晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『プリズンホテル 夏』

2012-10-17 | 日本人作家 あ
先週、ちょっと所用で海外に行っておりました。
そんなわけで、ずっと更新しなかったのでありますが、持参して、
飛行機の中や宿泊先で読んでいたのが『プリズンホテル』。

浅田次郎の小説の中には、不意打ちみたいに泣かされる作品があって、
この作品でも、案の定やられました。

いちおう、ジャンル的には「極道小説」ということで、それのどこが
泣けるの?ということですが、主人公は極道ではなく、極道小説を書く
売れっ子作家です。で、叔父が極道、そかも超大物という設定。

作家の木戸孝之介は、幼い頃、母親が男と一緒に出ていってしまい、
それが彼の人格を歪めてしまい、女性に対する愛情表現が異常で、
母が出て行ったあとに父と再婚した、工場で働いていた富江という義母
に、暴言を放ったり暴力を振るいます。

そればかりか、「百人の男がいれば百人が振り返る」ほどの美人、清子
という恋人にも暴言や暴力。この清子、世の不幸を背負って生きている
薄幸の女で、現在ムショ務めのヤクザとの間に子どもがいます。

孝之介の父は小さな町工場でメリヤスを作っていて、そんな父が亡くなって、
葬式に亡父の弟で、大物ヤクザの仲蔵親分も参列します。
父からは生前「仲蔵とは付き合うな」と耳にタコができるほど聞かされていて
いたのですが、その孝之介はといえば、自身の叔父の”職業”であるヤクザを
モデルにした極道小説で売れっ子作家となっているのです。

さて、その仲蔵が、なんとリゾートホテルの経営に乗り出したというのです。
しばらくシャバとお別れの人や、長いあいだ”ムショ暮らし”してきた人に
癒しの空間を提供する、というご立派なコンセプト。

”任侠団体専用”のホテル、誰が呼んだか、「プリズンホテル」・・・

仲蔵は総会屋の大物でもあり、日本有数のホテルチェーン、クラウンホテルから
シェフと支配人を連れてきます。
支配人は、かつてボヤ事件があった責任を背負わされ、日本全国の僻地を転々と
させられて、とうとう行き着いた先がプリズンホテル。
シェフも似た境遇で、食中毒騒ぎの責任を負わされて、ここプリズンホテルに
飛ばされてきたのでした。

しかし、番頭やその他従業員は仲蔵の舎弟、構成員で、仲居は外国から来た出稼ぎ。
新支配人の花沢は面食らい、シェフの服部は、昔気質の料理長とぶつかり・・・

そんなホテルに、仲蔵親分の甥っ子である孝之介と、清子が泊まりに来ます。
さらに、老夫婦、一家心中しようとしている家族も泊まりに・・・

そしてこのホテルの女将は、なんと孝之介の実の母だったのです・・・

文庫で「春夏秋冬」の全4巻、読み始めたらとまりません。
おかげで、飛行機では眠らずにずっと読み続けて、旅先に着いたときにはフラフラ
でした。

浅田次郎の初期の傑作「きんぴか」という、まあこれも極道が出てきててんやわんやの
大騒ぎという作品があるのですが、「きんぴか」の面白いエッセンスを引き継ぎつつ、
こちらもまたお得意の家族の愛を描いて泣かせるエッセンスもあり、笑い泣きは必至。


コメント
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