早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十四年八月 第二十八巻二号 近詠 俳句

2022-02-23 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十四年八月 第二十八巻二号 近詠 俳句


     近詠
しらしらと雲育つなる秋近し

紫陽花の花穀雨をこぼれけり

曳く汽艇曳かるゝ日盛り團平船

藤豆を額のあたりに夜涼かな

灼け甃に水打ちつそこ跣足ゆく

釣葱に風鈴に金魚玉はなかりけり

うしろ組む手に白扇を庭の徑

風涼し句會難義や紙の散る

切炭に石菖植へて人老ひぬ

曝書勞れ是れ即と枕本

貯金箱少女の汗が鼻にある

馴れ様は怖ぢ沈むにも古金魚

薄羽織かけて葭戸に綾そよぐ

土用風ひとつの燕街淺く

草いきれ佳みしところのなつかしく

   初蝶
見さくれば初蝶なりし水を來る

初蝶の心もゆりて飛べるかな

初蝶やこの時花のしづかなり

   早春社七月本句會  兼題「旱天」 序題「朝散歩」「夕散歩」特別兼題「早苗饗さなぶり」
さなぶりやまどのながめに鷲渡る

さなぶりやたのし框に垂れて

朝散歩日の出まともに丘をさす

朝散歩二キロ草まで往きにけり

   六橋觀偶會
南風や雲の走って星ぬぐふ

南風に我帆よその帆鳴りかはし

お花畑に踞みて霧の甘き哉

お花畑そこより雲の渚さかな

ハンモック海の入日にやり眼して

ハンモック低くして脚を夜の芝に

青芒奈良も來ぬけて新家の町

青芒放歌去りゆく道高く

   五句集第五回成績表
海近く思ひて往くに蟻暑し   

水崖に蝶多く見て夏暁かな

朝として磧のあつさあなどりし

   高槻靈松寺と其附近
きざはしに植田の燕ひろく來ぬ

佇ずむに大木降る葉の夏匂ふ

塀若葉梅と楓と交々す

日盛りを根榾と枯れて社頭松

    伊勢寺
往く外に途なし社後の木下闇

猛宗の底ゆく蝶に夏匂ふ

伊勢櫻やぶにまぎれて葉なりけり

なきほどの雲趨りけり南風ふく

蟻のみちにゆれゆれ萩のかげしるく

草いきれ百合のだぐひが汚な咲く

柊のかたちに刈られ日陰なく

釣鐘の錯覚ゆるゝ木下闇

杉戸繪の白鷹あせたり汗の眼に

暑さ快し午蒡六尺花の咲く

日盛りや紫蘇一聯が墓所のみち

    靈松寺句筵
山涼は秋海棠の莖の紅

柿青き下にこゞみて涼をいふ

青楓日の班は池に水浅く

夏嵐投げて空來る燕あり

日の水にゐもり幼きくねりけり

風涼し山内に踏む鳶のかげ

藪路のおはぐろ蜻蛉空去らず

汗の衣を八ツ手に干して寺端居

みちこゝら京へ半ばす藪の夏



 




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