晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

トマス・ブルフィンチ 『アーサー王物語』

2014-04-04 | 海外作家 ハ
アーサー王という名前はたびたび目にしたりするのですが、じっさいは
「で、誰?」状態でした。
薄っぺらい知識ですが、円卓会議、エクスカリバー(本書では”エスカリバー”)
ぐらいしか知りませんでした。

六世紀ぐらいにブリテンにいたらしいのですが、まあ真偽のほどはさておいて、
ちょっと前にイギイスのニュースでエクスカリバーの刺さってた岩が発見された
とかいうのがありましたね。

アーサー王は、ブリテン王コンスタンスの孫にあたります。コンスタンスの長男
モインズが王位を継いだのですが、家来の裏切りにあってサクソン族に制服され、
その家来ヴォーティガンが王になります。
ところが、モインズのふたりの弟ウーゼルとペンドラゴンがヴォーティガンと戦い
魔法使いマーリンの助けを借りて勝利し、ペンドラゴンが王位につきます。

サクソン族がふたたび攻めてきて戦いには勝利しましたがペンドラゴンが殺され、
ウーゼルが王位につきます。ちなみにこの話の中では、マーリンがアイルランドから
魔法で石を運んでペンドラゴンの墓を築きます。これがストーンヘンジなんだ
そうです。

で、ウーゼルと王妃イグレーヌとの間に生まれた子がアーサー。

アーサーは、父の死後、15歳で王位につきます。しかしウーゼルの重臣の一部から
反対があり、教会の司教に説得してもらいます。
すると、教会の外にいきなり大きな岩に突き刺さった剣があらわれます。岩には

「わが名はエスカリバー 正しき王への宝なり」

という言葉が刻んであります。アーサーが王になるのを認めない貴族や兵士たちは
剣を岩から引き抜こうとしますがびくともせず、アーサーがやってみたらスポッと
抜けます。

その後アーサーはブリテン島の東部を制圧、サクソン族を追い払い、それから
北部スコットランド、アイルランド島も制服します。
アーサーはギネヴィアと結婚し、ローマ帝国と戦争をし、フランスの山に住んでる
人食い巨人と戦ったりします。

とまあ、アーサーに関する話はじつはこのくらいで、あとは周囲の部下だったり優秀な
騎士の話になります。
ラーンスロットというめちゃくちゃ強い騎士が奥さんのギネヴィアと恋仲になるのですが、
そのくだりにちょっと出てくる程度。

円卓会議とは、ここに座る資格のある者は王への忠誠を誓い、戦略などを話し合うもの。
上座も下座もないので皆平等ということですね。日本でも農民の一揆などで、誰が首謀者
(リーダー)か分からないようにするために円状に書いた、なんて話もあります。
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サラ・パレツキー 『サマータイム・ブルース』

2013-01-29 | 海外作家 ハ
同じタイトルの有名な歌がありますね。ですが、内容はブルースとは
特に関係ありません。まあしいていえば第1章がそのものずばり「サマー
タイム」、真夏のシカゴは暑いよ、というのがよく伝わってきます。

V・I・ウォーショースキーは、シカゴのちょっとごみごみした
地域にオフィスを構えている、女性探偵。

Vはヴィクトリアの頭文字なのですが、本人はイニシャルで自己紹介、
あるいは「ヴィク」と呼んでもらいたがってます。

それはさておき、オフィスに依頼客が来ます。その男性は、シカゴ有数の
銀行の専務で、息子といっしょにどこかに消えたガールフレンドの行方を
探し出してほしい、という依頼。

とりあえず、息子ピーターの家を訪ねてみると、そこにはピーターの死体が。

ヴィクの父親はもう亡くなっていますが元刑事で、父の同僚だったマロリー
警部補に連絡。さて、これは何かおかしいと、依頼主の銀行を訪ねてみると、
昨晩来たジョン・セイヤーを名乗った男は、まったくの別人だったのです。

その後わかったことは、オフィスに来た依頼主は、裏でマフィアと繋がってる
と噂のある国際労組の委員長アンドリュー・マグローで、ピーターのガール
フレンドというのはマグローの娘アニタ。

なぜマグローは、セイヤーの名刺を勝手に使って彼になりすまし、アニタの
行方を調べさせようとしたのか。それよりも、すでにピーターが死んでいる
のを知っていたのか。ひょっとしてアニタがピーターを殺したのか・・・

ピーターとアニタはともに大学生で、ピーターは「社会勉強」で、保険会社
で簡単な仕事の手伝いをしていて、ヴィクは、保険会社のラルフに話を聞いて
みますが、特に事件の足がかりになるようなことは分かりません。

オフィスに戻ると、ドアの前に見知らぬ男がいて、ヴィクに銃を突きつけます。
空手をやっているヴィクはその男を倒そうとしますが、別の男にやられて、どこ
かに連れて行かれます。たどり着いた場所には、シカゴマフィアの大物アールの
姿が。アールは、この一件から手を引け、と脅してきて・・・
自宅とオフィスは何者かに侵入されて足の踏み場もないほど荒らされていて、
犯人は、ヴィクが持っている”何か”を探したらしいのですが、その”何か”
がわかりません。そこで、ふたたびピーターの部屋へ行ってみると、ガスレンジ
の下に、伝票のような紙切れを見つけるのですが・・・

なぜピーターは殺されたのか。どうやら保険絡みということまでは推測できる
のですが、よくわかりません。そして、消えたアニタの行方は・・・

この作品は「女性探偵ウォーショースキー」シリーズ第1作で、「検屍官ケイ」
シリーズほどハマるかどうかはわかりませんが、とりあえず第2作をはやく読み
たいなあ、と。
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ケン・フォレット 『第三双生児』

2013-01-24 | 海外作家 ハ
ケン・フォレットは、今まで出された作品の全部を読みたいと思わせて
くれる、好きな作家のひとりで、とはいっても、相変らずダラダラと他の
作品に手を伸ばしてしまい、全部読むのは遠い未来。

舞台はアメリカのボルティモア、ジョーンズ・フォールズ大学。
ここで、体育館のボヤ騒ぎの中、大学職員が何者かに暴行されます。

大学助教授のジニーは、襲われたリサを発見、病院に連れて行きますが、
警察の取調べも、病院の医者も、被害者の心の傷をさらに深めるような
言葉で、ジニーは怒り心頭。

さて、ジニーは大学で遺伝の研究をしていて、「犯罪の遺伝」をテーマに、
別々に育てられた同じ遺伝子を持つ双子が、片方が犯罪者でもう片方が真っ
当に暮らしている、といったケースを調べます。

そこに呼ばれたのがスティーヴという青年。彼は現在ロースクールに通う、
「真っ当な暮らし」の好青年で、ジニーは、自分が開発したシステムにより
スティーヴがじつは双子で、どういった経緯か別々の家庭に養子に出され、
しかも、その双子の片方は、殺人で刑務所にいることを発見します。

そこに、ジニーを大学に紹介してくれたベリントン教授が研究室に入って来る
なり、驚愕の表情に。

なぜスティーヴを見て驚くのか、聞いてもあやふやな答えで、その場はまあ
いいか、とスティーヴは帰ろうとしたのですが、なんと警察が彼を取り囲み、
リサへの暴行容疑で捕まるのです。

全く身に覚えのないスティーヴ。しかし、リサが面通しをしたとき、間違いなく
あの男です、と・・・

ジニーは、スティーヴがリサを襲った犯人だとは信じられませんが、とりあえず
スティーヴの双子の片方に会いに刑務所へ。そこに現れたのは彼に瓜二つ。
狡猾で暴力的で、性格は真逆。しかし、これでジニーの研究していることが正しい
ということになれば、好青年のスティーヴも、生まれながらに犯罪者になる性質を
持っているのか・・・

スティーヴは無罪を証明しようと、DNA検査をしてほしいと訴えます。が、検査の
結果、リサから検出されたDNAは間違いなくスティーヴのもの。

ジニーはさらに調べを進めていくと、スティーブも双子の片方も、父親が軍関連の
仕事をしていて、同じ病院で生まれていたことがわかりますが、そこに、彼ら双子
と同じ遺伝子を持つ青年が別にもう1人いることが分かります。

その「三つ子」を探そうとしているところに、なんと新聞社がジニーの開発した
システムをプライバシーの侵害だと記事にして、これを重く見た大学側は彼女を
クビにしようと・・・

ベリントン教授と上院議員、それに「ジェネティコ」という会社の社長の3人は、
何かを企んでいるのですが、それはとんでもない陰謀で・・

例の「三つ子」に会いに行くジニー。彼もスティーヴと瓜二つで、真犯人はこいつ、
と思ったのですが完全なアリバイがあり、もうわけがわからなくなっているとき、
仮釈放中のスティーヴに襲われて・・・

途中「えっ」と、さらに「ええっ」となり、ラストには「えええっ」となる、
もう読み始めたら止まらない驚きの連続。

母親が痴呆で、もっと上等な施設に移してあげようにも、助教授の給料ではどうに
もならない、父親は泥棒で収監中、少女時代にパンクに走って鼻にピアスを開けて
テニスが上手くて大学はスポーツ奨学生で入学、ただ今29歳、というジニー。
複雑な謎解きの中に彼女のバックグラウンドも詳細に盛り込んで、ほかのキャラ設定
もお見事。
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ケン・フォレット 『大聖堂 下』

2012-11-04 | 海外作家 ハ
この作品はオムニバスではないので、本来は1回でまとめるべきなの
ですが、あまりに長いので、文庫での上中下の3回に分けて感想を書く
ことにしました。

さて、「中」で建築職人のトムが事故で死んでしまい、修道士見習い
を馘になったジャックは、大陸に渡ることに。
羊毛ビジネスも一からやり直すことになったアリエナは、ジャックの
義兄アルフレッドと望まぬ結婚をすることになります。

しかし、そこにジャックの母エリンが、ふたりの結婚を呪う言葉を
浴びせかけます。
そう、冒頭で無実のフランス人が処刑されることになり、そこに立ち
会った僧侶や騎士、役人たちに呪いの言葉を浴びせた娘こそ、エリン
だったのです。そして、処刑される前にふたりは結ばれて、その時に
身ごもったのがジャックでした。

エリンの呪いの言葉が効いたのか、アルフレッドは一度もアリエナを
抱こうとしません。それが気に入らなくて妻を殴る蹴るの暴行。
それでも、弟リチャードの騎士でいるための費用のため、耐え忍ばな
ければなりません。
そんな中、アリエナは妊娠します。そして、産まれた子は、明らかに
ジャックの特徴を受け継いだ男の子。
アリエナはエリンに相談すると、ジャックの妻なんだから、ジャックを
追いかけなさい、と・・・

一方ジャックはといえば、フランスへ渡り、教会の建築現場に飛び込み
で仕事をもらったりしながら旅を続け、スペインの巡礼地、サンチャゴ・
デ・コンポステラへ向かい、さらにいろいろあってキリスト教に改宗した
サラセン人の富豪の家に住まわせてもらうことに。
そこの娘に気に入られて、主人も2人の仲にまんざらでもなく、話は結婚
まで進みかけたのですが、ジャックはアリエナのことが忘れられず、家を
出ることに。そしてフランスへと旅立ちます。

伯爵令嬢だったころには何回か訪れたフランスですが、今では乳飲み子を
かかえたみすぼらしい格好のアリエナ。教会の建築現場で、イングランド
人でジャックという男を訪ね、偶然にもジャックを覚えている人に出会った
りして、なんとかジャックの住んでいたサラセン人富豪の家まで辿り着いた
のですが、すでにジャックは去ったあと。
しかし、そこの娘が、アリエナの抱えていた赤ちゃんを見て、この女性が
ジャックの想い人だと分かり、ジャックはフランスへ向かったと教えてくれ
ます。

パリのサン・ドニ教会で再開するジャックとアリエナ。作業場近くで家族3人
で暮らしているところに、大司教が教会を訪れることになり、大司教をひと目
見ようと民衆が殺到、あわや暴動の寸前になるところに、ジャックがサラセン人
富豪からもらった木彫りの聖母マリア像が、涙を流したのです。

この「涙の聖母」が話題になり、ジャックは、この像をキングズブリッジ再建
に使えると思います。カンタベリ大司教も、自分の教区に欲しいと思って、「涙
の聖母」はイングランドに戻ることになります。さらに、サン・ドニの建築職人
も、引き連れて行くことに。
行く先々でお布施があり、大金を手にするジャック一行。
そこで、海岸沿いの町で、ジャックを目にした人々が恐れるのです。話を聞けば、
イングランドへ渡った「ホワイトシップ号」という船が沈没して一人も助からず、
その中にジャックと瓜二つの男もいたというのです。
それこそがジャックの父親、無実の罪で処刑された詩人のジャックだったのです。

思わぬところで父親の家族と会ったジャック。さて、どうして父親は処刑させられ
たのか・・・?

カンタベリ大司教や修道士、建築職人たちとともに(しかも大金を持って)キングズ
ブリッジに戻ってきたジャックとアリエナ。
「涙の聖母」像をこの教会の人寄せとして、フランスで最新の技術を学んできた
ジャックは、さっそく大聖堂建築にとりかかります。

この話を聞いて面白くないのがシャーリングを統治するウィリアムと、フィリップを
目の敵にしている司教のバイゴッド。
ふたたびキングズブリッジを襲おうとしますが、ジャックがたったの数日で防護壁を
築き、ウィリアム軍は撤退。
そこで、フィリップのお供をしているジョナサンが、隠し子なんじゃないか、という
根も葉もないことで裁判に出るバイゴッド。
ところが、これがフィリップの旧敵が裁判に関わって・・・

さらに追い打ちをかけるように、妻に去られ現場で事故を起こしてキングズブリッジ
から逃げていたアルフレッドがジャックのもとで働いていたのですが、裏で職人たちを
シャーリングの大聖堂建設のために引き抜き工作を・・・

成長したリチャードは立派な騎士になって、シャーリングを取り戻そうとします。
はじめはゲリラのような作戦で、そのうち城に侵攻しようとしますが、果たして成功
するのか。

そして、フィリップの裁判ですが、ジョナサンの実の父親はトムであったことは彼の
生前の告白で知っていたのですが、すでにトムはいません。ところが、ジョナサンは
捨て子だったのを知っていた人がいたのです。そう、ジャックとエリン。
裁判に出席するジャックはそう訴えますが、聞く耳を持たないバイゴッド。
そこにエリンが登場し、バイゴッドが過去に偽証罪を犯した、というのです・・・

読み終わったときには感動で打ち震えるくらいで、これぞ「物語」です。
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ケン・フォレット 『大聖堂 中』

2012-11-03 | 海外作家 ハ
大聖堂を建てたいという夢を抱く建築職人のトムと、その一家である
内縁の妻エリンとその息子ジャック、そしてトムと亡くなった妻との
間の息子アルフレッドと娘マーサは、キングズブリッジ修道院の修復
工事のあいだ、キングズブリッジで生活することに。

アルフレッドはまだ少年ながらも父の”片腕”として建築技術の基礎は
身につけています。ゆくゆくはジャックも同じ道に進ませようと考える
トム。ところがジャックは、母親エリンから文字の読み書きをすでに教
わっていて、さらに好奇心も強く、覚えたことの応用力もはやく、長年
建築に携わってきたトムも舌を巻くほど。マーサもあこがれを抱くように。

が、これをアルフレッドは面白いはずはなく、なにかとジャックに向かって
きつく当たり、時には暴力に出ることも。

キングズブリッジの若き修道院長のフィリップは、ここに大聖堂を建てたい
というトムの計画を聞いて、さっそく着工といきたいところですが、古い
聖堂の修復もまだ終わっていないし、そして何よりも資金難で苦しく、それ
どころではありません。
そんなある夜、修道院で火事が起こり、工事は中断。いっそのこと、新しく
大聖堂を建てよう、ということになるのです。しかし、この火事は誰かの
不始末だったのか、それとも何者かの放火・・・?
ところが、ここでトムとエリンが未婚ということが問題に。エリンは教会、
とりわけ修道士に対して反感を持っていて、フィリップに対しても罵声を
浴びせたり。
そんなこんなで、エリンは森の中での生活に戻ることに。そしてジャックは、
フィリップ預かりのもと、修道士見習いに。

フィリップは、弟で同じく修道士のフランシスが見つけた捨て子のジョナサン
をいつも連れて歩いています。「この子は森の中の教会の近くに捨てられていて、
拾って育ててここまで大きくなった」ということをトムは知り、ジョナサンは
あの時捨てた子だ、と悟るのです。

さて、キングズブリッジの近くにあるシャーリングは、ハムレイという豪族に
よって征服され、ハムレイは新しい城主に。前の伯爵の娘アリエナは、ハムレイ
の息子ウィリアムと婚約破棄した遺恨もあり、アリエナの弟リチャードのともに
囚われの身に。
しかし、どうにか城から脱走する2人。そこから食べてゆくために、羊毛ビジネス
をはじめますが、これが大当たり。
キングズブリッジに住むことになったアリエナとリチャード。教会とも契約を結ん
で、金持ちに。
そしてリチャードを騎士にするべくお金をかけることに。

ある日、森の中でアリエナが読書しているところにジャックが声をかけてきます。
じつはジャックは以前からアリエナに恋心を抱いており、ジャックが読み書きが
できたり誌を諳んじたりできることに驚き、たちまちふたりは恋仲に。

ハムレイの統治になってから、シャーリングでは税金が上がり、逆らえば殺され、
庶民はたちまち生活が苦しくなり、お隣のキングズブリッジに逃げ出す人が続出。
一方キングズブリッジは、日曜市などでどんどん発展していきます。

これが面白くないハムレイは、なんとキングズブリッジを焼き討ちにかかろうと・・・

しかし、こんな野蛮な行為が許されるのか、と思いきや、当時のイングランドでは
国王と反国王派が拮抗していて、ハムレイは現国王の戦力となっていて、たとえ
フィリップが訴えたとしても勝ち目はなく、また教会も微妙な立場。
さらにフィリップを修道院長にするかわりに司教の座についたバイゴッドは出世の
ためにハムレイ側についています。

資金も底をつき、不安から人々がどんどん去るキングズブリッジ。さらに悪いことに
建築途中にトムが転落して、帰らぬ人に。その後釜はアルフレッドが継ぐことに。
アリエナも生活が苦しくなり、じつはアルフレッドはジャックとアリエナの仲を妬んで
いて、アリエナに求婚します。
リチャードの騎士にかかるお金も必要で、アリエナは承諾することに。

一方ジャックは修道士見習いを馘になり、アリエナの結婚(よりによってアルフレッドと)
を知ってショック。ジャックは、建築の勉強をしながら巡礼をしようと、大陸に渡ろうと
決意。

ところで、ジャックが修道院の地下の反省部屋に閉じ込められていたときに、なんと
母親エリンが姿を見せます。驚くジャックですが、じつはエリンは「秘密の通路」を
知っていて、まだジャックが生まれる前、ジャックの父親が同じ部屋に捕われていた
ときに、同じ通路を使って会いに来ていて、そこでフランス語を教わったというのです。
そして、その男は、無実の罪で処刑されたのです・・・

ジャックの父親はどうして処刑されたのか、その答えは海の向こう、フランスにある
のか・・・?
上巻では曖昧になっていたいろいろな部分が徐々にわかってきて、大スペクタクル歴史
ドラマに愛憎渦巻く昼ドラ的要素?が加わって、ますます面白くなってまいりました。


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ケン・フォレット 『大聖堂 上』

2012-11-02 | 海外作家 ハ
はじめてケン・フォレットという作家の名前を耳にしたのは、故・児玉清さん
が何かのテレビ番組で、この『大聖堂』をものすごく面白いと熱くご推薦され
ていたのを見て、と記憶しています。

なんでも、翻訳される前に原文(アメリカ版)を読んでのめりこんでしまい、
仕事でイギリスに行くことになって、本を持っていこうとしたのですが、原文
の本はぶ厚くて、荷物になるからと置いていったのに、現地で気になって、な
んとイギリス版を買って途中から読んで、今度はドイツに行くことになって、
また日本に置いていったのですが、現地でドイツ語版(児玉さんは大学のドイツ語
学科卒なんだそうです)を買ってしまい、家に3冊もあるんです、なんて笑い話
をされていて、こんな読書家をハマらせるのはさぞかし傑作なんだろうと思い、
いつか読もう、いつか読もうとココロにとどめておいて、先にフォレットの他の
作品を読んだりして、ようやっと読むことになりました。

舞台は12世紀のイングランド。プロローグで、どこかの小さな街で、ある罪人の
処刑シーンからはじまります。
わらわらと住民が処刑台のまわりに集まってきて、いよいよ罪人が台に登ったとき、
男はフランス語で歌いだしたのです。
当時のイングランドでは、一般庶民は英語、上流階級はフランス語を話していて、
その歌詞を理解できるのは、死刑執行に関わった僧侶や騎士、役人たちと、民衆の
中にいたひとりの娘だけ。
その娘は怒りに打ち震えていて、僧侶、州長官らに向かって呪いの言葉を浴びせ
かけて人ごみの中に消えてゆきます。

とまあ、こんな剣呑なところからはじまるわけですが、話は変わって、建築職人
のトムと一家(奥さん、息子、娘)が登場。
トムはいつの日か教会の大聖堂を作ってみたいという夢を持っていますが、現在
は流れの職人といった状態。
とある町の役人の息子が婚約し、その新居を作っていたところ、いきなり工事の
中止を告げられます。噂によれば、役人の息子は、婚約者にフラれたそうで、まあ
それは別に仕事を失ってしまったトムは、その息子に、今までの給料をくれ、と
お願いします。

この息子、名前をウィリアム・ハムレイというのですが、のちのちまでトムやその
周りに関わってきて、はっきり言ってしまえば、いやなヤツ。

さて、仕事を失ったトムは一家を引き連れて、どこかの建築現場を(できれば教会
か大聖堂の)探す旅に出ます。
しかし、どこでも断られ、持っていたお金も無くなります。身重の奥さんのためにも
懸命に仕事を探しますが見つからず、とうとう大工道具まで売ることになります。
そんなときに奥さんが産気づき、男の子の出産と引き換えに妻は息を引き取ります。
とても赤ちゃんを育てることのできないトムは、仕方なく、奥さんを埋めた近くに
赤ちゃんを置いていくのです。

しかし、この赤ちゃんは、修道士に拾われて一命をとりとめ、ジョナサンと名づけて
もらい、すくすくと成長します。

赤ちゃんを拾ったのは、フランシスという修道士で、兄のフィリップ(もまた修道士)
のいる教会に向かう途中で泣き声に気づいたのです。
このフィリップも、のちのちトムと深く関わることになってきます。

が、フランシスが見つける前に、じつはもう一人、赤ちゃんを見つけていたのでした。
それは、住むところも無く、森の中に住んでいる少年で名をジャックといい、母親と
ふたりで洞窟住まい。

この母親はエリンといい、じつはトム一家が森を移動中、盗賊に襲われそうになって
いたところを助けたことがあって、妻を亡くし(子どもたちにとっては母を失って)
とぼとぼとさまよっていたところ、再会します。
たちまち惹かれあうトムとエリン。
教会の許しがなければ結婚できず、ふたりは仮の夫婦として、トムの息子アルフレッド、
娘マーサ、エリンのひとり息子のジャックと5人で旅をすることに。

ところでフィリップですが、小さな教会での働きが認められて、キングズブリッジという
修道院に呼ばれます。その教会内部は腐りきってきて、その腐敗の根源であった院長死去
にともなって行われた選挙で、フィリップは新しい修道院長になります。
しかし、その裏では、この教区を取り仕切る、野心あふれる副司教との取引があり、その
副司教、ウォールラン・バイゴッドはのちに司教に昇進します。

このキングズブリッジとその周囲はシャーリング伯が統治していて、城にたどりついた
トム一家は、城の補修工事をすることに。
ところが、そこに豪族が襲ってきたのです。豪族の名前はハムレイ。そして、その息子
ウィリアムと婚約破棄をしたアリエナは、シャーリング伯爵令嬢だったのです。
そんな遺恨もあって、ハムレイは城を攻め落とし、なんとウィリアムは城に残っていた
アリエナを暴行し、弟の耳たぶを切り落とし・・・

キングズブリッジを立て直すためにいろいろ改革をはじめるフィリップ。そんな中、命
からがら城から脱走したトム一家が修道院に来て、シャーリングが襲われたと報告します。
さらに、フィリップに、ここの修道院の修復をさせてくれ、とお願いするのですが・・・

権謀術数うずまく世界の中で、純粋な信仰心の持ち主であるフィリップはどうなるのか。
アリエナと弟は、そしてトム一家は・・・

とにかく政治的に不安定で、それこそ今日の味方は明日の敵(逆もしかり)になったり、
日本で言えば戦国時代みたいな状態でしょうかね。
そんな時代に翻弄される庶民はたまったもんではありませんが、そんな中世イングランド
の政治的な部分、市井の人々の部分がバランスよく描かれています。

石工や大工などの専門用語(基礎知識的な)も出てきますが、ちゃんと説明もあって
少なくとも”ちんぷんかんぷん”にはなりませんでした。
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ケン・フォレット 『ペーパー・マネー』

2012-07-15 | 海外作家 ハ
この作品は、フォレットの大出世作「針の眼」の前に書かれたという、
まあ例えると、ハリウッドのスターが「あの作品の前にじつはこんな作品
にも出てたんですよ!」とでもいいましょうか。
まったく関係ありませんが、ニコール・キッドマンがハリウッドで売れる
前に、オーストラリアで学園恋愛映画に出演していて、主役ではなかった
のですが、邦題は「ニコール・キッドマンの何とかかんとか」でした。

あとがきによるとフォレット自身「これまで私が作り出してきたなかで
最も巧妙なプロット」というだけあって、複数のストーリーが複雑に絡み
あって、まるで完成するまで絵柄が分からないジグソーパズルのように
先の読めなさにイライラしつつ、楽しみでもありつつ。

イギリスのエネルギー相、フィッツピーターソンは、朝起きるとベッド
の横に若い女性が。昨晩のパーティーで不思議と意気投合し、妻のいる
身でありながら、彼のフラットに女性を誘ったのです。

ところが新聞社「イブニング・ポスト」の報道部長代理のアーサー・コールの
もとに、「エネルギー相が売春婦と寝ている」とタレコミの電話が。
そこでコールは電話をしますが、フィッツピーターソンは「そんなことはない」と否定。
が、なぜ新聞社がこのことを・・・不思議に思っているところにいきなり
男が乱入。売春したことをバラされたくなかったら、今日の午後に発表され
る、北海油田の採掘権を落札した会社を教えろと脅します。

泣く泣く脅しに屈するフィッツピーターソン。脅した男は、ある”実業家”
に電話で報告。

その採掘権を落札することになっている会社はじつは倒産寸前で、社長は
立て直しをはかろうとしますが、胃潰瘍に悩まされ、妻からは働きすぎと
心配されます。
社長はいっそのこと会社の株を売って引退して、妻とふたりでのんびりと
余生を過ごそうと考えていますが、その妻はというと、ラスキという実業家
と不倫しているのです。
社長は株式仲買人の友人に相談し、会社の株を買ってくれる人を仲介して
もらうことに。なんとその相手とはラスキだったのです・・・

さて、フィッツピーターソンを脅した男、トニー・コックスは、こんどは
別の悪巧みへと走ります。
それは、使い古した紙幣を回収して処分するときに強奪しようというもの。
現金輸送車を襲ったまではよかったのですが、トニーの仲間のひとりが、
警備員の銃で撃たれてしまうのです。

「イブニング・ポスト」のコールのもとに、今度は現金輸送車が襲われた
という情報がタレコミで入ります。

一方、銃で撃たれて病院に運ばれたトニーの仲間ですが、一命はとりとめた
ものの、目が見えなくなってしまいます。

フィッツピーターソンが、「自分は女をダシに脅されて、油田の採掘権を落札した
会社をその男に教えてしまった」と言い残して自殺を図ったという一報が・・・

コールは立て続けに飛び込んでくる情報にひとつずつ取材を続けていくうちに、これら
バラバラと思える事件がひとつの方向に・・・

これが一日のあいだの出来事か、と驚いてしまう目まぐるしい展開、スピード感。
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ケン・フォレット 『針の眼』

2012-06-14 | 海外作家 ハ
ケン・フォレット作品はこれで2作目。いちばん読みたいのは「大聖堂」
なのですが、なかなか出会えません。まあ大きい書店に行けばあるん
でしょうけど。

まあそれでも『針の眼』はベストセラー、アメリカのMWA賞最優秀長編
賞を受賞、さらに映画化と、ケン・フォレットの名前を一躍世に知らしめた
出世作(その前に3作ほど書いているそうですが)で、「大聖堂」よりも先に
読んでおくのも悪くはない、と言い聞かせます。

時は第2次大戦末期の1944年、猛進を続けていたドイツはその勢いに陰りが
見えてじわじわと弱まり、同盟国のイタリアは降伏、ここにきてイギリス、
アメリカ連合軍がフランスに上陸でもされたらもうおしまい。
そこでヒトラーは”ある男”からの情報を待ちます。それによって上陸を止め
ることができるのですが、男から伝えられたのは総統の期待を裏切るものだった・・・
という話。

ドイツの優秀なスパイ、”針(ディー・ナーデル)”は数年前からロンドンに潜伏、
他のスパイはことごとく捕まりますが”針”はイギリスに溶け込んでいます。
ヘンリー・フェイバーと身分を偽ってフラットに住んでいますが、そこの女主人は
針”ことフェイバーに興味を持ちます。女主人は彼の部屋のドアをノックし、
中に入ろうとすると、何やら喋っている様子。
部屋に招き入れるフェイバー。この女主人は夫を亡くし、自分に色目を向けている
ことを知り、しかも先ほどの「会話」を聞かれた・・・
フェイバーは女主人を殺し、暴行犯の仕業に見せかけて逃亡。

大学教授のゴドリマンは、イギリス陸軍大佐の親戚に頼まれて、イギリスに潜伏
しているというドイツのスパイを探し出すことに。ロンドン警視庁のブロッグス
とともにさまざまな情報を調べていくと、ある男が浮かんできます。
”針”という暗号名を持つスパイは、イギリスのどこにいるのか見当がつきません。

イギリス空軍中尉のデイヴィッドは出征の前にルーシーと結婚、ふたりでドライブ
をしていた時に大事故を起こし、両足を切断してしまいます。
身体と、そしてなによりもデイヴィッドの心の回復のために静養をさせようと、彼
の親の所有するスコットランドの小島へと向かう夫婦。
絶海の孤島のようですが、羊飼いが住んでいます。デイヴィッドとルーシー夫婦は
もう一軒ある家に住み始め、羊飼いの手伝いをすることに。
ふたりはジョーという男の子をもうけます。が、この島に来てから夫婦の関係は
冷え切ったものに。

フェイバーは、アメリカイギリス連合軍がフランスのカレーから上陸すると見せかけて
じつはノルマンディーから上陸するという確かな情報を得て、その写真を撮り、潜水艦
に乗り込んでドイツへ戻ろうと算段。
しかし、その道中、いろいろと足がかりを残してしまい、ブロッグスは”針”のあとを
追いますが、すんでのところで逃げられます。
フェイバーは潜水艦とのランデブー場所であるスコットランドのアバディーン近海まで
船で向いますが、大嵐に遭って船は小さな島に打ち上げられます。
そう、この島とは、デイヴィッドとルーシーの暮らす島なのです・・・

”針”はドイツに情報を運ぶことができるのか、デイヴィッドとルーシーは難破して
流れ着いたフェイバーと名乗る男がじつはドイツのスパイであると気づくのか・・・

もう、とにかく面白いです。そして、感嘆してしまったのが、スコットランドの小島
の描写。

「《荒涼》とはこういう場所のために作られた言葉である。(中略)島の周囲は大半が
冷たい海から切り立つ断崖で、浜と呼べるものはほとんどない。静かに打ち寄せるべき
場所のない波は、その無礼に腹を立て、闇雲な怒りを岩にぶつける。そして島は、一万
年にも及ぶその激発を、大過なく、素知らぬ顔でやり過ごす。」

(絶海の孤島)をここまで美しく表現できるのか、と。

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ロザムンド・ピルチャー 『九月に』

2012-03-12 | 海外作家 ハ
(自分の無知を棚に上げて)知らない作家の知らない作品を
買って読むというのはある種「冒険」で、たとえ帯や背表紙に
「大ヒット作」「どこそこから映画化決定」などと売り文句が
あっても、読み終わってガッカリ感しか残らなかった、という本
もあったりしました。

で、このロザムンド・ピルチャーという、スコットランドの
女性作家、代表作「シェルシーカーズ」が200万部超の大
ベストセラーとなって、『九月に』も同じく200万部のヒット
作なんだそうで、さて当たりか外れかというと、大当たり。

スコットランドの片田舎で、スタイントン家の娘の誕生日ダンス
パーティーを開催するところから話がはじまり、このパーティー
をきっかけに、ロンドンや外国に住む家族が帰省することになり、
再会に喜ぶだけではなく、昔の忘れたい記憶がほじくり出された
り・・・などと、家族をテーマに描かれていて、とにかく話は淡々
と進み、ぶっちゃけ地味な内容なのですが、不思議と引き込まれて
ゆきます。

ストラスクロイ村の領主アーチーは軍隊所属のときに北アイルランド
で片足を失い、義足での生活となり、古くて大きな屋敷「クロイ館」
でのこまごまとした仕事をこなす毎日。それだけでは食べてはいけず、
妻のイザベラが、アメリカからの観光客をもてなす仕事でお金を稼い
でいます。
娘のルシラはパリに住んでいて、アーチーの妹パンドラは18歳で
アメリカに移住、離婚してスペインに渡って、20年以上クロイ館に
戻ってきていません。そんな折、ルシラがスペインに遊びに行きたい、
パンドラおばさんの住所を教えてくれという手紙が届き、ついでに
誕生日パーティーの招待状を同封します。一応、パンドラにも。

もうひとつの家族、クロイ館の家族と仲の良いエドマンドの一家の
話も出てきて、妻のヴァージニアは後妻で、最初の妻との娘アレクサ
はロンドン在住で、料理のケータリングの仕事をしています。
ヴァージニアとのあいだにはヘンリーという男の子が生まれて当年
8歳ですが、どうにも内気で繊細。
エドマンドの母ヴァイオレットは小さなコテージでひとり暮らし、
アレクサとヘンリーの乳母エディーとは今でも仲良し。
さてアレクサですが、容姿はいまいちで、色恋もあまり得意ではあり
ませんが、そんな彼女にノエルという恋人ができるのです。
ヘンリーを寄宿学校へ入れたいエドマンド、ですがヴァージニアは
猛反対、勝手に手続きを済ませてきてしまった夫に妻はとうとう怒り
が爆発、なんとか納得したものの、学校へ連れて行く当日はエドマンド
に送りを頼んでいたのを、急な出張で行けなくなり、ヴァージニアが
連れて行くことに。
息子との別れに悲しみにうちひしがれ、夫への信頼も薄らぎ、そんな
タイミングでヴァージニアの古い男友達のコンラッドと出会い・・・

ルシラはパリで出会ったジェフという恋人とともにパンドラの家に。
スタイントン家のパーティーの話題になると、なんとパンドラは「私も
行く」というのです。そして3人はスコットランドへ。

かつては親友とだったアーチーとエドマンドですが、ある出来事がきっか
けで、かつてのような交流は無くなります。その原因とは・・・

心配事といえば、エディーの従姉妹にあたるロティーが精神病院から退院
してエディーが引き取ることに。しかしこのロティー、かつてクロイ館で
女中として働いていたことがあって、大迷惑をかけて辞めさせられたこと
があり、ゴシップ的な話が大好きで、他人が迷惑がろうがお構いなし。
このロティーが帰ってくることになって、みながエディーを心配します。
ある日、ヴァージニアを捕まえたロティーは、あんたの旦那はパンドラと
愛人だったんだよ、と余計なことを言うのです・・・

なんやかやでそれぞれ問題を抱えている2つの家族。それらが一同に集まる
ことになるのですが・・・

スコットランドの風景、そこに暮らす人々の描写がすばらしく、行ったこと
が無い人でも、どこか懐かしいと思えるような感じ。
久しぶりに読後に疲れたなあというくらい長いですが、不愉快な疲れではなく、
心地よい疲れ。良い本に出会いました。
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パトリシア・コーンウェル 『サザンクロス』

2012-03-06 | 海外作家 ハ
コーンウェルの「検屍官」シリーズとは別の、警察小説
「スズメバチの巣」の続編にあたる『サザンクロス』は、
シャーロット市の警察署長ハマー、署長補佐のウェスト
(ともに女性)、そして前作では警察担当記者で、警察の
イメージアップのために捜査の同行をさせてもらっていた
ブラジルが、記者を辞めて警官になり、ウェストと恋仲に
なって、この3人がシャーロットからリッチモンドに転勤、
というところから話がはじまります。

殺人の発生率は全米2位、その他にも強盗、車上荒らし、
暴行、レイプなど治安の悪さに「定評」のあるリッチモンド
市に、新しい捜査用のコンピュータシステムが導入されます。
新署長のハマーはこのデータ化を推進しようとしますが、あま
り歓迎はされない様子。

あげく、就任してそうそう、「大人の犯罪を犯す子供はもはや
子供ではない・・・」というコメントが関係各方面から反感。

そんな中、ハマーの無線に、犯罪の計画を匂わす会話が混線で
入ってきます。この地にいまだ根強くはびこる人種差別が絡ん
でいるようで、放っておけません。

そして話は変わって、スモークと名乗る不良が、ウィードという
少年を仲間に入れようと脅します。

ウェストとブラジルですが、ブラジルが住んでいるアパートの
家主の女性と恋仲になっているとウェストは怒り、ブラジルと
距離を取ることに。

さらに厄介なことに、市内の犯罪発生システムにバグが発生、
魚のマークがあらわれます。これは「フィッシュ」とか何とか
の犯罪の隠語なのか。

たびたび登場する、ババというタバコ工場に勤める男は、基本的
に犯罪者などではありませんが、途中まで、このババの物語が本筋
とどのように絡んでくるのかよく分かりません。
最終的にスモーク、ウィードの少年ギャング、システムの魚のバグ、
ババの話はつながりますが、けっこう飛び飛びで話が変わり、読んで
いて多少のもどかしさがあります。
話が変わるときの「ジョイント部分」といいましょうか、その描写は
面白いなあ、と思いましたが。

リッチモンドといえば、ケイやマリーノは出てくるの?と期待しました
が、ケイがほんのちょっとだけ登場します。
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