早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十四年四月 第二十七巻四号 近詠 俳句

2022-02-13 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十四年四月 第二十七巻四号 近詠 俳句

    近詠
木々の芽の雨はれさまを紅匂ふ

摘草の背いま曇る水も帆も

   天ケ茶屋にて
別れ霜町のはざまに芝畠

椿餅心おごりに購ひにけり

春蘭の花の焦げたる日の静か

鶯を頂上に聴き山暑し

人はみな野良に唖なり鳥交る

   生駒山麓にて
屋根替へに佇ちつくしけり梅の人

桃の花雨はすかいにそれも消ゆ

蝌蚪に思ふチエツコ亡ぶる日なりけり

遠山の歩に岑々す夕雲雀

   高野山吟
春寒し土のあらびに夕ごゝろ

淡雪のつもりて野山むらさきに

石楠の花こしらへて雪を著し

春の夜の何時更けしとも雪ながら

雪しづる音の外なる春夜かな

大門の雪を明日見む春火桶

逍遥す泊まりし朝の雪解寺

三月の雪のまぶしさ音に落つ

山の冷え今朝早や馴れて春日染む

春泥の高野の街をさげすみぬ

雪ぬくし丹の大塔の四方に佇ち

石と我いづれ春日あたゝかき

   炭俵
炭俵積み上げられて月小さし

口柴に山の匂ひや炭俵

炭俵船荷のまゝに二度の雪

交番所の背戸豊かなり炭俵

   秋の天
門に出て四方の旅なり秋の天

秋の天石を投つて池やぶる

みの虫のみなみな若し秋の天

秋の空人の一日街の音

   早春社三月本句會  兼題「霞」席題「春蘭」
春蘭へふむと落葉のさわがしき

春蘭に覗いて下は寺の厨

丘彼方人馬に低き霞かな

   勝田俶子結婚祝賀句筵
初暦よき日の中のよき日かな
   
   無門會新年句會
春水や洛北に來て杉戸の畫 

石階の半に遊び春永し

春永や十萬堂に時俗の夜

冬の芽のちらちら雨に煤も降る

冬の芽や射す日ひとつに池の水

   早春社三月吟行
   牧岡梅行
山みちや照らぬ寒さにつぼすみれ

春寒し山邊小みづを遡る

春さむく山は櫟のかれいろに

   牧岡神社
神の前白うめなれば旭を匂ふ

神前を辭して梅ゆく徑あり

この山にうまるゝ雲を春あかし

梅ぬくゝ瞼に風をたのしみぬ

ひよどりの樹なき渡りて春若し

梅林一處芭蕉の大枯れに






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