1970年代とは、60年代末の【70年安保】世代のあまりにも強烈な余韻の中に始まり、その半ばには終ったというより何の痕跡も残さず消えていった空白の時代であった。次なる1980年代との区切りも曖昧模糊としたものに過ぎなかった。明けて1980年、街にはテクノポップなるBGMが流れていた。50~60年代のアメリカンPOPの変調のような空疎な音楽が人気を博し、70年代前半に湧き起こったフォーク・ソングやニュー・ミュージックとも違う、音が流れた後に何も残らないことを本旨とするような無価値・無目的ソングが主流を占めた。文学も、70年安保世代の【敗北後】の虚脱感を主調にした、行動や思考が何物も生み出さないことを反芻するような空虚感を売り物にしていた。そして、その渦中で【70年安保】世代や遅れて来た我々の世代とは全く異なる、というより何の関連性も無い新たな世代が生まれ始めていた。彼らは【第一次おたく世代】であり、【元祖新人類】と呼ばれた。概ね、彼らは1980年時点で成人を迎え、前世代の痕跡を何ら受け継いでいない者たちであった。・・・《続く》
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