暑いです。と書いたところで涼しくなるわけもないのですが。
さて、ネルソン・デミル。この作品は「ジョン・コーリー・シリーズ」の第2作目でして、だいぶ前に3作目の「ナイトフォール」を読んで、主人公はいっしょでもそれぞれ独立した話で順番はバラバラでも別に構わないということでようやく6年越しに手にしました。「ナイトフォール」に出てた「妻のケイト」とはこの作品でジョンと初めて出会って結婚したんですね。
元ニューヨーク市警の刑事、ジョン・コーリーは、連邦統合テロリスト対策特別機動隊(ATTF)のエージェントで、中東セクションに所属してます。ニューヨーク市警の刑事だった時に銃撃戦に巻き込まれて撃たれて、その後退職、刑事の学校で教員をしていましたが、連邦政府が警察での勤務経験がある人材をATTFで募集していると聞き、入ることに。
チームのメンバーは、CIAのテッド・ナッシュ、FBIのジョージ・フォスター、ニューヨーク市警のニック・モンティ、FBIのケイト・メイフィールド。
パリのアメリカ大使館に、アサド・ハリールというリビア人が亡命を希望してやって来ます。アメリカやイギリス、フランスなどの捜査機関が調べたところ、ハリールが訪れた西ヨーロッパ各地で爆破事件やアメリカ空軍士官殺害事件、アメリカ人小学生が銃撃されて殺された事件に関与が疑われているのですが、どれも立証されておらず、監視対象になっていたのですが、なんとパリのアメリカ大使館に堂々とやって来ます。
ハリールを保護勾留してパリからニューヨークの飛行機で連れてくるのですが、空港について車に乗せて無事にマンハッタンまで送るまで見届けるというのが、今回のミッション。
ニューヨークの航空交通管制センターで、パリ発トランスコンチネンタル175便が無通報状態になっていると責任者が報告を受けます。しかしこれはよくある話で、周波数を間違えてたり、自動操縦にしてフライトクルーが眠っていたり。何度交信しても応答なしで、ケネディ国際空港の管制塔に連絡して、救難サービス隊に警戒態勢をとってもらうことに。もしやハイジャックされてるのでは。
結局、なんの応答もないまま、トランスコンチネンタル175便はケネディ国際空港に着陸。パイロットに交信しますが、応答なし。ATTFのチームにもハリールを載せた飛行機が滑走路上で止まったままになっていて、無通報状態で着陸したと報告が入ります。
機内に火災の兆候は見られず、救難サービス隊は中に入ってみることに。物音ひとつせず、乗客は全員死んでいたのです。しかし、乗客の顔は毒ガスや煙、無酸素のような悶え苦しんでいる状態ではなく安眠しているよう。トイレに行きたくなり化粧室を開けると中に男が。お前は誰だと聞くと「私はアサド・ハリール」といって・・・
様子がおかしいので、ジョンとケイトは飛行機に向かいます。そこで、死体運搬車と医学検査官の出動が要請されていると知ります。中に入り、亡命者のリビア人と両隣のFBI職員の席に行くと、真ん中の男はアラブ系の男ではありますがハリールとは別人。パスポート、身分証明書、財布の中の金は取られておらず、銃だけが盗まれていました。他の乗客を確認すると、毛布に覆われた男を見つけ、額にマスクがかけてあるので持ち上げると額には銃口が。最初に機内に入った救難サービス隊の隊員でした。
ジョンは、なぜアサド・ハリールは銃(だけ)を盗んだのか、何かがおかしいと思いFBI職員の手を見てみるとふたりの指が切断されています。「まずい!」と急いでATTFの作戦本部に戻ります。指紋認証のドアを開けると女性職員とニック・モンティの死体が・・・
アサド・ハリールはどこに消えたのか。飛行機の乗客300人を殺害してまでアメリカに来たかった理由とは。ジョンはハリールを捕まえることができるのか。
文庫の上下巻とも700ページを超える厚さで、つまり合わせて1400ページの大長編。他にやることがあったとはいえ読み終わるまで1ヶ月かかってしまいました。しかし面白いです。ものすごく面白いです。児玉清さんのあとがき解説で「僕が好きな作家のトップに迷わず推すのがデミル。だが残念なことに日本では人気度がいまひとつ」とありますが、本当になんでしょうね。
内容的には重苦しいといいますか陰惨な部分もあったりしますが、オフザケにならない程度に笑える、特にジョンとケイトのやりとりは最高。