早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十六年二月 第三十一巻二号 近詠 俳句

2022-07-27 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十六年二月 第三十一巻二号 近詠 俳句

人の作る俳句ではあるが、本當の句は人の巧智に操られてはゐない。
自然の偉大が、作者の經驗と観劇とその純眞な生活に顯はれて來る。
日本の自然は日本人を造り、日本精神は詩化して日本の俳句を醱る。  

   近詠
かれ芒正月すぎていとふるき

凍つるほど瓦は土に還らざる

皇兵の霾降る寒を戦える

落葉照る小さき湊の丘祠

北風落ちしらし川舟の夜をひたひた

比叡いくたび西塔を知らず霜を踏む

冬晴れや村の峠の切り通し

温泉の宿の裏畑雪のほうれん草

マスク笑ふ意固地ながらに矍鑠と

日脚やゝ伸びし鶴飼ふ檻の芝

星鋭しと宵に聴きゐし風邪の床

干し菜して人また住めり庭の奥

杜は舊に寐にきて增ゆる寒鳥

時局化の人緊張し火事の無し

牡蠣船の霜の歩板が旦かな

冬眠を露はされたる蚣迅し

水仙の満咲夜は狐鳴く

寒玉子たゞ一飲みに吸へといふ

芳鮮を射て寒燈のゆるぎなく

寒の池金魚は緋鯉よりも濃き

飛機いかに快き音雲に冬盡くる


  秋
樹々の中ひろきに秋を坐りけり

船聽いて一日秋の小窓ぬち

  秋暁
庭のもの左右に濃ゆくて秋の暁け

秋暁の口嗽ぐ水岸にふかし

秋暁に蝶を見しことうたがわず


早春社初回本句會  兼題「初飛行・乗初」 席題「今年・破魔矢・初漁」
大空のまつたき光初飛行

艦隊の一せい放つ初飛行

東まばゆきよりぞ初飛行

土いじり心今年にはや慣れて

初漁の幸打ちもどる太鼓なれ

  神戸土筆初句會
寒の鳥枝を具さに登りけり

灘五郷海の光つて初霞

寒ぬくし障子の外に摩耶の山

寒鵙を額に聞きつ山かつら

寄する波舳の敷きて初霞

正月や雨忘れ降る雁の夜

  大阪市土木部俳句同好会 兼題「凍て」席題「梅」
凍てつよくこゝら石崖家高き

凍てはれてある時走る水の皺

凍天の映るものなく手水鉢

瓶の底凍てたるものは雨なりし

ふうさとは蔵の日南に梅の花

   二葉會一月例會
初港陸つて小町ふかく行く

海風の木偶の冠りを正すなく

  青鈴句會
猿曳の家毎入る見て城下町

金網に凍鶴の嘴やらやらす

凍鶴のひと羽根綴りほつれたる

凍鶴のきわまる白さ照り曇り

寒凪や町川空の鳶◆
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  






  










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