思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

ジョー・ネスボ『その雪と血を』おもしろノワール!

2019-04-19 09:44:54 | 日記
ジョー・ネスボ (著)/ 鈴木 恵 (翻訳)
『その雪と血を』

おもしろかった!
かっこよかった!

1970年代、クリスマス前のノルウェーが舞台。

内容紹介をそのままコピペすると、こんな感じ。

オーラヴ・ヨハンセンは殺し屋だ。
今回の仕事は、不貞を働いているらしいボスの妻を始末すること。
いつものように引き金をひくつもりだった。
だが彼女の姿を見た瞬間、信じられないことが起こる。
オーラヴは恋に落ちてしまったのだ……。


うむ、まるでそそられないですね。
私は背表紙を読んで、読むのやめようかなあと思いました。
でも読んだ。
読んでよかった!!!

オーラヴの独白で物語が描かれるのですが、
難読症を筆頭に「できないこと」がたくさんある彼の
物の見方や考え方がとても魅力的。
読んでいるうちにオーラヴという主人公に夢中になってしまいます。
「車をゆっくり運転するのがへたで、あまりに意志が弱く、
あまりに惚れっぽく、かっとすると我を忘れ、計算が苦手」(自称)
でもぜんぜんOKだ!がんばれオーラヴ!

主人公は、愚直ですがある種の美学も持っていて、
でもハードボイルドって感じのタフガイではないんですよね。

解説では「パルプ・ノワール」と言うあまり聞かないジャンル(失礼)とのこと。
ノワールを冠するほど暗く救いのない話ではないと思うけれど、
静謐で薄明かりの世界観ではありますね。

ページ数も少なめでさくっと読めるので、おすすめです!

第8回翻訳ミステリー大賞(2017)受賞作。
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【読書メモ】2010年9月

2019-04-18 18:47:31 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年9月>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。
当時、仕事がめちゃくちゃ立て込んでいて、
逃避するように読書をしていました。
疲れてたのかな、いつもよりライトな本も入ってますね。
そして、メモが全然ない。一切ない。
どんだけ忙しかったんだよ…。怖いわ。


『峠』(上中下巻)司馬遼太郎
(メモなし。
 言わずと知れた(?)長岡藩家老・河井継之助と言えば『峠』
 世の読者が史実と小説を混同する作品の代表作と言えば『峠』
 の、あの『峠』です。
 そういう前提を知った上で読んでも、私の脳内日本史は
 だいぶ『峠』に引っ張られています。
 「桜飯」と言えば大根の味噌漬けを入れたたきこみごはんだよね!
 長岡名物だよね!と言うくらいには引っ張られています。
 実際には、「桜飯」にまつわる資料は発見されていないし、
 郷土料理としても存在確認されていないようです。
 司馬史観の恐るべきパワーここに極まれり、です)


『奇想と微笑-太宰治傑作選』森見登美彦 編/太宰治
(メモなし。
 太宰治の生誕100年の際に出版された短編集。
 有名作というよりは、森見登美彦氏の好みで選ばれた
 「ヘンテコ」「愉快」な19編で構成される一冊です。
 個人的には「カチカチ山」の太宰的解釈のお話しが、
 こういう見方もあるのか~と、印象的でした。
 当時は気づかなかったけど、『太宰治の辞書』(北村薫)を読んだ際に
 太宰は本歌取りというか新釈というか、そういうのが
 本当に上手いし、凄い人なんだなあと、ちょっと印象が変わりました)


『ダーティー・ワーク』絲山秋子
(メモなし。
 『小説すばる』に隔月連載された連作短編集。
 ローリング・ストーンズの曲がそれぞれのタイトルになっています。
 連作としてしっかり構成されていて、
 登場人物がそれぞれ繋がっているので順を追って読むのを
 おススメします)


『ほんたにちゃん』本谷有希子
(メモなし。
 執筆当時は19歳だったそうです。すごいなあ。
 上京したてのイタすぎて尖りすぎて自意識過剰で
 他人事じゃない恥ずかしさなのに面白くて電車では読めない一冊。
 松尾スズキが監修している雑誌『hon-nin(本人)』に連載された
 作家本人を題材とした「本人本」というシリーズの一冊のようです。
 まるっきりの私小説ではなさそうですが。
 作者の名前は「もとやゆきこ」ですが、この本の影響で
 未だに「ほんたにゆきこ」と読んでしまう)


『西原理恵子の人生画力対決』西原理恵子
(メモなし。
 スペリオールに連載されていた画力対決漫画ですね。
 ロフトプラスワンで公開ライブイベントとして実施して、
 その内容を元に漫画化。コンテンツとしてちゃんとしてますよね。
 ゲストが大御所ばっかりで、めちゃくちゃディスっているのに
 ちゃんとウケてて、サイバラさんすごいわ)
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山尾悠子『飛ぶ孔雀』理解不能なのにおもしろい。

2019-04-16 17:23:31 | 日記
山尾悠子『飛ぶ孔雀』を読みました。

私はこの作家さんは存じあげなかったのですが、
根強いファンが多い方みたいですね。
煽り文句も
「伝説の幻想作家、8年ぶりとなる連作長編小説」
と書かれてましたし。

ある事故がきっかけ(?)で火が燃えにくくなった(?)
山と麓の街を舞台にした不思議すぎる物語。
「I 飛ぶ孔雀」「II 不燃性について」の二部構成ですが、
前者が雑誌掲載作で、後者が書き下ろし。

さらに細かい章立てになっているので、
「幻想!」「不思議!」「混沌!」「理解不能!」
がてんこ盛りですが、息継ぎがしやすくてありがたい構成です。

いやもう、本当に「理解不能!」なんですが、
なんか凄いですよ。おもしろいですよ。美しいですよ。

地下の温水プールとか、中洲の家とか、ペレットから取り出す小さな骨とか、
風景が良いし、モチーフも良いし、文章のリズムも良い。
怪しく魅力的な文章で、「わからん!」と思いながらも
意外とすいすい読めてしまいます。
内容は不可解なのに、文章が足腰しっかりしてるというか
骨太で筋が通ってる表現だからでしょうか。
読んでいて安心感がある日本語なのです。
(自分でも何言ってんだって感じの感想ですが)

作者の山尾悠子さんはデビュー当時、
「幻想小説」というジャンルが確立されておらず
「SF」ジャンルの作家に分類されていたようですね。
うん、SFじゃないわ…。

とにもかくにも、理解不能ですが、おもしろかったです!
特に「I 飛ぶ孔雀」が良いので、前半だけでも是非。
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ケイト・モートン『湖畔荘』ゴシック・ミステリ、前半もったり後半すっきり

2019-04-02 16:49:15 | 日記
ケイト・モートン 著、青木純子 訳。

ゴシック・ミステリと紹介されることが多いようですが、
要するに(?)
19世紀初頭の英国のお屋敷と庭園と
貴族階級と庶民と牧歌的風景と海とロンドンがあって、
ちょっと幻想的で懐古的な雰囲気のある、
何かと現在と過去を行き来して過ぎ去りし日を想う、
そんな感じのミステリです。

デビュー2作目の『忘れられた庭園』(2011)に続いて
『秘密』(2013)も<翻訳ミステリー大賞>を受賞したそうで、
勢いのある作家さんです。
『湖畔荘』は邦訳4作目の作品。

上下巻合わせて700ページ近くの長編です。
上巻はもったりしてます(途中で読むのやめようかと思った)が、
エンディングまで辿り着くと、スッキリします。

この方の作風はですね、常に、
イギリス庭園が舞台のひとつであり、
過去と現在を行き来するのが特長です。
あと登場人物が多めです。
そして何らかの喪失を抱えた女性がモッタリ悩んでます。
(だいたいは母性と個性の葛藤です)

はい、以上を踏まえて読むと、導入部分のもったり感というか
戸惑いが、少し解消されるのではないかと。

プロットとしてはしっかりしていて、
最後に色んな伏線を回収してスッキリしてくれるのですが、
『湖畔荘』しかり『秘密の花園』しかり、
上巻がとにかく読みにくいのです。
登場人物が多い割に、人間関係や謎部分が妙に小出しなので。

あと、この人のクセなのか主張なのかわかりませんが、
脳内で想像した風景(特にお屋敷や庭園周辺)の描写が
ものすごく細かいのです。
悪く言うとクドイ。
自分が想像した風景を、読者にも細大漏らさず共有したい
と思っているんじゃないのかな。
私は「ふてぶてしそうなアヒル」を描くのに
そんなに言葉を尽くしてくれなくても良いと思うタイプなので、
ちょっと食傷気味でした。

と、文句ばかり言いましたが、
風呂敷の畳み方はうまかったし
読後感はスッキリしています。

18世紀から19世紀にかけてのイギリスの雰囲気が
お好きな方には、前半も苦にならないのかもしれません。

ミステリとしては、<翻訳ミステリー大賞>は逃しましたが、
『湖畔荘』の方が『忘れられた庭園』より遥かに良くできています。
ゴシック・ミステリの、「ゴシック」より「ミステリ」に
重きを置く方は、まず『湖畔荘』を読むのが良いかと。
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