北へふたり旅(97)
「あれ・・・」急に違和感をかんじた。
身体が重くなったような気がした。
目まいではないが、一瞬視界も暗くなった。
足から急激に力がぬけていくのを感じた。
思わず妻の肩へ手を置く。
妻が振りむく
「どうしたの、あなた?」
「ちょっと目まいがした、ような気がする」
「だいじょうぶ?」
「座りたいな。すこし」
ユキちゃんがあわてて通路を見回す。
「通路にベンチはあらないべ。
もうすこしさきに大通駅の広場があるっしょ。
だいじょうぶですか。そこまで歩くことができますか?」
「ゆっくりなら・・・」
感覚のなくなった足をひきずりながら歩きはじめた。
妻が肩を貸し、反対側にまわったユキちゃんが背中をささえてくれた。
「遠いの。駅は?」
「あと50メートルくらいっしょ」
その50mが果てしなく遠い。
踏みこんだはずの足が頼りない。まったく力がはいらない。
歩数にして100歩足らずの距離を必死で歩いた。
こんなことは初めてだ。
「ここ。座れます」
地下鉄大通駅の構内、ユキちゃんが空いているベンチを確保してくれた。
人通りは多い。しかしちょっとした休憩は出来る。
違和感はまだ去らない。
とにかく全身がだるい。体が重い。歩くだけで辛い。
何処から来るのだろう・・・この淀んだような疲労感は。
「何か呑みます?。わたし、買ってくるっしょ」
ユキちゃんが売店を指さす。
「ありがとう。のどは乾いていないから大丈夫。
ただ、みょうに身体が重い。
もうすこし休んでいれば、良くなるかもしれない。
わるいね。迷惑かけて」
「迷惑なんてとんでもない。
具合がわるいときはお互い様です」
「疲れが出たのかしらねぇ・・・旅の」妻がささやく。
「それは有るかもしれない。歳だからな。俺ももう・・・」
「あら。やだ。本気にしないで。冗談で言ったるもりなのに」
「こんなときに冗談を言うな。きついな君も」
「ホントに具合悪いみたいね。あなたったら」
それ以上、妻に反論する元気もなかった。
それほど身体が重く、すこし動くにも大儀な状態がつづいていた。
何だこの疲労感は・・・どうしちまったんだいったい。
俺の身体は。
(98)へつづく
「あれ・・・」急に違和感をかんじた。
身体が重くなったような気がした。
目まいではないが、一瞬視界も暗くなった。
足から急激に力がぬけていくのを感じた。
思わず妻の肩へ手を置く。
妻が振りむく
「どうしたの、あなた?」
「ちょっと目まいがした、ような気がする」
「だいじょうぶ?」
「座りたいな。すこし」
ユキちゃんがあわてて通路を見回す。
「通路にベンチはあらないべ。
もうすこしさきに大通駅の広場があるっしょ。
だいじょうぶですか。そこまで歩くことができますか?」
「ゆっくりなら・・・」
感覚のなくなった足をひきずりながら歩きはじめた。
妻が肩を貸し、反対側にまわったユキちゃんが背中をささえてくれた。
「遠いの。駅は?」
「あと50メートルくらいっしょ」
その50mが果てしなく遠い。
踏みこんだはずの足が頼りない。まったく力がはいらない。
歩数にして100歩足らずの距離を必死で歩いた。
こんなことは初めてだ。
「ここ。座れます」
地下鉄大通駅の構内、ユキちゃんが空いているベンチを確保してくれた。
人通りは多い。しかしちょっとした休憩は出来る。
違和感はまだ去らない。
とにかく全身がだるい。体が重い。歩くだけで辛い。
何処から来るのだろう・・・この淀んだような疲労感は。
「何か呑みます?。わたし、買ってくるっしょ」
ユキちゃんが売店を指さす。
「ありがとう。のどは乾いていないから大丈夫。
ただ、みょうに身体が重い。
もうすこし休んでいれば、良くなるかもしれない。
わるいね。迷惑かけて」
「迷惑なんてとんでもない。
具合がわるいときはお互い様です」
「疲れが出たのかしらねぇ・・・旅の」妻がささやく。
「それは有るかもしれない。歳だからな。俺ももう・・・」
「あら。やだ。本気にしないで。冗談で言ったるもりなのに」
「こんなときに冗談を言うな。きついな君も」
「ホントに具合悪いみたいね。あなたったら」
それ以上、妻に反論する元気もなかった。
それほど身体が重く、すこし動くにも大儀な状態がつづいていた。
何だこの疲労感は・・・どうしちまったんだいったい。
俺の身体は。
(98)へつづく