バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

湯元榊原館@榊原温泉

2019-10-15 19:22:08 | 温泉(三重県)

大阪から近鉄特急で1時間少しのところ、榊原温泉口駅には榊原温泉の各旅館の送迎バスが集まってきています。ここから10分ほど送迎バスに揺られると、のどかな田園地帯に小さな温泉街が現れます。


榊原温泉は、七栗の湯とも言われ、「枕草子」第117段に「湯はななくりの湯、有馬の湯、玉造の湯」とうたわれている「三名泉」のひとつです。なにぶん山の中のこと、この温泉街には歓楽的要素は一切ありません。

ここは平安時代には既に湯治場が形成され、江戸時代には伊勢参詣客が神社の参拝前にこの七栗の湯で斎戒沐浴するのがしきたりとなり、垢離場として大いに賑わったと言われています。


そんな歴史ある小さな温泉街の中に、巨大な建物による威容を誇っているのが、この温泉の湯元である「湯元榊原館」です。


榊原温泉では最大規模の全56室、2019年で創業100周年という歴史と格式を誇るこの旅館は、大小さまざまな客室とプランを用意する、エコノミーからラグジュアリーまで、オールマイティなお宿です。


1階の大浴場では、浴室に芳しい温泉の匂いが漂っており、湧泉地には祠が建ち、大きな浴槽の真ん中からお湯がコンコンと湧いています。この大浴槽は加温され、普段は透明なお湯なのだが、この日は地震の影響で少し白濁していました。


この浴場の隅っこに小さな浴槽があって、これがこの旅館の白眉、源泉浴槽です。僅かに硫黄臭のある湯はぬるぬるしている、いわゆる美人の湯系な感じです。源泉のお湯はかなり温く、冬場は辛いが、加温の浴槽と交互に入ってたら風邪を引くこともないでしょう。


このお湯の良さを知る大勢の日帰り入浴のお客さんが、加温浴槽には目もくれず、こちらに集まってきます。じっくり浸かりたいなら宿泊したほうがいいですね。


この旅館には屋上にも宿泊者専用の露天風呂があります。たいがい屋上にある温泉は、ポンプで汲み上げる必要があるので循環泉なのだが、ここも例外ではありません。


屋外なので塩素臭は気にならないが、お湯はキシキシした感触でいただけない。この露天のためにわざわざ宿泊する必要はありません。

・場所:三重交通バス・湯元榊原館前BS
・泉質:弱アルカリ性単純泉 37℃
・訪問日:2007年4月15日


木屋旅館@三朝温泉

2019-10-06 07:35:44 | 温泉(鳥取県)

JR山陰本線・倉吉駅より、日ノ丸バスで20~25分ぐらいのところ。三朝温泉は平安時代末期の1164年に発見されたという歴史ある温泉で、2017年現在、年間入湯客数は鳥取県内では皆生温泉に次ぐ2位とされる著名な温泉地です。


三朝温泉の特徴は何と言ってもその泉質にあります。ラジウム・ラドンが含まれる世界でも有数の放射能泉だからです。そのため、温泉療法を実施する病院や研究施設も立地するほか、長期滞在者向けの旅館や自炊宿も見られる「現代湯治」の顔も見せています。


三徳川に架かる三朝橋周辺の両岸には大規模な旅館が立ち並ぶいっぽう、石畳が敷かれた温泉本通りには、小規模な旅館や飲食店、古美術店、スナック、土産物屋、射的場などが並んでおり、温泉情緒を漂わせています。この木屋旅館は温泉本通りにある、三朝では小規模は部類の老舗旅館です。


通された部屋は和室で実に狭く、あまりの期待はずれに一気にテンションが下がってしまったが、何気なく部屋を見回してみると扉がある。その奥にはなんと小洒落たツインルームがでてきました!


部屋をじっくり見てみれば、調度も高級品っぽいし、真っ白な大襖は技のある表具師でしか平面に貼れない太鼓貼り。老舗のこだわりが感じられます。



料理も季節感あふれる品の数々が並びます。

ここの温泉はすべて自家源泉で、大浴場のほか、大小の貸切風呂があります。河鹿の湯(女性)・河瀬の湯(男性)と名づけられた大浴場は一部が浅くなっていて浴槽の縁を枕に横たわることができます。温度調整のため加水はあるが、もちろん掛け流しです。


そしてここの白眉は楽泉の湯と称する足元湧出のお風呂。宿泊者のみが利用できる貸しきり湯です。浴槽の底にさらに湯壷があって、敷石が渡されている。この湯壷に源泉がじわじわ湧いていて浴槽の湯を満たしています。


このお湯、横を流れる三徳川の水位が上がると湯船の湯面も上がり水位が下がると湯面の下がる…仕組みはよくわからないがサイフォンの原理なのかな?敷石の隙間から地中から生まれたそのままのラジウムがポコポコと気泡になって現れます。これは実に貴重で、深呼吸すべきです。


浴室の石の床が源泉の熱によって暖められてオンドルのようになっているが、天井に煙突状の湯気抜きがこしらえられていて湯気がこもることはありません。


温度調整のためにホースから水を引いているが、放射能泉の場合は加水によっても成分が薄まることが無いし、下手に熱交換器を使用したらせっかくのラジウムが飛んでしまう。ここでは放射能泉の特質を見事に活かしてますね。

浴室の一角には小さい湯壷があって、これは飲泉用。柄杓ですくって枡でいただくのだが、株湯の飲泉では甘みを感じたが、こちらは熱く、しかもピリピリします。


この楽泉の湯は一晩中入ることができるので、早朝なら他の宿泊客に気遣うことなく長湯を楽しめます。これぞ宿泊者の特権です。

・泉質:単純放射能泉・75度
・場所:日ノ丸自動車・三朝温泉BS
・訪問日:2008年9月17日


ゆかむり温泉@岩井温泉

2019-10-06 07:34:43 | 温泉(鳥取県)

山陰本線・岩美駅より日交バスで10分程のところ、1300年の歴史があるとされる岩井温泉は、平安時代の「八古湯」の一つに数えられる歴史ある温泉です。


この温泉街のメインストリートは旧国道9号線。今はバイパスの開通によって、この道を通り抜ける車も少ないし、歩く人もほとんどいません。


かといって決してゴーストタウンではなく、人の息遣いは感じられるまさしく閑静な温泉地。3軒しかない旅館はそれぞれが老舗で、実に落ち着いた佇まいが魅力的です。


この町の中心に、建て替えられて真新しい共同湯があります。湯に浸かりながら柄杓で温泉を頭からかぶるこの温泉の奇習「ゆかむり」に因んで「ゆかむり温泉」と名付けられています。館内は新しい施設らしくバリアフリー化され、清掃も行き届いていて気持ちいい。

ゆかむり温泉HPより

丸いやや深い浴槽に透明のお湯が掛け流され、舐めてみると臭いはないものの少し苦いかな。今では地元の人たちも湯をかぶることも、ゆかむり唄を謡うこともは無いようです。


それでも、壁にタイル画で「ゆかむり」をしている人が描かれているのと、時折ゆかむり唄のBGMが流れ、当時の情緒を演出しています。


その昔、ここは軽便鉄道も開通する程の賑わった温泉地だったとののこと。この鉄道は昭和9年の大火や室戸台風の被害によって廃止され、以後は小さな温泉地となっていました。


戦後、自動車の時代には国道9号線の宿場街として再び賑わったが、バイパスが開通した現在、またしても静かな温泉街となりました。ゆかむり温泉のスタッフの話では、昔はこの街道にどんぐりの木の並木があったとのこと。


車の往来が少なくなった今、もう一度どんぐりを植えてみたら如何かな?どんぐりの木陰に佇むボンネットバス(不定期運転)…実に絵になる光景だと思うのだが。

・場所:日本交通・岩井温泉BS
・泉質:カルシウム・ナトリウム‐硫酸塩泉 47~50度
・訪問日:2008年6月24日


岩井屋@岩井温泉

2019-10-04 17:41:30 | 温泉(鳥取県)

山陰本線・岩美駅より日交バスで10分程のところ、1300年の歴史があるとされる岩井温泉は、平安時代の「八古湯」の一つに数えられる歴史ある温泉です。


江戸時代半ばには16軒の旅籠が並び、藩主専用のものも含めて8箇所の温泉がありました。山陰と京都を結ぶ街道の沿いにあるため、温泉としてだけでなく、街道の宿場町としても栄えたようです。


明治末期に鉄道が通じると京阪神方面からの観光客が訪れるようになったが、鉄道ルートから外れていたため、大正時代に最寄り駅から軽便鉄道を敷設して客を運んだが、戦局の悪化により休止、その後再開されることはなく廃線となりました。


岩井温泉を有名にしたのは、「湯かむり」という独特の入浴法が伝わっていることです。これは湯治の際に手ぬぐいを頭に被り、専用の柄杓で湯を叩きながら「湯かむり唄」を吟じながら頭に湯をかぶるという奇習です。

ゆかむり温泉HPより

現在、閑静な温泉街の岩井温泉には「岩井屋」「明石屋」「花屋」のたった3軒しか旅館はありません。しかしそのどれもが温泉情緒を感じさせるしっとりとした小旅館です。今回はこのうちの「岩井屋」に宿泊することにしました。


建物は古めかしいが矍鑠とした館のある木造三階建ての立派なもの。他の旅館も同様の品のある造りで、これらが街の景観を風情あるものにしています。


館内は床が全面畳敷になっていて、スリッパの必要がありません。調度や絵画、生け花が主張しすぎない程度に配置され実に上品。お香がほのかに香っています。渡り廊下の両側には日本庭園。時折り池の鯉がチャプンと跳ねる…これぞ日本旅館の様式美やなあ…

この旅館の上品なお料理の数々はこちら。


この中庭を渡ったところに、この温泉街が決して紛い物ではないことを体現する、実に豊かなお湯があります。この時間帯の男湯は「祝いの湯」。浴室に入ると左手に洗い場、右手に坪庭が設えられています。この坪庭では時おり鹿威しがカコーンっと鳴る。環境音でも楽しもうという趣向。


この内湯の浴槽はひとつだけ。艶やかな御影石の縁のある浴槽の中には澄明なお湯が掛け流されています。匂いは希薄だが舐めてみるとやや苦い。浴槽の中央部はかなり深くなっていてその底はスノコ。このスノコの隙間から時おりプクプクとあぶくが湧いてきます。貴重な足下湧出を実感できます。


新鮮なお湯のこと湯口から柄杓で飲泉もできるようになっていて、独特の硬質な味わいを楽しむこともできます。


夜になると男湯は「長寿の湯」に変わります。こちらこそこの旅館のメインの浴室。広々とした浴室に大き目の浴槽。こちらも「祝いの湯」と同様、かなり深くて、その底はスノコになっています。


大きい分、温度がやや低めで実にまったりした浴感。純日本風の造作ながらステンドガラスの照明がモダン。こういったセンスがいいですね。


こちらには露天風呂も併設されていますが雰囲気はいいものの、お湯には特に特徴はない。でもまあクールダウンには丁度いいかな。


貸し切り湯はかなり小さいものの、こちらも御影石の浴槽が奢られています。ここももちろん足元からお湯が湧いていて、このお湯がいちばん湯の花が舞っていました。


実に上質な温泉の数々、ここはやはり宿泊しないと、その真価を味わうことができませんね。

・場所:日本交通・岩井温泉BS
・泉質:カルシウム・ナトリウム‐硫酸塩泉 47度
・訪問日:2011年4月15日


孫九郎(温泉)@福地温泉

2019-10-02 07:57:20 | 温泉(岐阜県)

JR・高山駅から濃飛バスで1時間と10分ほどのところ。奥飛騨温泉郷のひとつに数えられる福地温泉は、標高が1000メートルに達する高地にある11軒の旅館・民宿からなる静かな温泉地です。


ここは平安時代には村上天皇が湯治に訪れていたという入湯伝説が残るものの、温泉街自体は昭和に入ってから形成された比較的新しい温泉街。山間の秘湯ながら、高山駅から1時間に1本毎に平湯・新穂高を結ぶ路線バスが通っているので、アクセスは良好です。


しかし福地温泉口のバス停で降車すると辺りには何もなく、山の中置き去りにされた気分で不安になります。アイスバーン状の道をツルツル滑りながらようやく福地温泉を代表する老舗旅館「孫九郎」にたどり着きました。


適度な広さを持つ客室の窓からは白銀の世界が広がっています。取るものも取りあえず、冷えた体を温めるために温泉へ向かいます。


露天湯は青緑の濁り湯で、少し硫黄臭。柔らかいお湯が広い露天に掛け流されています。この露天、東屋や水車小屋が配されるなど雰囲気造りにも気を配られています。


蹲には飲用の温泉が流れていて、マイルドで飲みやすい源泉を味わうこともできます。


露天の家族湯は、ここもやや白濁の濁り湯です。静かにじっくり浸かりたければこちらかな。


露天とは逆に、内湯はパワフルな感があります。色は透明だが、褐色の湯の花のせいでか、茶色く見える。感触はサラッとしているが、浸かっているうちにガンガン沁みこんでくるような気がします。


ここのお湯も飲むことができるが、露天と異なって少し塩気と金気を感じさせる濃厚な風味です。


内湯の家族湯は、雰囲気的にはイケてないが、実はここが最も泉質が優れているんではないかな。家庭用の人工大理石の浴槽ながら、表面に析出物がこびり付いていてザラザラ。浴槽が大きくない分、換水率がいいので、常に新鮮な状態が保たれています。


ここの温泉は湧出温度が高いので、この旅館では内湯も露天も加水せず熱交換で適温にしています。そして、熱交換された廃熱は給湯や暖房に生かされるとのこと。エコですね。


食事は温泉で温められて暖かい大広間でいただきます。ヤマメや飛騨牛が味わえます。

ほかほかの温泉に浸かりながら雪景色を楽しむ…夜は夜で、明かりが雪に反射して幻想的な情景を創りだします。


この滅多にできない経験を慈しんでいたら、意識が遠くなるほどのぼせてきました。

・場所:濃飛バス・福地温泉口BS
・泉質:単純温泉 67度36度混合(露天)、ナトリウム炭酸水素塩泉 81度(内湯)
・訪問日:2011年1月28日


湯の花ふわり湯元館@平湯温泉(奥飛騨温泉郷)

2019-09-28 14:04:25 | 温泉(岐阜県)
JR・高山駅から濃飛バスで1時間ほどのところ。平湯温泉は海抜1,250mの高地にある奥飛騨温泉郷で最大の温泉街です。


宿泊することにした「湯の花ふわり湯元館」は、大きな旅館が建ち並ぶ中心街から少し離れたところ、アカンダナ駐車場へ向かう旧国道に面したところにある旅館です。


旅館に近づくにつれ、硫黄の香りがぷんぷん漂ってくる…旅館の目の前に源泉がありました。匂いの発生源はこれですね。


今回、「山の中の温泉でのんびり~節約プラン」という、廉価版で宿泊することにしたので、部屋はトイレつきではあるが6畳間。やや狭いかな。また、この旅館の立地では、ほぼどの部屋からでも景色は大したことありません。


食事はお食事処の半個室でいただくことになるので、この部屋は寝るだけ。文句ないですね。



大浴場には旅館の規模にしては立派な内湯と露天があって、それぞれ強い硫化水素臭の漂うお湯が贅沢に掛け流されています。湧出は毎分393リットルとのこと。豊富です。


舐めてみると、匂いは強いものの味はない。澄明なお湯の中には少なからず湯の花が漂っています。


この旅館、貸切露天風呂が空いていれば無料では入れるのがいいですね。各露天の中央部の底から、ボコボコ空気を送り出していて、少しジャグジーっぽい。理由を聞けば、お湯を攪拌して温度を均等にするためとのこと。


これだとせっかくの源泉を劣化させてしまうんではないかと少し心配だが…ともあれ、森の中の露天は自然と一体となったような感覚を味わえていいですね。

・場所:濃飛バス・平湯BT
・泉質:単純硫黄温泉 68.2度
・訪問日:2012年9月12日

平湯の湯(平湯民俗館)@平湯温泉(奥飛騨温泉郷)

2019-09-27 22:20:53 | 温泉(岐阜県)

乗鞍の山懐に抱かれた平湯温泉は海抜1,250m。平湯・新平湯・福地・栃尾・新穂高などから形成される奥飛騨温泉郷のなかでいちばんの歴史を持ち大きな旅館街です。


以前は山間の鄙びた温泉地だったのだが、安房トンネルの開通で松本方面からのアクセスが大きく改善、東京方面からの観光客が一気に増加しました。


さらに、上高地や乗鞍のマイカー規制が実施されたことにより、この平湯の駐車場に車を置いて、シャトルバスに乗るという観光パターンが定着し、たったひとつのトンネルの開通で秘湯から山岳観光の大拠点へと大きく変貌しました。


平湯温泉地内には約40もの井戸・源泉があり、全部あわせて毎分13,000リットルという膨大な湯量を誇るとともに、源泉ごとに微妙に異なる泉質を楽しむことのできる、温泉好きにはたまらない温泉地ですね。


この平湯の温泉街から少し離れたところ、平湯神社のすぐ横にある、飛騨地方の旧家を保存した平湯民俗館に併設された温泉を伺ってみました。


このお湯、入浴料は「寸志」…脱衣所と露天風呂ひとつのプリミティブなお風呂で、脱衣所には棚があるだけの実にシンプル。


早速浸かってみると、過度の加水のためやや温くはなっているが、茶褐色で少し金気臭のあるお湯が掛け流されています。舐めてみても無味ではあるが、うっすら硫黄臭が漂います。


お湯の質もさることながら、森林浴と温泉浴が同時に楽しめる極上の雰囲気。自然を慈しむことができます。


このすぐ近くの旅館の源泉は硫黄臭がもっと強いものの金気臭が全くしない。ほんの数十メートルしか離れていないのにこの違い。平湯のお湯の底力を感じますね。

・場所:濃飛バス・平湯BT
・泉質:炭酸水素塩泉・ナトリウム-炭酸水素塩泉、塩化物泉(緩和性低張高温泉)75.2度
・訪問日:2012年9月13日


奥澤旅館@七釜温泉(浜坂温泉郷)

2019-09-24 07:18:07 | 温泉(兵庫県)

七釜温泉(しちかまおんせん)は兵庫県北部の新温泉町、カニで有名な浜坂から少し内陸に入った岸田川畔にある鄙びた温泉地。温泉の発見は1955年というから、比較的新しい温泉です。


この温泉街には大旅館は存在せず、個人経営の旅館が数軒ある程度。場所が場所だけに冬場はカニ目当てのお客さんで賑わうそうなのだが、訪れた時ははシーズンオフ。温泉街は閑散としていて、この旅館も貸し切り状態でした。


カニのシーズンオフとはいえ、漁場に恵まれたこの地域のこと。新鮮な魚介類は事欠きません。

奥澤旅館(料理)@七釜温泉 - バスde温泉

七釜では源泉の温度がちょうどいいので、ほとんどの旅館が加温も加水もない源泉掛け流しだそうで、もちろんこの旅館も同様。


小規模のお宿なので浴室もさほど大きくなく、浴槽もやや小さめだが、浴槽の水面下に湯口があって、そこから静かに新鮮なお湯が注入されています。


カーキー色のお湯は匂いも味も希薄。浴槽温度はやや高めで、浸かるとガツンと身に沁みます。あまりにも有名なカニに目が行きがちだが、実はこんな良泉が潜んでいるのですよ。

・場所:全但バス・栃谷七釜温泉BS、七釜温泉口BS
・泉質:ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩高温泉 50.4度
・訪問日:2012年5月13日


ゑびすや@木津温泉

2019-09-20 09:21:59 | 温泉(京都府)

京都丹後鉄道・夕日ヶ浦木津温泉駅からすぐのところ、木津温泉(きつおんせん)は京都府内でももっとも古い温泉です。今から1250年ほど昔、天平の飢饉で疫病が発生したとき、日本各地に開湯伝説を残している行基が人々にこの地に湧くお湯に浸かるよう説き、そのおかげで疫病の難から救われたといい伝えられています。


ここからそう遠くない場所、海岸近くにある夕日ヶ浦温泉は、その眺望とカニで人気のため、大規模な旅館が数件立っているのに比べ、この木津温泉には旅館が4軒しかありません。ここはそのひとつの老舗です。松本清張が長期に投宿し、「Dの複合」を執筆したことでも知られています。


新館にある大浴場には澄明なお湯が掛け流されています。匂いも味も感じられない淡白な浴感だが、アルカリ泉らしいしっとりとした肌触りが感じられます。


源泉温度が高くないので、冬場の加温は致し方ないが、それ以外の時期は自然の状態の新鮮なお湯を楽しめます。この大浴場には露天もあって、手入れの行き届いた庭園を眺めながらの入浴は格別です。


しかし、この旅館の値打ちは旧館にある貸し切り湯にあります。「ごんすけの湯」は小さな浴室だが、清らかなタイル貼りの浴槽に、天井にはステンドグラスが配されている。前期昭和のモダンが溢れています。


湯口からはほぼ適温の清澄で滑らかなお湯が掛け流されているが、熱くなりすぎたときにはもうひとつの湯口から冷泉を足し入れることができます。冷泉はライオンの口から流れ出てきます。


「しずかの湯」はさらに小さくなっていて、タイル張りやステンドグラスは同様だが、浴槽に浅い部分があって、寝っ転がりながら浸かることができる。これは気持ちいですね。有名な温泉評論家が「日本一の貸し切り湯」だと評価したのは納得でした。


この旅館、浴室だけでなくロビーやピアノのある休憩室にも昭和初期のロマンティシズムが漂っています。鉄筋コンクリート造りの新館に比べ、旧館は床がギシギシ軋むなど古さは否めないが、逆に雰囲気が抜群。

加えて料理もいいですね。


なるほど、松本清張が落ち着きすぎて2ヶ月も滞在してしまった理由が見えてきました。

・場所:京都丹後鉄道・木津温泉駅
・泉質:単純泉 40.2℃
・訪問日:2010年5月30日


七つの外湯めぐり@城崎温泉

2019-09-18 10:17:58 | 温泉(兵庫県)

コウノトリが傷を癒していた事により発見されたとの伝説がある城崎温泉は、1300年の歴史をもつ「海内第一泉(かいだいだいいちせん)」の誉れ高き温泉で、現在も有馬温泉、湯村温泉とともに兵庫県を代表する温泉です。


JR山陰線・城崎温泉駅の辺りから大谿川沿いに7つの外湯をはじめ、木造の古い旅館や商店が建ち並ぶ温泉街を形成し、川べりにそよぐ柳が独特の風情を造り上げています。


城崎温泉はすでに江戸時代から賑わいを見せており、近郊の藩主や藩士が多数訪れており、また、幕末に桂小五郎が新選組に追われて城崎温泉に逃げてきたこともあったとのこと。

さらに明治以後、文人墨客に愛され、『城の崎にて』を書いた志賀直哉、作家・有島武郎をはじめとする多数の文豪が来訪。最近では元兵庫県議会議員の野々村竜太郎氏がたびたび視察?に訪れたことでも有名になりました。


城崎温泉では戦前まではほとんどの旅館に内湯が無く、戦後、内湯を認められるようになっても、その規模を制限されているため、宿泊者は7つある外湯に出向くことになります。


旅館宿泊者は全外湯の入浴料が免除され、全外湯を巡る「外湯めぐり」が名物となりました。その際、浴衣を着て下駄を履くのが正装とされ、ほとんどの旅館では旅館内用の浴衣とは別に、温泉街を出歩くための浴衣も用意しています。浴衣姿の宿泊客が下駄を鳴らしながらそぞろ歩く様は温泉情緒のひとつとなっています。


昭和の高度成長期、制限されてるとは言え各旅館に内湯が造られるようになると、お湯の安定供給が課題となり、1972年、すべての源泉のお湯を集中配湯管理施設に集められ、町内に張り巡らされている配管を通じて各外湯・旅館に送られるようになりました。


湧出温度が37~83 ℃の各源泉のお湯を、平均温度を57 ℃に安定させてから各外湯や旅館に配湯されています。それらに満たされてる澄明で塩辛いお湯は、循環ろ過の程度や加水の有無、清掃のタイミングにより多少の違いはあるが、基本的にどこも同じ泉質です。


外湯は大谿川の上流から下流に向かって鴻の湯、まんだら湯、御所の湯、柳湯、一の湯、地蔵湯があり、駅隣接のさとの湯を合わせて全部で七湯。


最も奥にある「鴻の湯」は城崎で最も歴史ある湯で、源泉に最も近い位置にります。また、ここには美しい庭園露天風呂があります。駐車場があるので日帰り入浴も多いようです。しかし、この駐車場が邪魔をして、徒歩の入浴客は公衆トイレの直前を横切って入ることになります。も少し配置に工夫が必要ですね。


まんだら湯」は「鴻の湯」に次いで歴史ある湯です。717年(養老元年)から720年(養老4年)、道智上人が千日の修行を行った末に湧出したことが城崎温泉のはじまりとされ、ここはその所縁の場所にあります。小さい浴槽だが、珠から湯が溢れてくるデザインは仏教的な因縁を感じさせます。


「御所の湯」は後白河天皇の御姉安嘉門院、御入湯の湯として由緒のある外湯。七湯の中でリニューアルが最も直近で、寺院のような建物は相当お金がかかっていると感じさせる豪華なつくりです。天井がガラスの内湯と露天とはつながっていて、大扉を開ければ全浴槽がオープンエアに。露天の奥には人工の滝を配し、温泉を楽しませようとの演出は抜群。しかしお湯はかなり薄まっていると感じてしまいます。


「柳湯」は 柳の木の下からお湯が湧き出たからこの名とされたとか。外湯のなかで最も小さいが、新しく小ぎれい。湯は熱めで、浴槽は小さいが深い。温泉感もあるし、静かで落ち着きます。


外湯の筆頭とされる「一の湯」は、江戸時代「新湯(あらゆ)」と呼ばれていたが、江戸時代中期の漢方医、香川修徳が「海内一(日本一のこと)」の泉質と絶賛したことから「一の湯」に改名したとのこと。規模は大きい部類で、山肌に掘った洞窟風呂が自慢です。しかし集中配湯の泉質にこれといった特徴もなく、温泉感は希薄です。


この温泉の泉源からお地蔵さんが出てきたからこの名となった「地蔵湯」は、そのことから建物横に地蔵尊が奉られています。江戸時代には、城崎の村民の多くに親しまれていた里人の湯で、古き良き、城崎の温泉文化の名残を留めるレトロモダンな施設です。


「さとの湯」は日本最大の駅舎温泉です。正式名称を「豊岡市立城崎温泉交流センター」といい、指定管理者によって運営される公設民営の温泉施設です。城崎では比較的新しく、最も巨大な外湯です。ここでは多種のサウナが整っているのがユニークですが、温泉でサウナが自慢ってなんで…?ただ、「ペンギンサウナ」と称する極低温サウナは秀逸。5度に設定していて、外湯めぐりで湯あたり気味の体には実に快適でした。


各外湯にはそれぞれ由緒はあるものの、今やどこも同じ温泉水が満たされているだけなので、それぞれのお湯の違いを楽しむことなどできません。ここは温泉そのものより温泉情緒を楽しむところだといえます。

・場所:JR山陰線・城崎温泉駅
・泉質:ナトリウム・カルシウム‐塩化物泉 75度
・訪問日:2007年5月8日