヴィノフとデターディングの間に了解ができ、社会主義国家の法令によって、没収された利権は返還することはできませんが、旧所有者を一括して一大会社を組織するという契約ができそうになりました。

スタンダード石油はこれに反対し、結局この会議も決裂してしまいました。 ロイヤル・ダッチ・シェル及びスタンダード石油の力をもってしても、ソビエトのために不法にも没収されタ石油利権を回復することはできなかったのです。 

このような情勢の下で、米国のオイルマンであるハリー・シンクレアが威風堂々と首都モスクワに乗り込むでいったことは、世界を驚かせました。 シンクレアは米国石油を支配するスタンダード石油に属せず、完全に独立独歩の道を歩んできた新参者です。

彼はカンザス州南部の小都市で、薬屋の子として生まれ、当時流行の石油に手を染め始めたのは、明治初期の1903年頃でした。 石油産業が幕開けした頃、石油は薬として取引されていました。

話は、少し脱線しますが中東・欧州もエジプトのミイラも薬として取引され、信じられないでしょうが、薬としてちびちびと食べていたのです。 化学(当初は錬金術)や医学(医学の父ヒポクラテス」:BC460-bc370)はギリシア・ローマ時代からありましたが、

今日のような自然科学として理論に裏打ちされた化学・医学は17世紀-20世紀に西ヨーロッパで各理宇されのが最初です。ニュートン力学、工学、電磁気学の発展と同じです。20世紀の科学の第一は『生命科学』が姿を現し、今日では、この生命科学やITが最先端であり、大学受験の難易度もこの分野である医学・薬学などが世界的に最も高く、社会人になっても企業の収益、研究者の給料、医療関係者は高給取りとして知られています。

 話を、米・石油業界のハリー・シンクレアに戻します。 の彼はインディアンを欺いてはオクラホマ州に借地を広げ、次々にデリック(石油業界のクレーンの一種)を建てていきました。 こうして、彼所有の油井は増加していき、製油所も経営するようになって、プレイリー商会が誕生します。

彼の会社の株は、ウォール街でも知られるようになりました。 シンクレアはロックフェラーに圧力をかけられるも、発展の一途をたどり、40歳にならずして5千万ドルの財産を所有するに至り、ドーニーやマーランドと並んで、スタンダード枢軸外に立つ石油王となったのです。

彼の株はウォール街の人気を集めるようになり、遂にはニューヨークの五番街に堂々たるビルを建てるまでになりました。 機を見るに早いシンクレアは、国内石油業がスタンダード石油に席巻されるや、早くも眼を国外に転じて、米国政府が威嚇によって英国海軍を駆逐した後の、中米コスタ・リカに早くも石油開発権を獲得し、ついでメキシコ、sらに南米へ、果ては西部アフリカへと進出していきました。

しかし彼が本命視し目指すところはソビエト(現ロシア)だったのです。

ゲーペーウーのアインホルンの密使が、シンクレアに白羽の矢をたてたことは賢明でした。ソビエトは戦争と国内紛争のために財源が涸渇し果て、どうしても外債を獲得せざるを得ない状態にありました。 

そして、その外債を得るためには、戦争成金の米国の協力が必要だったのです。 シンクレアは時の大統領ウォレン・ハーディングと親交があり、更に米国政界の上層部に多くの人脈がありました。 だkら、ソビエトおよびその密使のゲーペーウーのアインホルンにとっては、シンクレアを抱き込むことは、同時に米国のソビエト承認、そして外資獲得を意味していたのです。

ハリー・シンクレアは上院議員フォール、メエゾン・ディ、アーチボルド・ルーズベルト、ロバート・ロウ、その他のそうそうたるメンバーを引き連れ,汽船ホメリック号の二デッキを買い切り、大西洋を横断し、19223年6月、まずロンドンに上陸しました。

ここには、ソビエト大使レオニッド・クラシンがいましたが、彼は以前バクーで技師をしていた男で石油についてよく知っていました。

彼はデターディングおよびロックフェラーのロシア石油封鎖政府の埒外にあるシンクレアを迎えました。 シンクレアはソビエト全土の石油を独占し、製油業を独占、石油販売所および送油管線(パイプライン)を独占し、ソビエト国内および対外石油の販売をも一手に日着ようとしたのです。

しかし、このシンクレアの要求はあまりに過大であり、かつマルキシズムを奉ずるソビエト建国の理想に反します。 このような要求はクラシン一人の手には負えないので、一行はモスクワ政府の招きに応じて入露することになりました。

19万3千ドルの大金を投じた特別列車が用意され、一行は華々しくモスクワに到達しました。 ソビエトは迎えるに国賓待遇で、一行は旧宮殿に宿泊し、日夜山海の珍味でもてなされ、旅行には特別列車が仕立てられました。

一ケ月内の滞在中に、ソビエト政府とシンクレアの間に了解が成立し、シンクレアはメエゾン・ディを代表として残して意気揚々と本国に引き揚げました。

その後まもなく、リトヴィノフとメエゾン・ディの間に仮協定の調印が行われました。 

 

この協定によれば、ソビエト政府とシンクレアは50:50の株を有する合弁会社を組織し、ソビエト政府は油田およびその装置を出資し、シンクレアは2億3千万ルーブルを出資するとこになりました。

子の利権はグロズヌイ(チェチェン共和国の首都)及びバクーの油田を包含し、かつ国内および外国市場における販売も規定していました。

経営管理は平等に分配され、利益もやはり同じであり、シンクレアはその投資資本に対する利子を得、政府はその財産に対する償却金を得ることになりました。 その利権の期間は49年です。

 

しかも、彼はおまけとして、北樺太における石油開発権を独占することに成功しました。 折から、日本はシベリア出兵につぎ、尼港(にこう)事件(1920年、アムール川の河口にあるニコラエフスクで起こった非正規赤軍による大規模な住民虐殺事件)に憤慨して北樺太を軍事的に占領していたので、当然、日・ソ・米の三ケ国間の紛争を招く結果となりました。

 

続く。 次の投稿予定は「北樺太石油問題」です。

 

 

 

 

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