名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(406); 四間飛車に左美濃

2017-01-21 | 大山将棋研究
☆ 昨日の復習

後手番大山先生の次の手は?



☆ 今日の棋譜
昭和53年4月、飯野健二先生と第17期十段戦です。飯野先生はプロ入り4年目で、これに勝てば十段リーグ入りだったようです。

大山先生の四間飛車に、飯野先生は持久戦で

22玉の形の左美濃に。すでに大山先生は左銀を腰かけているのですから、角筋に入って危険です。作戦負けになりそう。

74歩~51角~73角まで間に合わないといけないのですが、65歩~45歩のほうが速いので困っています。84飛は悩んだ末でしょうけれど、好んで指す手ではないです。

手待ちをして25歩と突かれました。こうなるなら12玉と角筋をかわしておきそうなものなのですが。

25歩は取れないので、74飛24歩同角78飛のやりとりから35歩。玉砕のようですが、何か動かないとだめだと判断したのでしょう。

大山先生は44角~76飛とすることができたのですが、飛車をさばかせただけなので玉頭を厚く構えます。

飯野先生も玉頭戦です。歩を合わせて金を繰り出せば、大山先生は銀を寄せます。

手堅いですね。13角の位置が悪いだろうとみています。

頃合いを見て端を攻めます。これがどれだけ厳しいかの勝負。

銀香交換ですが、角が飛び出して決戦です。46同銀も考えられますが

じっと14歩と抑えて、馬飛を追えばよいのですかね?危険な感じがしますが。

飯野先生は馬飛を切って香をたらして、手ごたえがあったのではないでしょうか。

桂を捨てて金を捨てて、取れば48角です。(でもその変化も先手が指せるようです。)

先手玉が詰めろでピンチ。この図を見たことがあります。河口先生の観戦記だったとおもいますが、どの本だったか思い出せません。

まずは13角で、取れば詰みなので12玉。

それから銀を引くのです。飛車の横利きが通って詰めろ逃れ。27金は46角成です。

49同香成に57角成で詰めろ逃れの詰めろ。大山先生の勝ちです。

大山先生はどこでこの筋に気が付いたのでしょうか?37金を取らなかったのですから、それ以前に発見したのでしょうね。怖い筋に踏み込んで、でも助かっているのですから不思議なんです。読み切って指しているのではなくて、何とかなりそうだとわかっていたのでしょうね。
「助からないと思っても助かっている」という大山先生の名言がありましたが、これはその好例です。簡単にあきらめてはいけない、という意味だけに解釈すべきです。
でも作戦勝ちだったはずなのに、危なくなりましたね。中盤で78飛としたのに44角~76飛を選ばなかったためだと思うのですが、48飛~45歩でしょうか。
それはともかく面白い終盤になりました。変化も考えてみてください。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山十五世名人
後手:飯野健二4段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 6六歩(67)
4 8四歩(83)
5 7八銀(79)
6 6二銀(71)
7 6八飛(28)
8 5四歩(53)
9 4八玉(59)
10 4二玉(51)
11 3八玉(48)
12 3二玉(42)
13 2八玉(38)
14 1四歩(13)
15 1六歩(17)
16 5三銀(62)
17 6七銀(78)
18 4四歩(43)
19 5六銀(67)
20 5二金(61)
21 3八銀(39)
22 3三角(22)
23 5八金(69)
24 2二玉(32)
25 4六歩(47)
26 3二銀(31)
27 3六歩(37)
28 4三金(52)
29 3七桂(29)
30 8五歩(84)
31 7七角(88)
32 2四歩(23)
33 2六歩(27)
34 8四飛(82)
35 4七金(58)
36 2三銀(32)
37 2七銀(38)
38 3二金(41)
39 3八金(49)
40 9四歩(93)
41 6五歩(66)
42 9五歩(94)
43 2五歩(26)
44 7四飛(84)
45 2四歩(25)
46 同 角(33)
47 7八飛(68)
48 3五歩(34)
49 2五歩打
50 1三角(24)
51 3五歩(36)
52 7六飛(74)
53 3六金(47)
54 3四歩打
55 同 歩(35)
56 同 金(43)
57 4七銀(56)
58 3三桂(21)
59 2六金(36)
60 5五歩(54)
61 3六歩打
62 5四銀(53)
63 1五歩(16)
64 同 歩(14)
65 1四歩打
66 同 銀(23)
67 1五香(19)
68 同 銀(14)
69 同 金(26)
70 4六角(13)
71 1四歩打
72 5七角成(46)
73 5八銀(47)
74 5六馬(57)
75 6七銀打
76 3八馬(56)
77 同 玉(28)
78 7七飛成(76)
79 同 桂(89)
80 4六香打
81 5一飛打
82 4五桂(33)
83 同 桂(37)
84 3七金打
85 2九玉(38)
86 1七角打
87 1三角打
88 1二玉(22)
89 4九銀(58)
90 同 香成(46)
91 5七角成(13)
92 投了
まで91手で先手の勝ち

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20170121今日の一手(その451): どの攻め筋が有効か

2017-01-21 | 今日の一手
20170121今日の一手

1月7日の名南将棋大会から、AさんとMさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答

(多分後手が45歩と伸ばしたところ、先手番です。)
☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは少し後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は37桂79角で2枚。
後手の攻め駒は33角1枚。

総合すれば互角です。

☆ 大局観として
先手は鳥刺しですね。59金右の形が工夫でしょうか。66に左銀が出るのはあまり良い指し方だとは思わないのですが、この場合は55歩や55銀のねらいがあります。(66に出ないで46に出る、45歩の形なら46歩同歩同銀とする、ほうが手に困らないことが多い。)
この戦法は玉を固く囲うのではなく、あくまで急戦が狙いです。左銀が66にあるのですから後手玉よりも堅くなりません。今は攻め駒が2枚ですが、66の銀あるいは48の銀と、28飛を攻めに使いたいです。
どこから攻めますか?


× 囲うなら88玉ですが

52金左78金65歩55銀同銀同歩同角

というのは後手の望むところ。あるいは44角から33桂と待つ人もいるでしょう。これでも互角ですが、作戦としてはつまらないです。


△ 24歩同歩

という突き捨てはいつ入れるかわからないのですが、向い飛車ですからいつでも入るので、とりあえず変化を考える上では保留しておきます。右桂を跳ねているので25歩から伸ばされても構いませんから、戦いが始まるなら早く突き捨てておいてもよいです。


△ 実戦は55歩でした。

55同銀に45桂44角53桂不成

というのが狙いの手で、駒得になります。以下は66銀41桂成55角(55銀か75銀と逃げておくほうが良い)46金

52飛66歩同角67歩84角57歩

こう進むなら先手十分です。歩切れですが金得です。41の成桂の働きが良くないので今一つではありますが、有利なのは間違いありません。この後も駒得を主張したのですが、受け間違って食いつかれてTさんの負け。残念でした。

後手としては55歩は取れません。43銀と我慢して

こうなると66の銀が攻めに使えないので、46歩同歩同角52金左47銀

とじっくり右銀を前に出していくか

45桂と取って

44角37銀52金左46銀33桂35歩

という戦い方か。
どちらもあると思います。この時に59金右の形よりも58金右のほうが働いている(玉の腹が空いていない)ので、振り飛車としては得ではないかという感じです。


○ 55銀とぶつけたら

今度は43銀では45桂があるので引きにくいです。55同銀同歩同角に56銀33角45銀

となるのでしょう。後手から反撃手段がないので、34銀と取って銀が遊ぶということもなさそう。
43銀と打っても35歩同歩同角が好調子。44歩に34歩42角44角

44同銀同銀32金45桂

となれば好調です。


△ 46歩もあって

46同歩同角65歩

55銀に42飛45歩同銀同桂同飛


あるいは45歩の時に55銀同歩か。


どちらも互角でこれからですが、やはり59金右が生きていないので後手のほうを持ちたいのかな、という気はします。


△ 35歩は激しい手で

桂頭に弱点ができるのですが、35同歩同角に52金左が欠かせず、34歩が入ります。

51角24歩同歩44角32飛

11角成に36歩は35香

が好手で先手よし。

戻って11角成に34飛12馬

35飛55歩(同銀には45馬)36歩54歩37歩成44銀

と激しく進んで難しい形勢です。


☆ まとめ
問題図では後手の45歩の価値が小さい(77歩の形のため)ので先手のチャンスでした。
攻めを考えたいところで、24歩同歩を除外すれば、55歩、55銀、46歩、35歩の4択です。
比較に悩むかもしれませんが、左銀を攻めに使うか、右銀を攻めに使うか、どちらもそのままか、という違いがあります。(これは攻め駒の数に関係してきます。)

実戦の55歩は取ってもらえるなら先手が有利になりやすいです。これは66銀が攻め駒になるからですね。45桂から53桂不成という決め手がありました。
取らないで43銀なら互角で、ただし59金右が少し不満。

55銀のほうが取ってもらえるのでわかりやすいと思います。その後銀を投入するのはあまり良い手ではないことが多いのですが、この場合は後手の左金が低いので案外に有効です。

46歩は筋が良いのですが、66銀が攻めに働かないので形勢は難しいです。

35歩は激戦。場合によっては成立する筋です。先手玉が堅ければ十分になりやすいところですが、66銀が中途半端なのであまり考えないほうが良いのかもしれません。


こういう変化を見て、鳥刺しならではの感覚がわかるでしょうか。後手の45歩は普通の急戦なら反撃の切り札ですが、この場合は角筋に駒がないので指さないほうが良いです。攻めの目標になってしまいます。
鳥刺しの名手Tさんですが、66銀は賛同できません。46に出るほうが良いです。問題図の場合は同じ理屈で55銀とぶつけて交換するほうが良いのです。
コメント (2)
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