第3話≪セージ≫
ここはスカボロー
商人が行きかう街
あの緑のスタンドで老婆が売っているのはセージ
昔の恋を思い出していました
かなり昔のことです
わたしはいつもあなたを想い、あなたもいつもわたしを想っていました
わたしの目はいつもあなたの姿を追い、あなたの目はいつもわたしを追いました
わたしはいつも遠くにいるあなたの呼吸を感じ、あなたはいつもわたしの鼓動をつかんでいました
でもわたしは森の奥に住む妖精のセージ
池のほとりの大木に一人ですむセージ
もちろん知っていました
あなたを愛せば死神をも愛さなければならないことを
そう
わたしに死がやってくることを
でも
瞬間でもよかった
愛というものに包まれてみたかった
わたしはこうして緑の葉になりました
でもあの暖かい一瞬のことはずっと忘れません