まほろば俳句日記

毎日見たこと聞いたこと感じたことを俳句にします。JーPOP論にチャレンジ。その他評論・エッセー、学習ノート。競馬も。

【俳句の此岸】安保・ヘーゲル・山頭火・・56年の空白/結社の大型新人(3)

2017-02-10 04:41:51 | エッセー・評論
昨年の結社新人賞を共に受賞したNさんは77歳。60年安保世代で、かのブント(全学連主流派)の闘士であった(本人弁)。60年安保とは、戦後15年にして高度成長のとば口にあった日本の政治・思想・文学・・全ジャンルで戦後世界のすべてに対するアンチテーゼを提起した巨大ムーブメントであった。Nさんはその渦中に身を置いていた。それから56年の月日が過ぎ去り、消すことの出来ない想いを胸に次のような句作を行った。

空蝉の渾身の爪大樹噛む     中山宏史 新人賞受賞作『山頭火』(20句)2016
時雨忌やどうやら俺はエグザイル
ヘーゲルの苦笑を背に初詣
晩節の角張ってまた年流る
炬燵捨てとぼとぼ行くよ山頭火
春昼や壊れしままの蝶番
遠き日のバナナボートよイデデーオ


どれもかつての若かりし頃への追想が言い知れぬアンニュイ感を伴って詠み込まれてもいよう。ちなみに、句作は定年退職後しばらくたってから、身軽になってから始めたとのこと。句歴は8年ほどであるそうだ。2句目の【エグザイル】とはJ-POPグループの名の元になった名称で、故郷喪失者を意味している。パレスチナ系米国人思想家サイドが1990年代に唱えた。戦後の大きなうねりを何度も体験して、沈潜し続けた往時への想いがこれらの句群にも色濃く現れている。3句目の【ヘーゲルの苦笑】には安保闘争のバックボーンとなったマルクスのヘーゲル批判があるように思われる。・・・《続く》

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