鹿児島空港の東側、天降川の畔にある妙見温泉、ここでは川沿いを掘削すると火山性の炭酸水素塩泉が自噴するという、豊富な源泉に恵まれた温泉地です。この「雅叙苑」は古民家を移設した田舎情緒溢れる温泉旅館で、メディアの露出も多い、予約困難な有名旅館です。
敷地内に入ると標識があって、ここでは人や車より鶏の通行が優先されるとのこと、気分を盛り上げますね。
この旅館の客室は全10室。そのうち8室が露天風呂付きになっていて、スタンダードな部屋でも二間続きで20畳ぐらいの広さをもっています。客室、お風呂、食堂、ロビーなどが、それぞれ独立した建屋になっています。
ここの一般浴場「建湯」は、一枚岩をくり貫いた浴槽が特徴、岩の手触りがいいですね。お湯はやや白濁した炭酸水素塩泉で、舐めてみると長湯温泉ほどではないがかなりの金気臭が感じられる。赤茶色の湯の華が舞っていて温度も比較的高めで、ガツンと身に沁みいるお湯です。
ここの白眉は貸切浴場の「ラムネ湯」にあります。部屋名の入った木札をお風呂の入口に引っ掛けることにより「貸切風呂」となるシステム。ここには2つの浴槽と打たせ湯があり、入口に近い浴槽は比較的湯温が高い炭酸水素塩泉、建湯と同様のガツン。
奥の浴槽は低温の澄明なお湯です。「ラムネ湯」というのはこれのことかな?かなり温いがしばらく浸かっているうちにホカホカしてきます。舐めると確かにラムネのような炭酸を感じます。実に優しい浴感、これはひとたび浸かってしまうと時間が止まってしまう…
このラムネ湯は今のような特徴的な旅館となる前、普通の温泉旅館だったときの大浴場。それを貸切専用にして再利用しているのですね。こちらの風呂にはシャンプーや石鹸が置いてなくて、純粋にお湯を楽しめるようになっています。10室中、8室が露天風呂付き客室なので、この貸切湯が混み合うことはないでしょう。ゆったりできますね。
お風呂はさらにもう一つ、天降川沿いに露天風呂があるようだが、大雨などによる増水で目隠しの囲いがしばしば流されるため、現在は足湯になっているとのこと。しかし、この日はそのお湯すら抜かれていました。冬場は使用しないのかもしれません。
この旅館の料理は良質の素材を用いた素朴ながら手の込んだ数々が並びます。
メディアで見るイメージとは違い、絶景があるというわけではないし、近くの道路を走る車の音や鹿児島空港を離発着する飛行機の騒音が聞えたりして、秘湯というような気はしない。が、田舎の親戚を訪ねてきた感覚っていうか…なんだか心安らぐんですよね。
「和」の空間構成は、それが作られたものであるとしてもかなり心地よい。これぞ空間デザインの成果。スタッフのみなさんの肩に力の入っていない適度なホスピタリティも心地いいですね。お代は決して安くはないが、それ以上の値打ちを感じさせてくれました。
- 場所:妙見路線バス・妙見BS
- 泉質:ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉 49(ラムネ湯・49度)
- 訪問日:2010年1月27