『ひいらぎの宿』 (51)第5章 NPO法人「炭」の事務局長
たかが7兆円、されど7兆円

『土壌に木炭を施す事業そのものについては、国による国庫補助メニューは
どこをどう見つけても、一向にみあたらない』と、凛が重ねて悔しさぶりを強調しています。
地方が独自で炭撒きを実施するとして、その便益が将来に及ぶと考えた場合でも、
地方自治体が地方債を発行できる経費を規定している、現在の地方財政法5条(公共施設の整備)に
合致するものでなければ、発行のための許可は降りません。
森林を元気にすることは、国家100年の根幹を育てる大事業です。
しかもそれが、もともと山林にある資源(炭焼き)を活用して、地域経済振興の観点からも、
容易に実施しうる位置にあるのが、木炭を山林に散布という事業です。
炭の製造から炭撒きに至るまで、総額で7兆円がかかると仮定をしても10年計画で
全国に展開をしていくと考えれば、単年度でかかる費用は、7000億円あまりにすぎません。
国と地方で半分ずつ負担をすると考えれば、単年度の経費は、3500億円ずつです。
これにより全国の森林が蘇り、地域経済が再活性化するとなれば、必ずしも
高い買い物ではないようにも思えます。
「だけどねぇ。日本の政治家どもは、クズばっかりで、まったく使い物にならないの。
山村の振興や、地域経済振興のために、必要な施策を真剣に考えなければならないという
この時期に、ああだこうだと、のらりくらりと、あたしたちから逃げているばかりです。
酸性雨は土壌中の微生物を殺し続け、生命循環の輪を破壊し続けてきた。
すべての生きものは、微生物の力を借りなければ生きていくことはできません。
微生物のいない世界は、生命をつないでいくことができません。
酸性雨は土壌の中から猛毒のアルミニウムを溶かし、実を作るうえで大切なリンを奪い、
実を結べない森林を作ってきました。
長いこと毒の雨を受け、ここにきていろいろな影響が重なって現われてきました。
炭は微生物の住みかになり、そこで育つ樹木を元気にします。
炭をまいた県内の山や公園、栃木県の足尾町の山などの経過報告や、炭を使って
魚を増やした湖の例などを、さんざん紹介をしてきたというのに・・・・
それなのに、あの腰の重い政治家連中たちは、いつまでたっても一向に動きません。
あ~あ。思い出しただけで、何故かまた頭にきます!。
お酒をください、おじいちゃん。今夜は徹底的に飲み明かします!」
「お前さん。言うことが、過激になってきたぞ。
炭は命を救うということがよくわかったが、その過激ぶりでは、お前さんの身を滅ぼしかねん。
お前さんは、もしかしたら過激な共産党系かな?」
「失礼な。私は、政治的には、まったくの無色です。
NPO法人「炭」の言い分を聞いてくれる政治家さんなら、赤だろうが黒だろうが
右がだろうが左だろうが、効能について、いつでもトコトンまで語りにすっ飛んで行きます。
だけど、いまの国会議員たちは、どいつもこいつもクズばかりです。
福島第一原発の事故の実態を、隠し続けてきたあの東電のグズグズとした隠蔽体質は、
実は、軟弱すぎる与野党の議員先生たちに擁護されてきたために、温存をされてきたものです。
飛散した放射能の実態がどれほどひどいものであるかは、山を歩いてみればすぐに分かることです。
マスコミを使って世論を操作し、おおくの国民の目を欺くことができても、
自然を騙すことは、断じて、できません」
凛が、一升瓶をむんずとばかりに抱え込みます。
酒癖が悪いというよりも、何故か、聞く耳を持たない政治家たちに本気で真っ向から
腹を立てているという様子が、見ている側にもに伝わってきます。
「たかがの、7兆円ですよ。7兆円。たったの7兆円です
政治家がその気になれば、右から左へポンと動き出す金額じゃないですか!。
国土の未来を守るための根幹とも言える、大切な資本への投資だというのに、
それをサボってひたすら無駄使いに狂奔している政治家や、官僚たちの神経が信じられません。
例えば、無駄な税金の典型として、『国家公務員宿舎法施行令』に基づく
公務員専用マンションの建設があります。
2010年完成予定のタワー36階建ての建設費用が、「141億円」です。
これのすべてが、国民の税金です。
しかも、一部の官僚および役人しか住めません。あくまでも役人専用のマンションです。
会計検査院が、11月2日に、国の2011年度決算の検査報告をまとめて、
民主党の、野田佳彦首相に提出した報告書があります。
税金の無駄遣いなど、経理処理が不適切と指摘したのは全部で513件。
金額にして、なんと、1年間で5296億円。
金額は前年度比の1、2倍で、09年度(約1兆7904億円)に続き、
過去2番目に多かったそうです。
それだけじゃありません。
10兆5000億円の増税などから編成されている、東日本大震災の復興予算の、
総額19兆円の使い道がおかしいという話も飛び交っています。
事実、復興に直接関係のない、霞が関の合同庁舎の改修に、12億円。
被災地以外の3つの税務署の改修に5億円。沖縄の小中学校改修には、31億円。
あげくのはてには、被災地以外の国立大学の改修に、389億円。
被災地以外の全国の道路の整備に、273億円なんてのまであります。
震災から2年近くが経つというのに、総額19兆円の復興予算は宙に浮いたままです。
いまだに多くの被災者が、仮設住宅から脱出することができていません。
世の中、何かがどこかで狂っています。
必要なところへ、必要なお金が流れないなんて、信じられない世界です。
残念です・・・・とにかく、私は無念です・・・・」
凛の呂律が、微妙に怪しくなってきました。
ふらりと前後に凛の身体が揺れたあと、ポトリと茶碗が板の間に転がります。
『あなた!』清子が俊彦へ目で合図をしたまさにその瞬間、ふわりと崩れはじめた凛が
作次郎老人に覆いかぶさるように、徐々に倒れ込んでいきます。
「おおい。助けろ!。この姉ちゃん、見かけによらず意外と重いぞ!」
必死で凛の体を支えている作次郎老人の顔も、どうやら、飲み過ぎのようです。
いつのまにか、当人の顔も真っ赤になっています。
(52)へ、つづく

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たかが7兆円、されど7兆円

『土壌に木炭を施す事業そのものについては、国による国庫補助メニューは
どこをどう見つけても、一向にみあたらない』と、凛が重ねて悔しさぶりを強調しています。
地方が独自で炭撒きを実施するとして、その便益が将来に及ぶと考えた場合でも、
地方自治体が地方債を発行できる経費を規定している、現在の地方財政法5条(公共施設の整備)に
合致するものでなければ、発行のための許可は降りません。
森林を元気にすることは、国家100年の根幹を育てる大事業です。
しかもそれが、もともと山林にある資源(炭焼き)を活用して、地域経済振興の観点からも、
容易に実施しうる位置にあるのが、木炭を山林に散布という事業です。
炭の製造から炭撒きに至るまで、総額で7兆円がかかると仮定をしても10年計画で
全国に展開をしていくと考えれば、単年度でかかる費用は、7000億円あまりにすぎません。
国と地方で半分ずつ負担をすると考えれば、単年度の経費は、3500億円ずつです。
これにより全国の森林が蘇り、地域経済が再活性化するとなれば、必ずしも
高い買い物ではないようにも思えます。
「だけどねぇ。日本の政治家どもは、クズばっかりで、まったく使い物にならないの。
山村の振興や、地域経済振興のために、必要な施策を真剣に考えなければならないという
この時期に、ああだこうだと、のらりくらりと、あたしたちから逃げているばかりです。
酸性雨は土壌中の微生物を殺し続け、生命循環の輪を破壊し続けてきた。
すべての生きものは、微生物の力を借りなければ生きていくことはできません。
微生物のいない世界は、生命をつないでいくことができません。
酸性雨は土壌の中から猛毒のアルミニウムを溶かし、実を作るうえで大切なリンを奪い、
実を結べない森林を作ってきました。
長いこと毒の雨を受け、ここにきていろいろな影響が重なって現われてきました。
炭は微生物の住みかになり、そこで育つ樹木を元気にします。
炭をまいた県内の山や公園、栃木県の足尾町の山などの経過報告や、炭を使って
魚を増やした湖の例などを、さんざん紹介をしてきたというのに・・・・
それなのに、あの腰の重い政治家連中たちは、いつまでたっても一向に動きません。
あ~あ。思い出しただけで、何故かまた頭にきます!。
お酒をください、おじいちゃん。今夜は徹底的に飲み明かします!」
「お前さん。言うことが、過激になってきたぞ。
炭は命を救うということがよくわかったが、その過激ぶりでは、お前さんの身を滅ぼしかねん。
お前さんは、もしかしたら過激な共産党系かな?」
「失礼な。私は、政治的には、まったくの無色です。
NPO法人「炭」の言い分を聞いてくれる政治家さんなら、赤だろうが黒だろうが
右がだろうが左だろうが、効能について、いつでもトコトンまで語りにすっ飛んで行きます。
だけど、いまの国会議員たちは、どいつもこいつもクズばかりです。
福島第一原発の事故の実態を、隠し続けてきたあの東電のグズグズとした隠蔽体質は、
実は、軟弱すぎる与野党の議員先生たちに擁護されてきたために、温存をされてきたものです。
飛散した放射能の実態がどれほどひどいものであるかは、山を歩いてみればすぐに分かることです。
マスコミを使って世論を操作し、おおくの国民の目を欺くことができても、
自然を騙すことは、断じて、できません」
凛が、一升瓶をむんずとばかりに抱え込みます。
酒癖が悪いというよりも、何故か、聞く耳を持たない政治家たちに本気で真っ向から
腹を立てているという様子が、見ている側にもに伝わってきます。
「たかがの、7兆円ですよ。7兆円。たったの7兆円です
政治家がその気になれば、右から左へポンと動き出す金額じゃないですか!。
国土の未来を守るための根幹とも言える、大切な資本への投資だというのに、
それをサボってひたすら無駄使いに狂奔している政治家や、官僚たちの神経が信じられません。
例えば、無駄な税金の典型として、『国家公務員宿舎法施行令』に基づく
公務員専用マンションの建設があります。
2010年完成予定のタワー36階建ての建設費用が、「141億円」です。
これのすべてが、国民の税金です。
しかも、一部の官僚および役人しか住めません。あくまでも役人専用のマンションです。
会計検査院が、11月2日に、国の2011年度決算の検査報告をまとめて、
民主党の、野田佳彦首相に提出した報告書があります。
税金の無駄遣いなど、経理処理が不適切と指摘したのは全部で513件。
金額にして、なんと、1年間で5296億円。
金額は前年度比の1、2倍で、09年度(約1兆7904億円)に続き、
過去2番目に多かったそうです。
それだけじゃありません。
10兆5000億円の増税などから編成されている、東日本大震災の復興予算の、
総額19兆円の使い道がおかしいという話も飛び交っています。
事実、復興に直接関係のない、霞が関の合同庁舎の改修に、12億円。
被災地以外の3つの税務署の改修に5億円。沖縄の小中学校改修には、31億円。
あげくのはてには、被災地以外の国立大学の改修に、389億円。
被災地以外の全国の道路の整備に、273億円なんてのまであります。
震災から2年近くが経つというのに、総額19兆円の復興予算は宙に浮いたままです。
いまだに多くの被災者が、仮設住宅から脱出することができていません。
世の中、何かがどこかで狂っています。
必要なところへ、必要なお金が流れないなんて、信じられない世界です。
残念です・・・・とにかく、私は無念です・・・・」
凛の呂律が、微妙に怪しくなってきました。
ふらりと前後に凛の身体が揺れたあと、ポトリと茶碗が板の間に転がります。
『あなた!』清子が俊彦へ目で合図をしたまさにその瞬間、ふわりと崩れはじめた凛が
作次郎老人に覆いかぶさるように、徐々に倒れ込んでいきます。
「おおい。助けろ!。この姉ちゃん、見かけによらず意外と重いぞ!」
必死で凛の体を支えている作次郎老人の顔も、どうやら、飲み過ぎのようです。
いつのまにか、当人の顔も真っ赤になっています。
(52)へ、つづく

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