SMILES@LA

シェルターからやってきたミックス犬のニコとデカピンのニヤ。どちらの名前もSMILEの犬姉妹の思い出を綴ります。

読むだけでなく考える。それもCool Headで。

2017-02-18 23:57:28 | まじめな話

「最初にごめんなさーい。ウザ長でーす。」

Twitterで複数の件数流れてきたので、下記の文章はけっこうな数が拡散されているのだと思います。
ちょっと長いけれど、ご覧になってみてください。
アニマルプラネットで番組にもなっているジェフ・ヤング獣医師の文章です。

「行き過ぎた日本の処分ゼロ運動家と寄付者に贈る Dr.Jeffからの大切なメッセージ」

副題に「譲渡活動・ため込み収容・レスキュー活動では犬猫の個体数過剰状態から抜け出せない!」とあります。
要するに、レスキューして譲渡するだけでは行き場のない動物は無くならない。避妊去勢手術の普及が最重要という訴えです。

ヤング獣医師の考えのベースの部分は私もその通りだと思うし、彼の活動にも賛同します。
でもね、この文章で述べられている枝葉の部分に関しては「ちょっと待ってください」がたくさんある。
SNSで流れてきたこの文章を読んで「そうなんだ〜」と鵜呑みにする前にちょっと考えて頂きたくて、自分のブログに書くことにしました。

以下緑色の文字は本文からの引用です。
大規模な動物愛護団体は、動物の飼育施設、高額な設備、肥大化した給料などにあまりにも多額の資金を無駄遣いしています。
彼らは営利目的の企業のような経営をする傾向があるのです。


この書き方はちょっと偏りすぎじゃないかなあというのが私の考えです。
ヤング獣医師は本文中何度も「無駄に立派な施設」と言及していますが、保護される動物が快適に過ごすためなら何も無駄ではないんじゃないかな。
大規模な保護団体(ベストフレンズやASPCA、ヒューメインソサエティUSAのことかな)は確かに立派な医療設備やトレーニング設備を持っています。
私は自分が寄付したお金がそういうことに使われることは歓迎だし、全く無駄だとは思いません。

営利目的の企業のような経営は、無駄どころか必要不可欠だと思うのは私が常々言っている通り。
もちろん「営利目的の企業のように利益を追求」するのではないですよ。
「営利目的の企業のようにマーケティングを行い、計画的な譲渡活動を追求」することが大切なんです。

給料に多額の資金を無駄遣いしているという部分は、半分は本当、半分は言い過ぎ。
一部の大規模団体の代表の給与は確かに平均的なアメリカのミドルクラスの年収を大きく上回る場合があります。
でも大部分の一般職員の人たちの給与は平均よりもやや少ないくらい。
業務の重さを考えると、資金の無駄遣いなんて言葉を使うのはそういう人たちに対して残酷だなと思います。

上に引用した文章の一つ前の段落でNorth Shore Animal Leagueというアメリカ屈指の大規模団体の名前が挙がっていて
ヤング獣医師はこの団体の避妊去勢教育のプログラムのおかげで犬猫の頭数過剰問題はかなり救われていると述べています。
以下緑文字は引用
過去数十年の間に、North Shore Animal League傘下の教育プログラムである「Spay USA」や
「モンタナ不妊去勢タスクフォース」が運営する移動型クリニック、
ラスベガスのAnimal Foundation of Nevadaが行った大規模な不妊去勢クリニックの建設によって、
犬猫の過剰な繁殖状態はかなり緩和されてきました。


このNorth Shore Animal Leagueこそ、アメリカで一番最初にビジネス的視点で保護活動を行うことを始めた団体です。
(以前にdog actuallyに詳しい記事を書いたことがあります。褒めているんですよ。
 レスキュー活動におけるビジネス的運営の成功1
レスキュー活動におけるビジネス的運営の成功2

そもそも、この文章の主題は「ペットの頭数過剰問題の解決には避妊去勢手術が不可欠」ということなんですが
それは何もヤング獣医師と彼の関わっている団体だけが行っていることではなくて、アメリカ全体の方針です。
ほとんど全ての自治体でペットの避妊去勢手術を義務付けまたは推奨していますし、保護団体で避妊去勢をしない所なんて聞いたことがない。



もう一つの主題である「安易なNO-KILL(殺処分ゼロ)はかえって残酷である」ということ。
これはもちろんその通り。殺処分ゼロにこだわるあまり、保護団体がレスキューホーダーになっている例はたくさんあります。
(これも以前に書いたことがあります。
 No Kill=殺処分ゼロは魔法の言葉か?

他にも獣医師が避妊去勢手術の普及よりも高額な治療にフォーカスしていることを批判している部分があって
大筋では確かに正しい部分もあるけれど、全体に主張が極端じゃないか?という気がする。
こういうのも誠実に診察して経営している獣医さんには気の毒で、悪徳な人には届かないんだよね。

ヤング獣医師は本当に動物を愛していて、行き場がなくて殺処分されている動物たちのことを思うとどうしても熱くなってしまわれるのだと思います。
実際に現場で動物たちに接している方だから、当然のことかもしれない。
けれどこうして文章で何かを伝える時は、いったん頭を冷やしてからの方が良いような気がします。

熱くなって強い言葉を使うと、なんの問題もないきちんとしている人の心が傷つくんですよ。
「お前のことじゃー!」って言いたい人のところには届かないの。
本当に届けたいところに届けようと思ったら、なおさら頭をキリッと冷やして作戦を立てないといけない。

この文章が拡散されている思惑のひとつは、ピースワンコジャパンへの批判を込めてというのがあるんだと思います。
私も以前に一度書いたけれど、確かに千匹近い保護犬に避妊去勢手術を施さずに飼育して
手術をしないまま譲渡するという同団体の方針には賛成しかねます。

団体のサイトに、先日避妊去勢手術をしない方針が記載されたのは良いことですが。

でもね批判をするにしても、そのツールに使おうとしているこの文章は冷静さを欠いているし、偏見じゃないのか?という部分も散見します。
この文章を読んで、いきなり飛びつくのではなく、まずは自分の頭でよーく考えて消化してほしい。
英語の原文が掲載されているAnimals24-7というサイト自体、間違ってはいないけれどちょっと過激な傾向があるサイトだと私は思っています。

いつもいつもしつこく言っているけれど、なにごともKeep a COOL HEAD & a WARM HEARTで。
頭の中が熱くなってると、正しいことも上手くいかないんですよ。
修造さんなんかも、ハートは熱いけど頭は冷静に保ってるからブレないんですよ。

この文章が拡散されて「素晴らしい!」と脊髄反射的なコメントが付いているのを見ていると「ちょっと待ってね」と言いたくて長々と書いてしまいました。


「ほんと長かったわ。でも本当はまだ言い足りないらしいの。」

確かにね(笑)


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コメント (4)
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