本に対して抱く独特の気持ち。/自宅の書架には自分の虚栄心が透けて見える。積ん読したまま、何年も書斎の一角を占拠し、しまいには新刊書の後ろに回され、モノによっては茶色い斑点状のカビも出ている。「昔は私も新刊書だったのに、いつの間にか古本扱いして」、こんな本のぼやきが聞こえてきそうだ。それら「元新刊書、現在古本」は結局、所有者に売るか捨てられるかされてしまう。所有者の虚栄心が数十円に換算され、小銭入れに収まる。買取さえ拒絶されたものは紐で縛られ、紙ゴミとなる。/一方、書架には自分の過去と現在の好奇心と向上心も見える。過去に夢中で読んだ本は、古ぼけてもなかなか手放せない。例えば20代に読んだ本の数々。それらを改めて手に取り、黄ばんだページを捲る。蛍光ペンやボールペンや鉛筆で線が引かれ、所々に拙いコメントや絵も描かれている。捨てられないのは、過去の自分が愛おしいのか、それとも単に未練たらしいのか。いずれにしろ、そこには過去に置いてきた、まるで別人のような自分の思考の痕跡が眠っている。そして、これから私が読むのを待っている本はなんだかキラキラしている。まるで飼い主にいまかいまかと撫でられるのを待っているペットの犬のように、こちらに熱い視線を送ってくる。/今後、一、二年後、あるいはもっと後に、前はキラキラして見えていた本に輝きを感じくなるときが来るとすれば、そんな未来の自分はやはり浅慮で、ちょっと卑しい。/BGB:『思考の取引 書物と書店と』(ジャン=リュック・ナンシー著、2014年、岩波書店)
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