晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

高村薫 『黄金を抱いて飛べ』

2011-11-13 | 日本人作家 た
高村薫の作品を読むのは久しぶりです。たしか、前に読んだ
のは「リヴィエラを撃て」だったと思います。
「マークスの山」や「レディー・ジョーカー」など、初期の
名作は今でもしっかりとストーリーを思い出すことができま
すね。この『黄金を抱いて飛べ』はデビュー作で、日本推理
サスペンス大賞の受賞作。

物語は、かんたんにいうと、幸田と北川という大学時代の
友人(といっても、完全に心を許しあってるわけではない)
が計画した、金庫破り計画の話。
そこに、元エレベーター技師で、なにやらとんでもない過去
を持ってる「ジイチャン」と、幸田のアパートの近くに住む
大学院生のモモ、それから、北川の知り合いの、ちょっとば
かしチャラい野田、北川の弟、合わせて6人で、大阪市内の
ど真ん中にある住田銀行ビルの地下に眠ってる、総額100
億円相当の金塊を盗もうというのです。

そもそも、幸田は生まれは大阪ですが育ちは関東、北川も、
育ちは関東。なぜこのふたりがどういった経緯で大阪に来る
ことになったのか、そして、このふたりの出会いは、という
バックグラウンドは、説明がありません。読み進めていって、
ようやくちらほらと書かれていて、大学で出会った話に関し
ては、もう終わりのほう。

話はたんなる金庫破りだけにとどまらず、なにやら警察庁の
公安やら北朝鮮やら韓国やらの組織がモモを追ってる様子。
モモはどうやら普通の大学院生ではなさそうです。

さらに「ジイチャン」も、これまた、早朝に道路掃除をして
いる、普通の老人ではなさそう。

幸田の働いてる倉庫に北川の弟も働いているのですが、この弟
というのが、地元の暴走族と揉め事があってめんどくさそう。

幸田は幸田で、思考回路が時たま崩壊。というか、いつも崩壊
寸前な状態。

といった具合に、出てくる人たちはみんな、どこかしら歪んで
います。

そして、高村薫の作品を読んだことがある方ならお分かりかと
思いますが、機械系の描写のスゴイこと。
「照柿」でしたっけ、冒頭の5~6ページに及ぶ、どこかの工場
内の描写は、もう隅っこのホコリにまで焦点をあてて描かれてい
るような、なんとなく執念すら感じます。
なんだったら、いっそ図面におこしてくれれば、なんて思ったり
もしますが、そこはこの作家の「執念」「意地」をご堪能あれ。
コメント (2)
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