私事で恐縮ですが、先日、大学(通信教育部)を卒業しました。2020年の秋入学ですので、4年半在籍していたことになります。3年次になって初めてスクーリングでキャンパスに行ったのですが、東京西部の、敷地内に芝生や木など緑がたくさんあるザ・大学といった感じで気に入ってしまいました。スポーツで有名とかでもなく、難易度は高くもなく低くもなく、ぶっちゃけ全国的な知名度はありませんが、いくつか選択肢があった中でそこを選んで大正解でした。10代のときに海外留学していた時はカレッジ付属の語学学校だったのですが、カレッジの施設(カフェテリアや図書館や売店など)を使ってもよく、たまにカレッジのほうの教室で授業もあったりして、キャンパスライフ「っぽい」ことは経験していたのですけどね。
以上、遅れてきた青春。
さて、ロザムンド・ピルチャーさん。スコットランド在住の女性の作家で、名前をまったく知らずに手にした「9月」という小説を読んで、特に何も起こらずに話は淡々と進んでいくのですが、気がついたら夢中になって読んでいて読み終わったらなんだか心があったかくなっている、そんなことがありました。
この作品は短編集で、舞台はイギリス。ジーニーは恋人とスキーに来ましたが、じつは運動が苦手で恐怖のあまりリフトには乗らずに黙って下山してしまいます。レストランでコーヒーを飲んでいると、老紳士が話しかけてきます。ジーニーは老紳士に恋人に黙って下りてきたことを説明すると「実はむかし不思議なほどあなたに似た女性を知っていた」と話しはじめ・・・という「あなたに似たひと」。
アリスンは夫の会社の社長夫妻を夕食に家に招待する準備に大忙し、料理の仕込みもテーブルフラワーの予約も済んだ、と思っていたら、家の外に車が停まり、社長夫妻が家の玄関に向かってくるではありませんか。明日だと思っていたのに今日だったの?・・・という「忘れられない夜」。
ヴェロニカは夫を亡くして今は息子と娘の3人暮らし。家を分割して貸したらどうかという友人から提案があり、どういう人かと聞くと大学教授で執筆のため1年間限定で部屋をさがしているとのことですが・・・という「午後の紅茶」。
イーヴの娘のジェインはスコットランドに住んでいて現在妊娠中。ジェインの夫から早産かもしれないと電話があって、スコットランドに向かうことに・・・という「白い翼」。
ビルはクローダという女性と結婚することになったのですが、クローダは未亡人で、ふたりの娘がいます。4人で暮らし始めたある日、娘のペットの金魚が死んでしまって、ビルはお墓を作って埋めようと・・・という「日曜の朝」。
8歳のトビーは、ソーコムさんが亡くなったという知らせを聞きます。ソーコムさんはおじいさんの農場主ですがビルの親友。トビーの姉のヴィッキーは休暇で帰省中していました。ソーコムさんが亡くなったことは悲しいのですが、じつはソーコムさんの後を継ぐことになる孫のトムとヴィッキーはけんかして絶縁状態で・・・という「長かった一日」。
編集者のエリナは、恋人でホテルマンのトニーから週末の旅行に誘われます。エリナとトニーとの間には結婚の話題は出さないという協定があり、週末の旅行には行くのですが「ただしプロポーズとかは絶対になし」と念を押すのですが・・・という「週末」。
どの作品も、読んでいてとても心地よく、読み終わったあとにほんわかします。なんといいますか、文章が優しいんですね。まだ読んだことがないという方にオススメです。英国文化圏に滞在したことのある方には特に。