早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十四年七月 第二十八巻一号 近詠 俳句

2022-02-21 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十四年七月 第二十八巻一号 近詠 俳句

    近詠
いまごろの洛北想ふ梅雨椿

一水の夕べに青後仰ぎ梅雨の空

梅雨茂り蘩蔞も實に枯れながら

梅雨曇り對岸市バスつかえ往く

でゝむしの窓縁のぼる梅雨のもの

梅雨うとしグラジオラスの咲き綴り

降る雪のひたかぶさりに梅雨霽れて

梅雨の風桐の高き葉破れしある

梅雨の気にまかせて青きこゝろ哉

樹の奥やひとりの我に梅雨匂ふ

梅雨の傘かはして觸れず軒しのぶ

手鏡を舐めわたりけり梅雨の蝿

梅雨日ごろ縁の机に煤を吹く

梅雨疊漁讀いちめんひろがりて

晴れ射して忽ち暑し梅雨往来

梅雨の川濁々として枕がみ

障子照るあかるさ梅雨の月夜半

梅雨煙草口に嫌うて一気吐く

大工ひとり繕くる音の梅雨ごもり

(病院)看護婦等梅雨の廊下をしろしろと

梅雨の街蝙蝠濃ゆく宵となる

   寒の水
なみなみと闇を汲み來し寒の水

寒の水道に蛇行し光りけり

寒の水堪えて壺中不盡かな

   雲雀
眼つむりて雲雀の空におもひ繼ぐ

野をひとり朝の雲雀を眉に聴く

雨の日の雲雀たのしみ野高行く

   早春社六月本句會
かたばみの座も雨後の照り蟻の塔

蟻の塔松いかほどか根上りて

蟻の塔旅は峠にさびしくて

籠の鳥に羽折けの見えて青あらし




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