トーマス・グラバー 第四章 グラバー長崎での活躍 茶葉の再生工場を建設https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/b079ad539190a76d9a3b0e2e685e7fdf
からの続き
五代才助に会う
十一月も終わろうとする頃、マッケンジーは長崎領事のモリソンと船で横浜へ出張した。 グラバーは波止場で二人を見送り、対岸の鮑の浦地区で何やら大きな工場を建設している場面をぼんやりと眺めていた。
と、後ろからグラバーの肩をポンポンと叩く者がいた。 オルトだった。 「グラバーさん、交易所で茶葉が売りに出ていますよ。 見に行きませんか」。 「えっこんな季節に茶葉が売りに出ているとは、二番茶か三番茶でしょう。 安物茶にはあまり興味ないよ」。 しかし、ヒマを持て余していたグラバーは「でも、ちょっとのぞいてみようか」。 「グラバーさん、清国は内乱が今も続いていて、少々安っぽい茶でもよく売れるそうですよ」。
門を入って正面の広場には、いつものように海産物を中心に陶器、漆器、蒔絵、しいたけ、ニンジンなどが無造作に並べられていた。 その一角にムシロの上に茶葉が盛り分けて置いてある。 清国人は祖の茶葉をつかんで色合いを眺めたり。口で噛んでは味を見ていた。 ところで日本人はかなり前から緑茶を好んだ。 茶の若葉を蒸し、焙炉(ほいろ)で乾かしてもみ、緑色を保たせたもの。
しかし長崎に集まる茶葉は緑色ではない。 窯で炒られて変色した黒っぽい茶、要するに粗茶である。 グラバーも口の中で噛んでみたが「これではダメダよね。船中で持たない。腐ってしまう」。
長崎弁の女性の声がグラバーの耳に入ってきた。 見るとおけいさんが、中年の武士と何やら会話している。 グラバーに気付くと「グラバーさん、先日は大変なごちそうに預かり、ありがとうございました。
こちらのお方は運上所に勤めるオランダ通詞の品川様です。 グラバーさんにご紹介したいので今日は私に先日のごちそうのお返しさせて頂きます」。 といい、グラバー、オルト、品川を寄合町の料亭の離れ座敷に招待してくれた。
グラバーもオルトも日本語にはまだ慣れていない。それに対して、お慶、品川も英語はほとんどできない。 しかし人間と言うものは外国語は喋れなくとも、身振り手振りである程度の意思疎通はできるものである。
話題は四人に共通している「茶葉」のこと。 オルトは「おけいさん、来年の五万斤は大丈夫ですか」。 「はい、何としてもかき集めるつもりです」。
テーブルの上に中華料理、西洋料理、日本料理が出た。 グラバーは気の合った連中と飲食するのが大好きで酒が入るにつれて、自分が上海で勤めていたJM商会のスケール(当時の商会としては世界トップクラス)、自分はその長崎代理店の代表者みたいなものだ、と強調してみた。
当面は茶葉に注力するつもりだが、茶葉の輸出は金額的にたいしたことにはならない。 だから将来は一隻、何万、何十万両もする船舶の輸入に注力するつもりだと、アルコールのせいもあるが、少々大物振りをみせようと、ハッタリをかましていた。
グラバーは途中、厠へ立ったが、部屋に戻る時、正面からやってくる日本人に気付いた。 「おや、」見たことのある顔だな」 それは以前、運上所で会ったことのある薩摩藩士、五代才助だった。 五代もグラバーのことをすぐに思い出した。
五代友厚(五代才助)
出所 wiki
五代は、グラバーの手をひっぱって、自分達の飲食している一室へ招じ入れた。
そこには佐賀藩士、中牟田金吾がいた。 五代は帰り際、「グラバーさん、私は明朝マッケンジー商会を訪問したいとおもいますが」 「どうぞお待ちしています」。
翌日、五代才助は若いオランダ通詞を同行してきた。 五代はグラバーへ「現在わが薩摩藩の物産から説明しましょう」。 商品見本の絵図を描いた手帳を出し、
グラバーへ「良く見て下さい。 わが薩摩藩はこれだけ多くの物品を用意できますよ」。
(関連情報)
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02.明治維新の大功労者 トーマス・グラバー フリーメーソンつぃいての活躍
本の 表紙と帯
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03.トーマス・グラバーと明治維新 FACTベースの基礎知識
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この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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