晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

髙田郁 『出世花 蓮花の契り』

2021-08-07 | 日本人作家 た
暑いです。心頭滅却すれば涼しくなるのかなと思って心頭滅却してみましたが暑いままです。

個人的なお話をひとつ。今の体重は年齢と身長からすればだいたい理想的な体重でして、ところが7~8年前くらいまでは今より30キロ以上太ってまして、まあ世間でいう「デブ」、ギョーカイ用語でいう「ぶーでー」でして、このままじゃいかんと一念発起して今の体重になったわけですが、その当時のことを思い出してみますと、やはり今よりも暑く感じてましたね。もともと汗っかきでしたが、痩せてから汗の量が減ったような気がします。

はい。

さて、この作品はデビュー作「出世花」の続編になります。といってもシリーズではなく、完結編ですね。

ざっとあらすじを。不義密通の上に脱藩した妻を追って夫は娘を連れて江戸まで出てきますが夫は死んでしまい、娘ひとり残されます。娘を預かったのは、江戸の郊外、下落合村にある青泉寺というお寺。娘はもとの名前を(お艶)といったのですが寺の和尚から(お縁)と名付けてもらい、さらに、火葬の手伝いをするようになって(正縁)と名付けてもらいます。いつしか、青泉寺で火葬してもらう前に正縁に死に化粧をしてもらうと極楽に行けると巷の噂になります。

前作で、内藤新宿の菓子舗の主人夫婦がお縁を養女に迎えたいといってきますが、なんだかんだでお縁はその申し出を断り、これからも寺で葬式の手伝いをすることに。ここで豪快にネタバレを。この「桜花堂」という菓子舗の主人の後妻というのが、じつはお縁の実母だったのです。

前作で、とある遊女の死に化粧を頼まれたお縁ですが、その話を持ってきた(てまり)という遊女をある日たまたま見かけます。しかし、てまりの住む一帯は大火事があったばかりで、てまりの消息は不明でした。別の日のこと。数珠の修理をお願いに職人の家を訪ねたお縁は、そこに出てきた女性がてまりにうりふたつ、いや、てまりそのものだったのに驚きますが、本人は別の名前を・・・という「ふたり静」。

「桜花堂」の主人の息子、仙太郎が青泉寺に訪れます。仙太郎は桜花堂の日本橋支店を任されていたのですが火事で焼失、営業再開まで新宿本店に身を寄せることになったのですが、仙太郎の義母にあたるお香と、仙太郎の嫁が険悪で、ここはひとつ、お縁にしばらく桜花堂に来てほしいとお願いに。桜花堂に世話になるお縁ですが、さっそく事件が。桜花堂の菓子を食べたお得意さんが急死して・・・という「青葉風」。

「青葉風」で菓子を食べて急死した謎を解いたお縁は、捜査にあたっていた同心の新藤からえらく気に入られ、死因不明の事件があるとお縁に相談にくる始末。お縁は新藤に「桜花堂に世話になるよりも、早く青泉寺に戻りたい」と告げます。そんなことはさておき、とうとう仙太郎の嫁が出て行ってしまいます。お縁は仙太郎の嫁に会いに行くと、じつは赤ちゃんができた、というのです・・・という「夢の浮橋」。

大川(隅田)に架かる永代橋が崩落して、大勢の死者が出て、その亡骸を並べて、亡骸の着物を整えたり髪を結ったりしていたお縁を見ていた人が「ありゃあ生き菩薩様だ」と話題になります。幕府は、そういう「人心を惑わす」ような存在に対しては厳しく取り締まるので心配していたら案の定、役人がやって来て、あれこれ難癖をつけてしばらく閉門せよとの命令が・・・という表題作「蓮花の契り」。

これで完結。まあスッキリというエンディングではありませんが、ちゃんと収めるべきところに収めてくれたな、といった感じ。「生きるとは、死ぬとは、なんのために生まれてきたのか」という難しいテーマではありますが、そういうことをちょっとでも考えている方には手に取って読んでほしい作品です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする