高山市中心部を流れる宮川沿いの伝建保存地区には、江戸時代の面影を残す家並みが広がります。そんな伝統的な古い町並みに、ひときわ異彩を放つ天狗の面が描かれた洋館造の建物があります。
宮川に架かる筏橋の西側、広小路通りと本町通の交差点に建つ天狗総本店は昭和2年創業、現在の建物は昭和11年(1936)に建てられたもので、1階や2階窓は改修されていますが、2階壁面や上部の装飾などは当時のまま残っています。
外観は2階建の城館風でバロック建築の雰囲気が漂いますが、屋上の天狗の顔のトレードマークと「精肉」の文字が日本的で、そのミスマッチ的レトロな外観が、古い高山の町並みに溶け込んでいます。
『そもそもなぜ肉屋に天狗のトレードマークなのか?』
食べ物の洋風化が始まった明治初期に、京都で「肉料理大天狗」という書物が出版され、それが金沢や富山の大きな精肉店に広まり、その屋号にあやかったものと言われています。(参考:総覧日本の建築5)
◆天狗総本店/岐阜県高山市本町1-21
竣工:昭和11年(1936)
施工:大工棟梁西田清
構造:木道2階建
撮影:2012/08/18
※国登録有形文化財
■2階の角にベランダを設け、付け柱の上部に楕円形の装飾と渦巻き型柱頭飾りを施す
■屋根部分には馬蹄形アーチ紋様、小尖塔が並ぶ
■屋号の天狗をモチーフにした妻飾りはひときわ目を引きます
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