早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十五年十二月 第三十巻六号 伊勢路尾張路

2022-07-15 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十五年十二月 第三十巻六号 伊勢路尾張路

   第一信
   大和から伊勢路へ 
   車窓
秋風の草にひかって水まぶし

   松坂
城をさして町ありくなり秋日南

   第二信
   松坂鈴廼屋
鈴廼屋へ脊戸から入るや身に入みて

秋の晝かゝる家ぬちに居りたけれ

鈴廼屋の秋の蚊なれば刺されけり

箱段梯子ちと冷やかにきしむかな

秋の天宣長翁の書斎から

   第五信 湯の山晩餐後、旅情初めての句席
   途上
豊年の神の伊勢路に一日して
  
   松坂
つつしみて振るに身にしむ秋の聯

鈴廼屋の厨をも拜し晝の蟲

秋日南城に空井を覗きけり

城の上の小社秋なりぬかづきぬ

  菰野湯の山
峽の月雲一刷けを放ちたり

障子しめて渓の音なし秋深かき

小男鹿の湯とこそ浸る澄む秋の

   十三夜の後の月、峽の空に冴えざえと午前三時まで句稿整理等。
山の蟲渓に鳴く蟲後の月

ところところ楓紅葉の月にぬれ

旅の夜は一つ机にみな夜長


  第六信 「早春俳句」船済句稿一袋 別送
秋日ざし柱に当てて端書かく 

  第七信 
  熱田神宮参拜
秋の日のさやけき帽をとつて進む

秋眞晝の御まへに陰もなし

神の前身に沁み日本またこゝに

黍の穂の秋日にみだれ桶狭間

秋雲や古き景色の松街道

秋の蝶空より降れば地にも湧く

爽かや海見展けて冬近み

海澄んで旅館は旗をあげてゐる

  第八信  名古屋東山公園 動物園

  第九信
  蒲郡にて
深秋の夕日は雲にともりけり

沖の帆のかたむきしづと秋の暮

入日雲飛ぶ茜してさわやかに

潮風や芒の老いて釆はらふ

鳥付いて魞の浮標筋秋の夕

  第十信
  蒲郡より名古屋に引かやして名古屋城へ
山雲の迅きに野菊かゝはらず

礎も案内の僧も露のもの

露の聲一壷の湛えみだすあり




  







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