早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十六年一月 第三十一巻一号 近詠 俳句

2022-07-23 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十六年一月 第三十一巻一号 近詠 俳句

   近詠
元日の光山河に鎭りぬ

大初日一億民が面に照る

仰いではかゞやく朝日初詣で

生まれましゝ神と嶋とが初光り

あらたまの年のはじめの風とはな

初霞けさに濃きまし魚符の島

はろかはろか空より降れる淑気なれげん

元朝や厨に音のひとつひとつ

野に出でゝ元日巌とさむきかな

戦地よりの句が間に合ふて初句會

南天をゆる風何處と土ぬくし

照り鷽の胸こそ赤し初明り

刈垣のたひらな日南お正月

正月のまことに凪や大漁著

新年の玄關の軍靴誰なるや

いにしへの賑ひ星にお正月

初凪の椿にはれし漁村かな

欄は海や初漁と見たりけり

新支那の南京わたりその春聯

初刷りや第一面の日章旗

月涼し
草の花濶ひきたり月涼し

海の戸に訪ふ見えて月涼し

月涼し茶山いつしか屋根のみち

  春の天
窓あけて見ること楽し春の天

春の天きらきらと降るものゝある

春天に梢のきほひのぼりゐる

  下冷え
下冷えの落葉が土をすべりけり

瀧ありといふ宿の音下冷えぬ

下冷えや砂利敷いてゐるかどの道

下冷えやサイレン枯れて晝を鳴る

   早春社十一月本句會
白菊のばかりあしたをそよりとも

やまなみを菊の東籬に泊り明け

石の上に瀬水走りて菊の下

朝焼けのいまはじまりしけらつゝき

啄木鳥や谷底南人小さく

一山の露そよぎたちけらつゝき

  阪急早春社十月例會 兼題「秋の雑詠」 
燈れば人に隅あり菊の花

露曳いて石にのぼりぬ枯螽

峡の娘はコスモスの中朝早き
  
  東京早春社十一月句會 十一月十九日 日本商工会館 席題「枯野」兼題「小春」
窓小春うちらくらくて壺の花

しらじらと眞上の雲が大枯野

まどの人かれ野見てゐて暮れて行く

   野火止平林寺行
暮れちかくことに紅葉の障子かな

水走りて紅葉の外は大根畑





   目黒雅叙園
巌石を玄關の景に菊の咲く

冬燈間敷五百と聞くからに



  



















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