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フランク・ブラングィン展

2010-05-05 | 『美術館・絵画に関すること』

今日は、上野の国立西洋美術館で、『フランク・ブラングィン展』を見ました。







ブラングィンは、1867年から1956年に活躍したイギリス人画家。


この展覧会ではブラングィン芸術を回顧する、日本初の展覧会で、8ヶ国30ヶ所の美術館、120点のコレクター所蔵作品が展示されている。


ブラングィンは、英国ロイヤルアカデミーで現存作家として初の個展を開催した他、カナダ国内やニューヨークロックフェラーセンタービルに壁画を制作した。


アール・アンド・クラフツ運動から、アール・ヌーボー、更には、アール・デコという同時代の装飾芸術運動を背景に油彩画だけでなく、カーペットや家具デザイン、版画など多岐に渡って才能を発揮した。


驚いたことに、ブラングィンは美術学校での正規の教育を受けていない。


父はゴシックリバイバルの建築家だった。



15歳で建築家アーサー・ヘイゲイト・マクマードゥに学ぶ。


絵画では穏やかな色調の初期絵画を描いたが、やがて、スペイン、アフリカ、トルコを訪れ、明るい陽射し、鮮やかな色彩に触れ、それからは、装飾性の高い作品を制作した。


私は、後期の絵画を見て、ゴーギャンみたいな色使いだなぁ、と思いました。



家具デザインでは、ダイニングチェアやキャビネット、テーブル、などがありました。


装飾的で、彫り込まれた彫刻の色彩も洗練され、こんなのがお部屋にあったら幸せ!と、思いました。



ポスターデザインでは、有名なアール・ヌーボーのポスターを目にできて、うれしかったです。

素敵な、ティファニーのグラスとムーニエのブロンズ製品の展覧会ポスター。



川崎造船所(現・川崎重工業)初代社長、松方幸次郎は、第1次世界大戦の造船特需で財産を築いた。


1916年、ブラングィンと出会い、彼の芸術に感銘を受ける。


のちに、松方氏は、収集したブラングィン作品を公開・展示する、美術館の設計をブラングィンに任せるが、川崎造船所が傾いてしまい、幻の美術館《共楽美術館》は実現しなかった。



ブラングィンにとって有力なパトロンだった松方氏は、220点を所蔵していた。



しかし、これら多くの美術品は数奇な運命を辿る。


当時、美術品の輸入に高い関税が課せられていた事と、川崎造船所の経営難のために、作品は、長く、ロンドンの倉庫とパリのロダン美術館に保管されていた。


ところが、1939年、ロンドン倉庫は火災にあい、全て消失してしまった。



1915年、自然の根源である『地』『火』『水』『空気』との共存を考え描かれた、壁画がある。


松方氏は全8点の壁面を所蔵していたが、4点は造船所経営危機で差し押さえられた。


その差し押さえの4点は現存しているが、他の4点は行方不明となった。



現存する4点は、落とし込まれた暗い色調の中に、自然の静かな躍動を感じました。


地味ですが、ずっと見ていたい、と感じました。



多才な中でも、壁面装飾家としての才能は群を抜き、木々や草花を装飾的にあしらった構図には、ブラングィンの創造性が輝いています。




全体を見て、『光と闇を知り尽くした人』と、感じました。



素晴らしい経験をたくさんし、深い哀しみにも出会い、洞察の深い人生だったのでは、と想像しました。







○資料は美術館掲示より


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