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晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ヘルマン・ヘッセ 『車輪の下』

2012-01-05 | 海外作家 ハ
作者とタイトルはよく知っていても読んだことは無く、かといって
買って読んでみよう、とまではいかない作品が多く、そのほとんど
は古典に属するものですが、先日ディケンズを読んだついで(とい
っては失礼ですが)に、とうとう『車輪の下』を読むことに。

ドイツの片田舎の小商人(仲買人兼代理店主)に住むギーベンラート
のひとり息子、ハンスは、幼いころから引っ込み思案で体も弱く、
しかし頭の良さは同年代の子どもたちよりずば抜けていて、しかし
家にお金の無いハンスは進学したいという希望も父に認められず、
お金の無い子弟はその当時、教会の神学校へ行くことしかできず、
猛勉強のすえ、成績上位で神学校へ入学します。

神学校は勉強の時間のほかは宿舎で暮らし、ハンスは「ヘラス」と
いう名前の部屋の9人部屋に入ります。
はじめのうちこそ成績上位で入学したハンスは大人たちからの期待
も高かったのですが、将来は詩人になりたいというハイルナーとの
友情が、ハンスの心の内に大きな影響を与えます。

もっとも、ハイルナーが性悪でハンスも堕落していった、というわけ
ではなく、あくまで「感化」された、ということですけど、ハンスの
成績はみるみる下がり、とうとう学校から、ハイルナーとの付き合い
をやめるように言われます。

そして、ハイルナーと過ごす時間を断ち切って、これから勉強を取り
戻そうとした矢先、ヘラスのクラスメートが死ぬといったショッキング
な事件が起こり、その他さまざまな要因が重なって、ハンスはもう
勉強ができなくなってしまい、中退します。
実家に戻って、仕事を見つけようとするハンスですが・・・

この話は、途中まではヘッセの自伝的な部分があって、じっさいヘッセ
は神学校に成績上位で入学して中退したそうです。
話の途中まで、ということは、ヘッセはその後見習い工から職人になって
、その合い間に詩や小説を書いて、やがてノーベル文学賞を受賞するまで
になるのですが、『車輪の下』のハンスは、そのようにはなりません。

というか、え?という衝撃的なエンディング。

エリートからの転落、子どもに分不相応なプレッシャーをかける是非、
といったような現代にも通じる話ですね。

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万城目学 『プリンセス・トヨトミ』

2012-01-04 | 日本人作家 ま
これで、万城目学の作品を読んだのは3作目となりますが(「鴨川
ホルモー」と「鹿男あをによし」)、やはりといいますか、荒唐無稽
なストーリーを「それっぽく」描かせたら天下一品ですね。

まず「大阪が全停止した」というショッキングな書き出し。そして
会計監査院の松平、鳥居の2人の男性、ゲーンズブールの1人の女性
(フランスと日本のハーフだけどフランス語は喋れず)が、大阪へ
出張というところからはじまります。

松平は国家公務員試験をトップで合格、仕事も完璧なスーパーマン
であるのに対し、鳥居はあまり出来は良くないくせに後輩には先輩風
を吹かすようなタイプ。そしてゲーンズブールも切れ者。こんな
チグハグな3人が向かったのが大阪府庁。

そこで府の会計の不備を見つけようとするのですが、仕事の出来なさ
そうな鳥居がなぜ呼ばれたのかというと、彼にはある「特技」があって、
さっそく鳥居は、資料の中の怪しい部分を発見します。

不明瞭な金の流れを見つけた会計監査院は、鳥居とゲーンズブールの
2人で、ある領収書に書かれた住所のビルへと向かいます。そこは
坂の中腹にあって坂道から見たら2階、と見えるのはビルの裏で、正面
から見ると4階建てのビルになっていて、外観は、どこかで見たことが
ある、と鳥居は考えて、のちに東京駅にそっくりだ、と気付き・・・

そんな話と並行して、大阪市内にある平凡な商店街のお好み焼き屋の
ひとり息子、大輔は、幼なじみの女の子、茶子と学校へ行こうとします
が、大輔はなんと女子の制服を着ています。

小さい頃から、女の子になりたかった大輔は、とうとう勇気をふりしぼって
セーラー服で登校しますが、当然といいますか、先生に呼び出されてジャージ
に着替えさせられます。そればかりか、学校一の不良に目をつけられて
しまい・・・

いったい、この会計監査院と中学生のふたり(男の子と女の子、いやふたりの
女の子?)が、どういう接点があって、どういう話の持っていき方で絡んで
くるのか、そもそも「大阪が全停止」とはどういった状況なのか。

話の展開は、中盤以降になっておぼろげに見えはじめ、そして後半になって
その突拍子もないアイデアに感心します。

ゲーンズブールという登場人物、「鴨川ホルモー」に出てくる、ホルモー部
の眼鏡の無口な女の子、そして「鹿男あをによし」に出てくる、京都の先生、
これら3人のヒロインは、キャラ設定はバラバラですが、なんとなく3人とも
似てますね。
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