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∞ ∞ Alice is Wonderland ∞ ∞
『では皆さん、待ちに待ったアリスの解剖の時間です』
『アリスを解剖なんてやりすぎじゃない?』
『どうしても見たいと言ったのは君だろう?』
『だって、不思議の国をわがもの顔で歩き回っているアリスが何でできているか、気になるんだよ』
『それはみんなだって同じ気持ちさ、アリスだけなんで特別なのか』
『そうと決まったら、アリスが眠っている間に見てみよう!』
『賛成』
なまつばをごくりと飲み込むと、全員の視線はアリスのおなかに注がれた。
侍従長が仰々しくメスを取り、アリスのおなかにそっとあてた。
一瞬の間をおいてからふわっとなにかが浮かびあがったかと思うと、ひゅるひゅるするすると、無数の時計たちが はじけ出てきた!
鯉の滝登りのように時計はふき出し続け、もう夕暮れになってしまった。
時計が出尽くしたあとには、アリスのかわいらしい服だけがぱさりと残った。
『アリスはなに?時計でできていたというの??』
『見た限りではそうらしいよ』
『いろんな時計があったね、大きいの、小さいの、かわいらしいの、痛いの、温かいの、優しいの、つらいの。』
『そうだね、すいぶんたくさんの時があったね。』
『思ったよりたいしたことなかったね。』
『それなりにたいしてるとこもあったね』
『やっぱりたいしたことないよ』
『アリスは幸せだったのかな』
『アリスとしてはまあまあじゃないかな』
『なんでよ』
『アリスのなかはけっきょくあの時計たちでいっぱいで、それなりに充実してたからさ』
『そうか、それじゃよかったね。』
『いいもの、見たね。』
『そうかもね』
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