獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

ロシア・ウクライナ戦争、佐藤優氏の分析(その3)

2025-03-13 01:55:31 | 佐藤優

ウクライナ戦争について、以前こんな記事をd-マガジンで読んだことを思い出しました。
引用します。


週刊現代 2023年6月17日号

佐藤優・全情勢分析
ロシア・ウクライナ戦争 正しい理解の仕方
__日本人は何もわかっていない
世界が笑っている日本の「ゼレンスキー礼賛」


(つづきです)

いつ、どのタイミングで
戦争は終結するのか

戦争をスタートしたのがプーチンであることは自明の理です。ただしそのプーチンが、自ら戦争を終わらせることはできません。
ウクライナはすでに、自軍の兵器も弾も損耗し継戦能力がない状態です。継戦能力がないのになぜ戦えているかというと、NATO(その実態はアメリカですが)が兵器と燃料を提供しているからにほかなりません。停戦のカギを握るのはアメリカです。バイデンが戦闘をやめると決断すれば戦争は終結します。
バイデンが戦争をやめられない理由として、彼の宗教観が見過ごせません。アメリカ史上、 カトリック信者である大統領はJ・F・ケネディとバイデンの2人だけです。
キューバ危機が米ソ核戦争の目前まで悪化した当時('62年10月)、アメリカ大統領はカトリックのケネディでした。その60年後、カトリックのバイデン大統領のもとで核戦争の危機が再燃している事実は偶然ではないと私は見ています。
カトリックの世界観は「世界は単一の原理で支配されたほうがいい」という考え方です。2人のカトリック大統領のもと終末時計の針が早回しになってしまった事実は、カトリシズムの宗教観と大いに関係していると私は見ています。
2024年の大統領選挙で、トランプかデサンティスが当選すれば、停戦交渉が一気に前に進むかもしれません。
停戦を前に進めるもう一つの可能性はヨーロッパです。対露経済制裁によって、ドイツはロシアから天然ガスを輸入できなくなりました。代わりに以前の4倍もの値段で、アメリカからガスを買わされています。
2022年9月には、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスの海底パイプライン「ノルドストリーム」が破壊されています。破壊工作に関与したのがウクライナの親米派勢力とアメリカなのか。はたまたロシアなのか。いずれにせよ、ドイツは今後パイプラインを通じてロシアからガスを送ってもらうことができなくなってしまいました。
ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国がエネルギー高で参ってしまい、あちこちで政権交代が起きて内政が大混乱に陥る。こういうドミノ倒しのような事態が起きれば、2024年秋ごろまでに戦闘が全部治まっているかもしれません。
対露経済制裁が続く限り、アメリカは法外な値段の天然ガスをヨーロッパ諸国に買わせ続けることができる。そしてウクライナに兵器をどんどん供与すれば、アメリカの軍産複合体は潤う。
アメリカの参戦はありえませんから、アメリカ人の血は一人も流れない。戦費の未払い伝票は、ヨーロッパ諸国と日本に回ってくるのでしょう。アメリカはビジネスとしての戦争を、エゲツないまでに継続しているのです。


台湾有事で
日本はいかなる
役割を果たすか

ウクライナ侵攻以降、メディア報道で台湾有事の可能性が頻繁に取り沙汰されています。しかし、「中国の指導部が軍事によって台湾統一を強行する」という根拠はどこにあるのでしょうか。論理的根拠が欠けた状態で、明日にでも台湾有事が起きるかの如き煽動は慎むべきです。
中国が武力よりも経済成長を優先させ、中国との統一機運を台湾内部で醸成するシナリオも検討するべきでしょう。あたかも柿の実が熟して落ちるのを待つかのように、20年がかりで台湾を併合するシナリオです。
もちろんそのシナリオとは別に、近未来に有事が起きる可能性もシミュレーションしておかなければなりません。ロシア政府系のテレビ討論番組「グレート・ゲーム」(2023年5月22日放映)で、コンスタンチン・シスコフという軍事評論家は次のようにシミュレーションしていました。「日本が中国と戦うのです。ウクライナの役割を日本にやらせる。あるいは台湾がウクライナの役割で、日本はポーランドの役割かもしれない。台湾人と中国人とを戦わせて、日本はそれを側面支援する。場合によっては日本も義勇兵を送る。しかしアメリカは人を送らない」(訳:佐藤優)
来年11月の大統領選挙でトランプが再選されれば、「アメリカ・ファースト」のトランプは「東アジアから米軍を引き揚げる」と言い出す可能性があります。そうなれば台湾有事以前の問題として、日本が中国とロシアの草刈り場になりかねません。こうした最悪のシナリオを含め、複眼的視点で台湾有事について検討するべきです。

(つづく)

 


解説
戦争をスタートしたのがプーチンであることは自明の理です。

この記事が出たのは、2023年6月です。
このころ、佐藤氏はこう述べています。
戦争開始の責任はプーチンにあったと認めているのです。

しかし、最近では、トランプによる風向きの変化を感じたのか、佐藤氏と鈴木宗男氏の周辺では、戦争のはじめにはウクライナにも責任があるというふうなコメントが多く見られます。
もともと佐藤氏と鈴木宗男氏はロシアびいきでしたから、国益のためにロシアとプーチンのご機嫌を取った方がいいという考えに変わったのでしょうか。

 

バイデンが戦争をやめられない理由として、彼の宗教観が見過ごせません。アメリカ史上、 カトリック信者である大統領はJ・F・ケネディとバイデンの2人だけです。(中略)カトリックの世界観は「世界は単一の原理で支配されたほうがいい」という考え方です。2人のカトリック大統領のもと終末時計の針が早回しになってしまった事実は、カトリシズムの宗教観と大いに関係していると私は見ています。

この見立ては、はたして妥当なのでしょうか。
何でも宗教に、それもキリスト教内の宗派の内在的論理で説明するのは、いささか安直すぎると、私は思います。

 


獅子風蓮


ロシア・ウクライナ戦争、佐藤優氏の分析(その2)

2025-03-13 01:25:12 | 佐藤優

ウクライナ戦争について、以前こんな記事をd-マガジンで読んだことを思い出しました。
引用します。


週刊現代 2023年6月17日号

佐藤優・全情勢分析
ロシア・ウクライナ戦争 正しい理解の仕方
__日本人は何もわかっていない
世界が笑っている日本の「ゼレンスキー礼賛」

(つづきです)

アメリカは何を
狙っているのか

“価値観戦争”が長期化する中、アメリカが恐れているのはロシアと直接対峙することです。アメリカがロシアと直接対峙すれば、第三次世界大戦が勃発して核戦争を誘発する可能性があります。これは一部の専門家が言うように、戦術核(短距離核ミサイルなど限定的な破壊能力の核兵器)レベルでは留まりません。最終的には、巨大都市を丸ごと焼き尽くす戦略核の使用に行き着くでしょう。ロシアが実験に成功した「サルマト」というICBM(大陸間弾道ミサイル)は、世界最長の射程距離をもちます。これまでミサイルでの攻撃は北極経由でした。しかし、このサルマトは南極経由も可能。アメリカは、南半球側からミサイルが飛んでくる事態を想定していませんでした。ですからアメリカは、南極経由の防空システムを構築できていないのです。南極経由で発射されれば、ニューヨークもワシントンも壊滅します。
こういう危険な状況で、アメリカはロシアと絶対に事を構えたくありません。だからアメリカは自ら直接参戦せず、「管理された戦争」を長引かせているのです。すなわち、ウクライナに兵器を渡しはするものの、ロシア軍が壊滅するレベルまでの兵器は与えない。ロシア本土を攻撃させない。なぜこういう形で戦争を管理しているのでしょう。ロシアの核ドクトリ ンでは、ロシア本国が核攻撃を受けた場合、もしくは通常兵器によって国家存亡の機に立たされた場合、核兵器を使うことができるからです。
アメリカによって管理された戦争を戦う限り、ウクライナは勝利できません。もっと言うと、アメリカはウクライナの勝利を望んでいないのです。ゼレンスキー大統領が叫ぶとおり、奪われた国土を奪還するために必要な質量の兵器を西側諸国が送れば、ロシア軍をほぼ壊滅させることができるかもしれません。ただ全滅する前に、ロシアはアメリカに向けて戦略核を発射するはずです。そうした事態はなんとしてでも避けなければならない。だからアメリカは戦争をできるだけ長引かせ、ウクライナに代理戦争をやらせ、できる限りロシアを弱体化させようと試みています。
当初はウクライナとロシアの二国間係争だった様相が途中から変化して、西側諸国(日本を含む)を巻きこんだ形での両国の“価値観戦争”に位相が変化した。なおかつ、西側諸国にはウクライナを勝たせる気はない。これが新帝国主義の時代における「管理された戦争」の実相なのです。


岸田政権の行動は
本当はどう見られているのか

3月21日、岸田文雄首相がキーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しました。このとき岸田首相が渡した手土産の一つは、「必勝」と大書された宮島産のしゃもじです。
「『ウクライナの勝利を日本が望んでいる』と受け取られる」という懸念が指摘されましたが、このような心配は取り越し苦労でしょう。木のヘラに「必勝」と書けば敵を召し取れる (メシを取れる)という発想について、ロシアはまともな考察の対象にはしません。「東洋の神秘だな」と受け止められておしまいです。
岸田首相のもう一つの手土産は、NATO信託基金を通じて3000万ドル(約40億円)の装備品支援金を提供するという約束でした。ただし用途は殺傷能力をもたない装備品に限ります。
これについて「日本は多大な貢献をしている」と言わんばかりの論調が新聞に書き立てられていますが、果たして3000万ドルとは、日本にとってどのくらいの金額なのでしょう。
高速道路を1㎞造るのにいくらかかるかご存知でしょうか。53億円です。40億円の支援とは、高速道路に換算すると800m弱でしかありません。日本がアメリカから購入を約束している次期主力戦闘機F-35は1機150億円です。F-35戦闘機1機の尾翼しか買えないくらいの支援が、岸田首相が鳴り物入りでゼレンスキーに届けたお土産の中身でした。
5月19~21日に開催されたG7広島サミットの評価を申し上げます。サミット最終日前日の5月20日、ゼンスキー大統領が広島を訪問してサミットに合流しました。
広島を訪れたゼレンスキーに岸田首相がプレゼントした支援は、自衛隊の車両100台です。これは装甲がついていないトラックなどの車両であるうえに、新品ではありません。廃車が決まった古い車両を整備してプレゼントしています。
自衛隊法(第116条の3)では、海外の政府に装備品を譲渡するときは「行政財産の用途を廃 止したもの又は物品の不用の決定をしたもの」すなわち廃棄品しか提供できないのです。
廃棄品の車両に加え、岸田首相は3万食の保存食を提供しました。自衛隊の非常食とは、水を入れると食べられる白米や筑前煮です。果たして白米や筑前煮をウクライナ人が食べるでしょうか。彼らが筑前煮を見たら、木の根っこだと思って顔を背けるはずです。しかも、この非常食は来年3月で賞味期限が切れます。さらにカイロまで送っていますが、むしろ無礼ではないでしょうか。このような支援の中身を見ても、ロシアは怒りもしないでしょう。日本のウクライナ支援は西側諸国のせいぜい100分の1、全然やる気がないのです。


(つづく)


解説
“価値観戦争”が長期化する中、アメリカが恐れているのはロシアと直接対峙することです。アメリカがロシアと直接対峙すれば、第三次世界大戦が勃発して核戦争を誘発する可能性があります。
(中略)
当初はウクライナとロシアの二国間係争だった様相が途中から変化して、西側諸国(日本を含む)を巻きこんだ形での両国の“価値観戦争”に位相が変化した。なおかつ、西側諸国にはウクライナを勝たせる気はない。これが新帝国主義の時代における「管理された戦争」の実相なのです。

今回の佐藤氏の分析はするどいと思います。
バイデン時代のアメリカの政策は、まさにそういうことだったのでしょう。
そういう膠着した状態を打破して戦争を終結させるという希望をトランプに見た人もいたでしょうが、いざトランプが大統領になってしたことと言えば、ウクライナと西欧抜きでロシアと停戦交渉を進め、ゼレンスキー大統領を侮辱し続けることです。
プーチンを助けることで、当面の第三次世界大戦は回避され、ロシアの核兵器がアメリカの都市を壊滅させる危険は回避されるでしょう。
確かに、アメリカの国益にはあっているのかもしれません。
しかし、これまで「自由と民主主義のための戦い」のため困難を乗り越えてきたウクライナと西欧諸国に対する、重大な裏切り行為ではないでしょうか。
自国の安全保障が確保されれば、ウクライナや西欧諸国の領土がロシアの侵略を受けても関知しないということでしょうか。
中国や北朝鮮が我が国に侵略を行うことがあっても、トランプのアメリカは、あっさり日本を切り捨てるかもしれませんね。


獅子風蓮