のほほんとしててもいいですか

ソプラノ歌手 佐藤容子のブログです。よろしくお願いいたします!

『あてもなき刹那』

2024-09-20 | 『詩・散文』
とりとめもない

がらくたのなかに

真理はあり

あてもなく

彷徨うこの路に

本当の時があると

そう思う

それは時に愉快で

時にむなしく

また朗らかでもあり

憎めない星の砂




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黄色の風

2024-05-14 | 『詩・散文』
若い葉が

じゃれ合って

黄色の風に

目配せする

こぼれ落ちる青い香り

溢れ出る赤い情熱

生命の祭典

五月の刹那













Photo by (c)Tomo.Yun
http://www.yunphoto.net
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

深い憤りと受容のなかに

2024-05-12 | 『詩・散文』
わたしはこれを受け入れることができる


そう自分自身に確認を繰り返し、言い聞かせる


とたんにせき止められたなにかが氾濫を起こす


遠い星のかなたから見れば


われわれはちっぽけだ


ちっぽけ過ぎて、気にも留められないだろう


でも


ひとりひとりが


小さなことに一喜一憂し


小さな幸せを必死に握りしめている


すこしでも長く、握りしめている









Photo by (c)Tomo.Yun
http://www.yunphoto.net
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

創作『生前の約束は』

2023-12-11 | 『詩・散文』
薄紫色の霧が架かった河のなかを、歩いて渡っていた。


真冬だというのに、河の水に不思議と冷たさはなく、逆に生あたたかい気さえした。


深さは腰より少し上くらいか、時々、足が取られて、引き返した方がいいのかな、と、後ろをふり返る。



ジョウビタキ??
おびただしい数の鋭い声。
覆いかぶさるかのように近くに遠くに聞こえてくる。




暗闇の先に対岸が見え始めた。


水のなかを進むのは、なぜか時間が長く感じる。


水に入ってから10分くらいは経ったかな。



河から上がると、ビッショリなはずの服はそれほど濡れていなくて、少し安堵した。


「待たせるじゃないか」


父の声にびっくりして、顔をあげた。


久しぶりに会うのに、あまりうれしそうじゃない。


父は13年前に他界した。


「あ!お父さん」



見た目は最後に会ったときより老けて見えた。


「おまえがいちばんにここに来るとはね」


意味はよくわからないが、私はとりあえず、会ったらすぐに話そうとしていたことを切り出した。


「お父さん、あのね、話したいことはいろいろあるのだけど、ここへ来る直前に、子どもの時に交わした約束、それを言わなきゃ、って」


「約束?生きていた時の、、、?死後の世界には生前の約束は持ってこれないのだが、、、」



わたしは、それは困るな、と思い、話を続けた。


「えっと、よくわからないのだけど、ここへ来る前に、たしか大きな怪我をして、病院へ運ばれたの。その時に、『白馬に乗せてくれる』っていう、お父さんとの約束を思い出して、会ったらすぐに言おうって」





「あの〜、すみません、、」天国の警察の人が近づいてきた。


「河を渡る前に、生前の約束を河岸のロッカーに入れましたか?置いてこなかったのならルール違反だから、今回は帰ってもらえますか?」


「え?」私は答えた。


「せっかく来たし、父にも会えたし、ここにいたいのだけど、、、。河を戻るのも大変だし」



警察の人はいった。
「申し訳ないんですが、ダメです。よかったらジョウビタキ達に送らせるか、20メートルくらい上流に行けば、イカダも出てますので、、、」



わたしは仕方なく、父に別れを告げて、ジョウビタキの助けを借りて、河を戻った。





目を開けると、病院の白い天井だった。




誰かの泣き声が、一層大きくなった。



そうか、、、あの河、、、。

























Photo by (c)Tomo.Yun


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「X線検査」

2023-12-02 | 『詩・散文』
アクセサリーはずして、そのなかに。

そこに立って、腕を両側に。


小さなX線診療室に入り、服を脱いで、機械の前に立つ



はい、息を止めてください。


心のなかまで透過して


その描き出される濃淡が


本心を描き出していたら、、、


そんなばかなことを考えて、息を止める



でも、心ってなんだろう


本当はどこにある??


とても大切そうに言われるのに臓器がない


心臓はあるけど、感じる役割をするかしら?


聞いたことないわね



脳のなかは脳のなか



心ではないね



心から感謝申し上げます



どこから??




それとも、だれかにはある?




わたしたぶん、あとで診察室で医師から言われるのよ



あ〜、残念ですね、あなたには心がないようで、、、うまく結果が出ませんでした



どんな顔をしようか


睨む?


恥ずかしくなって紅潮するかな




心がない、なんて、全ての人に心が見当たらないかもしれないなんて、いまごろ気づいて、これって大変なこと



小学校の国語の教科書



「心に感じたことを書いてみましょう」




奇怪な事実にいま気づく




「はい、いいですよ、服を着て診察室でお待ち下さい」




わかりました。



服で覆われて、よかった、これであるかないか、他の人からは、なおさらわからなくなり。



電磁波がわたしを通り抜けて、無形の残像を遺した




佐藤容子

No.9408 明治村 名古屋衛戍病院
明治村の名古屋衛戍病院の医療用X線装置「ダイアナ号」の電流計。
Photo by (c)Tomo.Yun
http://www.yunphoto.net
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする