早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十四年五月 第二十七巻五号 近詠 俳句

2022-02-14 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十四年五月 第二十七巻五号 近詠 俳句

     近詠
一碧の海を空なる春の丘

春晝や踏まじと踏みし牡丹筒

春の海の夜のまくろに波の透く

ひとつ葉を鉢に茂らせ花の過ぎ

花の中二人もたるゝ二木かな

圓卓を獨り領して花の隅

鶴唳に落花空より甚し

楚より眼あぐれば雲の散る

妖のもの胸にたはむれ春の夢

街川や春日なたも棲まぬ水

犬の子を飼うともつかず著我に見る

若鮎の皿にすゞしく全き春

芽ぞろいを仰いで待つや植疱瘡

煮る湯気にほうれん草のいと青く

春嵐の霽れぬ雛菊二鉢いに

靴を埋む露ぽとぽとの杉菜かな

門閉めて木蘭しろき覗き窓

沈丁花雨中挿木す花のまゝ

渓向ふ明るく掃けり春座敷

   卯月波
卯波來て尺地の畠を覗きけり

   北風
北風や岬伏す家に燈をもらす

北風や池の涸れ底日のたまる

北風や山いつとても鳥のこえ

  早春社四月本句會 兼「百千鳥」 席上「岩又は石を詠む」
藪淺く川へ出られて百千鳥

里山のいつと變らず百千鳥

底ころぶ石かあらずか鮎若し

賣石に椿の落つる昔より

   日本橋句座
早春や音を見に出て野の霞

早春や壁に厨の音もよし

早春の風ふみのぼる丘の上

   甲山吟行 (四月吟行)
春陰に見上げてちゝりにぎはしく

春かすみ煙筒船か工場か

飛機低しやがて着水す春の海に

石うらゝ登りひとみち甲山

みちぬくし齒朶笹伐つてふはとある

オーバーなど着て來し悔や花暑し

初蝶と見れば再とぶ水のうへ

春うらゝ雲は丹波に起り來る

山みちや地に伏す木の芽千のぼり

山何處と聲々のして長閑なり

飛機の天に双眼鏡して春涼し

磊塊の岩を踏まへて霞かな

花人の背のあたゝかさを磴急なり

山みづの瀧するほどに春涼し

久方のかすみより飛機白く來ぬ

   神呪寺〜丸川亭
風なしや蝶のぼりゆく松の中

汗入れて花の遅速をながめ居る

   仁川方面に降り関西学院裏
春日の蓬々にあり捨てかまど

みちみちや枯るゝいつまで暖かし

   五句集第3回成績発表
   六氏選
春の宵舟をあるいて舟へ去る

   四氏選
土雛をこの頃置くや書架のうへ

   三氏選
春渚つたふて何処往くとなく

はまゆうに冬越させたるあたゝかき

   二氏選
春の水なにかと浮きてながれくる

































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