山陽本線の車窓からはなかなか海は見えません。瀬戸内海に沿って走っている筈の路線なのに。
作家内田百聞先生が著書「阿房列車」の中で山陽本線から海がなかなか見えない事に触れ、新幹線が開通する前の遥か昔に大阪と九州を結んで走っていた特急かもめを、「まるでかもめではなく特急からすである」と揶揄した一節がありました。山陽本線に乗るといつも思い出します。
海が見えないと言っても全く見えない訳でもなく、神戸の須磨海岸付近は対岸に淡路島を望み、そこに架かる明石海峡大橋のスケール感と合わせ、自然と人工物の見事で雄大な融合を堪能出来ます。岡山県だと笠岡付近の白壁造りの家々と海岸。広島県なら尾道付近と宮島付近。
尾道は大林宣彦監督の映画「転校生」、「時をかける少女」、「ふたり」などの舞台となった町。海のそばが斜面になっている町なので、坂道から海と瀬戸内海に浮かぶ島々を眺められる町。建物が妙に昭和チックなのも良い。
そんな尾道を過ぎ、三原から私の前の席に可愛い女の子がやってきました。彼女は進行方向と逆向きに座っているのでこちらから顔が見える。
「さやしー?」
そう思ってしまうほど似ている。ただし年齢は大学生くらいでしょうか。さやしーが二十歳くらいになったらこんな感じに成長するのだろうか?と、うたた寝をする彼女の顔を少し見ていました。
山口県に入り、岩国を過ぎた頃、今度は通路を挟んだ隣のボックスにPerfumeのあ~ちゃんに似た人が来ました。年齢も本物と同じくらい。あ~ちゃんは徳山で降りていきました。徳山はモーニング娘。コンサートが開催された事がある町ですね。
徳山から乗り換えた電車のひとつ前のボックスに学校帰りの高校生が一人で座っています。
「さやしー?」
さやしーが高校生になったらこんな感じだろうなと思える女の子でした。彼女は一駅目の新南陽で降りていきました。
山口県というとやはり思い出すのは道重さゆみちゃん。山口県は暖かい土地なんですが、不思議と色白さんが多い。電車に乗ってくる女性が大人も子供も色白。さゆを思い出します。
日は西の方角に傾き始めて、空の色を青空から綺麗な白色に変えていきます。優しい日差しに包まれながら、私は海の写真を撮っていない事を思い出しました。山陽本線は山口県に入ると何ヵ所か海が見える区間に入ります。慌てて携帯で撮った写真が今回掲載した写真。かもめはやっぱり居ないけれど、カラスさえも居ない。ただ波が穏やかに流れているだけでした。