学校の今年度分の科目を年明け早々にすべて終わらせてしまい、次の学年になる4月まで授業がありません。その間に今まで勉強した科目の復習でもすればいいのですが、そっちのほうは1日1時間くらいにしまして、ここぞとばかりに読書にいそしまないと。それにしてもあれですね、小学生の頃は夏休みの宿題を8月31日に泣きながらやってたようなヤツが大人になって期限のだいぶ前にすべて終わらすようになるとは、結局やらなければいけないことを後回しにしてもいいことありませんものね。招待状の出欠席の返信もすぐ出しますし。
以上、大人の階段登る君はまだシンデレラさ。
さて、井上靖さん。「あすなろ物語」「しろばんば」は(半自伝小説)で、この作品は(私小説)というふうになっています。
一人称の「私」はもちろん井上靖さんご本人。伊豆で生まれて、転勤の多かった軍医の父と母とはいっしょに住まずに曽祖父の妾といっしょに土蔵で暮らすというなかなかヘビーな環境で幼少時代を過ごしたのですが、国立大学を出て新聞社に就職して小説家になったのですから、しかもその幼少時代を小説にして代表作になるのですから人生わかりません。
父が退勤して、郷里の田舎で隠遁生活を送ることに。そんな父も亡くなって、母は80歳になって物忘れがひどくなって、というところから始まります。東京に連れてきてもすぐに帰りたがったり、同じ話を繰り返して「壊れたレコード」と家族が例えたり。まるでそれまでの人生を消しゴムで消してゆくような。
80歳のときの母が描かれた「花の下」。その5年後つまり85歳になった母の「月の光」、そして89歳になった母の「雪の面」の3部作構成になっていて、不思議と悲哀はありません。
以前、ネットで見かけたのですが、母親が息子に「もし私がボケてあなたを忘れちゃったらどうする」と聞いたら息子が「そしたら友だちになろうよ、きっと仲良くなれるよ」と言った、というのがあって、まあ実際にはそんなこといってられないくらい大変なんでしょうけど、素晴らしい息子さんですね。