今更ながらですが。
羽海野チカさん作の漫画「ハチミツとクローバー」全10巻。
すごく好きで、キューティーに掲載されていた頃から読んでいて、あれよあれよという間にアニメ化・映画化・ドラマ化された作品です。
「全員片想い」のコピー通り、全員片想い・・・。
切ないとこです。
5人の美大生とその周りの大人の物語。
しばらく手に取ってなかったんだけど、なんでこんなに好きだったんだろう・・・と思い、読み返してみました。
片想いって、どんな人も1度はしたことあると思うのですが。
主人公・竹本くんは同じく美大生の天才といわれるはぐみと会い、恋に落ちる。
でもその恋は、意外な結末で終わる
「うまくいかなかった恋に、意味はあるのか。
消えていってしまうものは、無かったものとおなじなのか」
片想いがやぶれた時、こう思った人はいるのではないでしょうか。
わたしも思いました
「この想いはどこにいくのだろうか?
かなわなかったこの恋に意味はあるの?」
最初は青春ギャグ漫画みたいな感じでありましたが、後半俄然面白くなってきたのが「人が生きる意味」「人生の使い方」というテーマがからんできてからです。
まったく見た目はコロボックルのような小学生に間違われるようなはぐみが、「絵を描く」「ものを創る」ことに対して天命のようなものを持って生きている。
そのはぐみを好きになった竹本君も、自分の進む道、生きる目的を徐々に見出していく。
「恋愛」っていうことばは軽いように思えてしまいます。
主要キャラクターは本気で人と関わって行きます。
それは「ただ好き」というものでは済まされないような、重いものを背負った人間を、その荷物ごと受け止めて背負おう、という覚悟・・・。
自分の過失で夫を亡くし、すべての片をつけたら夫のあとを追うつもりの女性を好きになった真山。
その真山をずっとずっと見つめて、片想いしているあゆみ。
そのあゆみを好きになったものの、どんどん踏み込んでいってその気持ちごと受け止める覚悟を決める野宮。
はぐみのために自分の人生を差し出す決意をした花本先生。
その気持ちに応えるはぐみ。
はぐみを愛している、同じく天才の森田。
面白キャラに彩られておりますが、なかなか重い物語なのです。
うまく言えませんが~
最初はひとめぼれから始まった竹本君の恋。
でもはぐみのすべてが、彼に問いかけ続けた。
あなたはだあれ?(僕は誰なんだ?って)
必死で何かを探しつづけてたはぐみが、竹本君に問いかけていたもの。
自分の進む道を見つけ旅立つ竹本君に、最後にはぐみからありったけの幸せをこめた贈り物。
それをつかみながら涙を流す竹本君。
「かなわなかった恋に意味はあるのか?」
「今ならわかる。あったんだよ ここに」
「はぐちゃん おれは君を好きになってよかった」
ここで物語は終わる。
わたしも「この恋に意味はあったのか?」とむなしい気持ちで考えたことがたくさんあった。
竹本君みたいに「あったんだよ」と思えたこともある。
それは自分がどのくらい相手に関わりたい、深く人生に交わりたいと思ったかに比例するような気がする。
相手を想う事で自分が見える。
自分は何を求めているのか、どうなりたいのか。それが見えてくる。
いろいろ得たことがたくさんあった。そう思える恋がある。
たとえかなわなくても。
「ハチミツとクローバー」、未読の方は一度読んで見てほしいな。
ちなみに、当時夫に片想い中だったわたしはあゆみに思いっきり感情移入して、涙していたものです