昨日、ベルリオーズの『幻想交響曲』第2楽章(舞踏会)のメロディをアレンジした曲をやったので、他の交響曲とはちょっと変わった『幻想交響曲』について書きます。
ベートーベンが交響曲第9番『合唱付き』を作曲したあと、ロマン派の作曲家にとってその存在は巨大で乗り越えることができないかのように見えた。
ベートーベンの『第9』は外面的には現存する器楽曲中最大で、これ以後、量も目標も汲みつくされたかに思われた、と、シューマンは記している。
そんな中、フランス人作曲家ベルリオーズが作曲した『幻想交響曲』には、新たな可能性が感じられた。
この曲は標題(プログラム)交響曲として書かれ、主人公の若い音楽家(たぶん本人)が描く恋人のイメージが『固定楽想』として設定され、物語的に展開する。
1827年、ベルリオーズが24歳のとき、革命が迫り不安なパリにイギリスからシェイクスピアの劇団が来た。
その劇団の美しい女優のヘンリエッタ・スミスソンに恋をしてしまい、告白するが相手にされなかった。
ベルリオーズはその失恋のショックを『幻想交響曲』の作曲につぎ込んだ。
楽譜には自分のことと思われる筋書きがついている。
『感じやすく空想力ある若い芸術家が、恋の情熱を爆発させ麻薬を飲んで自殺しようとするが、死にきれず、いろいろな幻想を描く…』
第1楽章『夢と情熱』(不安と言い知れない気持ちでいると、すばらしい女性が現れ、たちまち喜びと情熱の炎が燃え狂う)
第2楽章『舞踏会』(舞踏会で再び憧れる人に出会う)
第3楽章『田園風景』(美しい野原を歩き、若い芸術家の心は静まるが、そこへ憧れる人の姿が現れ再び不安と寂しさに襲われる)
第4楽章『刑場への行進』(愛する女性を殺してしまい絞首刑になる)
第5楽章『夢に見る悪魔の饗宴』(若い芸術家の葬式に悪魔がより集まり、恐ろしい地獄の踊りが始まる)
こんなようなストーリーが付いています。
後に、ベルリオーズは望みが叶い、ヘンリエッタと結婚しますが、お金の使い方が荒い女性で、幸せな結婚ではなかったようです。
この『幻想交響曲』の楽器編成は、ベートーベンにおいて確立した二管編成(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの木管楽器が2本ずつ用いられる)に加え、イングリッシュホルン、変ホ調クラリネット、コルネット、オフィクレイド(1817年に考案された金管楽器)、ハープで編成されている。
また第2楽章では海綿で覆ったバチでティンパニを叩いたり、終楽章ではヴァイオリンの弓の木の部分で弦を弾く(コル・レーニョ)など、新しい工夫がされた。
こんな感じの曲です。
機会がありましたら聴いて下さいね。