ウクライナ戦争について、以前こんな記事をd-マガジンで読んだことを思い出しました。
引用します。
週刊現代 2023年6月17日号
佐藤優・全情勢分析
ロシア・ウクライナ戦争 正しい理解の仕方
__日本人は何もわかっていない
世界が笑っている日本の「ゼレンスキー礼賛」
(つづきです)
いつ、どのタイミングで
戦争は終結するのか
戦争をスタートしたのがプーチンであることは自明の理です。ただしそのプーチンが、自ら戦争を終わらせることはできません。
ウクライナはすでに、自軍の兵器も弾も損耗し継戦能力がない状態です。継戦能力がないのになぜ戦えているかというと、NATO(その実態はアメリカですが)が兵器と燃料を提供しているからにほかなりません。停戦のカギを握るのはアメリカです。バイデンが戦闘をやめると決断すれば戦争は終結します。
バイデンが戦争をやめられない理由として、彼の宗教観が見過ごせません。アメリカ史上、 カトリック信者である大統領はJ・F・ケネディとバイデンの2人だけです。
キューバ危機が米ソ核戦争の目前まで悪化した当時('62年10月)、アメリカ大統領はカトリックのケネディでした。その60年後、カトリックのバイデン大統領のもとで核戦争の危機が再燃している事実は偶然ではないと私は見ています。
カトリックの世界観は「世界は単一の原理で支配されたほうがいい」という考え方です。2人のカトリック大統領のもと終末時計の針が早回しになってしまった事実は、カトリシズムの宗教観と大いに関係していると私は見ています。
2024年の大統領選挙で、トランプかデサンティスが当選すれば、停戦交渉が一気に前に進むかもしれません。
停戦を前に進めるもう一つの可能性はヨーロッパです。対露経済制裁によって、ドイツはロシアから天然ガスを輸入できなくなりました。代わりに以前の4倍もの値段で、アメリカからガスを買わされています。
2022年9月には、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスの海底パイプライン「ノルドストリーム」が破壊されています。破壊工作に関与したのがウクライナの親米派勢力とアメリカなのか。はたまたロシアなのか。いずれにせよ、ドイツは今後パイプラインを通じてロシアからガスを送ってもらうことができなくなってしまいました。
ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国がエネルギー高で参ってしまい、あちこちで政権交代が起きて内政が大混乱に陥る。こういうドミノ倒しのような事態が起きれば、2024年秋ごろまでに戦闘が全部治まっているかもしれません。
対露経済制裁が続く限り、アメリカは法外な値段の天然ガスをヨーロッパ諸国に買わせ続けることができる。そしてウクライナに兵器をどんどん供与すれば、アメリカの軍産複合体は潤う。
アメリカの参戦はありえませんから、アメリカ人の血は一人も流れない。戦費の未払い伝票は、ヨーロッパ諸国と日本に回ってくるのでしょう。アメリカはビジネスとしての戦争を、エゲツないまでに継続しているのです。
台湾有事で
日本はいかなる
役割を果たすか
ウクライナ侵攻以降、メディア報道で台湾有事の可能性が頻繁に取り沙汰されています。しかし、「中国の指導部が軍事によって台湾統一を強行する」という根拠はどこにあるのでしょうか。論理的根拠が欠けた状態で、明日にでも台湾有事が起きるかの如き煽動は慎むべきです。
中国が武力よりも経済成長を優先させ、中国との統一機運を台湾内部で醸成するシナリオも検討するべきでしょう。あたかも柿の実が熟して落ちるのを待つかのように、20年がかりで台湾を併合するシナリオです。
もちろんそのシナリオとは別に、近未来に有事が起きる可能性もシミュレーションしておかなければなりません。ロシア政府系のテレビ討論番組「グレート・ゲーム」(2023年5月22日放映)で、コンスタンチン・シスコフという軍事評論家は次のようにシミュレーションしていました。「日本が中国と戦うのです。ウクライナの役割を日本にやらせる。あるいは台湾がウクライナの役割で、日本はポーランドの役割かもしれない。台湾人と中国人とを戦わせて、日本はそれを側面支援する。場合によっては日本も義勇兵を送る。しかしアメリカは人を送らない」(訳:佐藤優)
来年11月の大統領選挙でトランプが再選されれば、「アメリカ・ファースト」のトランプは「東アジアから米軍を引き揚げる」と言い出す可能性があります。そうなれば台湾有事以前の問題として、日本が中国とロシアの草刈り場になりかねません。こうした最悪のシナリオを含め、複眼的視点で台湾有事について検討するべきです。
(つづく)
【解説】
戦争をスタートしたのがプーチンであることは自明の理です。
この記事が出たのは、2023年6月です。
このころ、佐藤氏はこう述べています。
戦争開始の責任はプーチンにあったと認めているのです。
しかし、最近では、トランプによる風向きの変化を感じたのか、佐藤氏と鈴木宗男氏の周辺では、戦争のはじめにはウクライナにも責任があるというふうなコメントが多く見られます。
もともと佐藤氏と鈴木宗男氏はロシアびいきでしたから、国益のためにロシアとプーチンのご機嫌を取った方がいいという考えに変わったのでしょうか。
バイデンが戦争をやめられない理由として、彼の宗教観が見過ごせません。アメリカ史上、 カトリック信者である大統領はJ・F・ケネディとバイデンの2人だけです。(中略)カトリックの世界観は「世界は単一の原理で支配されたほうがいい」という考え方です。2人のカトリック大統領のもと終末時計の針が早回しになってしまった事実は、カトリシズムの宗教観と大いに関係していると私は見ています。
この見立ては、はたして妥当なのでしょうか。
何でも宗教に、それもキリスト教内の宗派の内在的論理で説明するのは、いささか安直すぎると、私は思います。
獅子風蓮