エンジンの代わりにモーターを積み、トロリーポールを立てて架線から電気を曳いて走るとローリーバス。その昔、大阪の梅田や天王寺付近を、市電を補完する形で走っていたこのトロリーバスも、日本では今やこの黒部でしか見ることができません。長野県大町市の扇沢と黒部ダムを関電トンネル (5.4km) を介して結ぶ、関電トンネルトロリーバスと、富山県立山町にある標高2450mの室堂平の中央に位置する室堂駅から、立山ロープウェイとの連絡駅の大観峰駅までを結ぶ立山黒部貫光のトロリーバス、この2路線こそ国内ではここだけになってしまったトロリーバスです。
関電トンネルトロリーバスは1964年開業、路線距離(営業キロ)が6.1kmの、そのほとんどが関電トンネル(大町トンネル)内の路線です。
このトンネルは、関西電力黒部川第四発電所関連施設の建設のために建設され、1958年に貫通したもので、現在でもトロリーバスの運行のみならず、黒部峡谷ルートとともに、維持用資材輸送にも使用されているとのこと。このトンネルこそ映画「黒部の太陽」の主な舞台として知られていますね。
車両は現在この300形のみで、1993年から使用開始の3代目。15台在籍で大阪車輌工業の製造です。この会社は以前は電車も作っていたようだが、今はケーブルカーやロープウェイなど、特殊な車両を造るのを得意としているメーカーで、日本で唯一のトロリーバスのメーカーです。
いっぽうの立山黒部貫光無軌条電車線は、開業が1971年、路線距離(営業キロ)3.7kmの、こちらも立山トンネルの中を走り抜ける路線で、当初は普通のディーゼルエンジンのバスで運行していたが、環境保護の観点から1996年にトロリーに転換したとのこと。確かに断面の小さいトンネルをディーゼル車が走っていては、かなり排気ガス臭かったことでしょう。
車両は8000形で、関電トンネルの300形とほぼ同型、こちらももちろん大阪車輌工業製ですね。
バスは走行区間の殆どをトンネルの中を進みます。想像の通り、トンネル内にもかかわらずエンジン音が唸ることも無く振動もない。モーターで動いているので当然ですね。環境問題がクローズアップされている現在こそ、こういったトロリーバスが都市部でも復権したほうがいいのかもしれませんね。
ただしこのトロリーバスは法律上は鉄道に分類され、軌道法または鉄道事業法が適用される。そのため、運転士は大型二種免許に加え、動力車操縦者運転免許も必要とのこと。簡単ではなさそうです。
なお、扇沢駅の一角に関電トンネルトロリーバスの資料が展示してあります。これはマニア垂涎ですよ!