早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十年七月 第二十巻一号 俳句 

2021-10-13 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十年七月 第二十巻一号 俳句

  大楠公六百年祭 第九回楠公俳句會

夏めき賽者のぼるや石舞臺

青南風ふかれて石のみな佛

梅若葉みどりなり楠公忌

南風や海にゆく邊の篠すゝき


  雪解
雪解しておもはぬ庭のふかさ哉

雪解して我立つ杣のあれにけり

  花人
花人の夜明くる汽車下りたちて

花人のすゞしさほむる水の岸

花人の落柿舎とこそ覗くあり

渡舟より山より織りて花の人

  春の星
春の星晨は水に消ゆるかな

春の星藪がさわげばひやゝかし

   中山道北陸道中
   歓迎長野支社大會 
花の下いつと跼めば地も夢と

花に侘び打ち來る雨を見つる哉

我れ古りて花に面のいたき哉
 
   山々會の夜
衣更へて何もせぬ日の机哉

衣更へてよき勞れなる旅の宿

句案なほ千曲川にありて薄暑哉

桜さくら杏花は果てし薄暑哉

徑薄暑すみれと見れば至るところ

  藤棚庵の夕べ
残春を硯の山の乾きかな

頬にふるゝ闇を思ひぬ残る春

  湯桶温泉行
雨の山見上ぐるほどが椿かな

ゆく春や雨ふつてゐる山の土

温泉ごこちにたゞあり雨が残る春

  金澤歓迎句會 清水芳洲 昭和十年五月二日
庭茂り社が置いてあるところ

小茂りや住む瀬も並ぶ一二軒

雨ふるとおもへば水面茂り中

卓上や不順の寒さ金魚玉

ただひとつ寝てゐる尾鰭金魚哉

  大家雁山邸に於ける歓迎俳句會
舷にかがやく波の五月かな

  宋斤・雁山両氏一行歓迎 竹の浦支社句會
青嵐暮るゝ一字に去りおしみ

  遊覧バスにて大阪見物吟會
大阪に今日は旅なり春の風

  大阪城 伏見櫓 
遠かすみ海とおもへば光りけり

  住吉神社
住吉や御四社にふむ春の砂

  早春社六月本句會
床上や兜かざって人遠し

この頃や床の兜に夜の明くる

輿に冠る兜なりけり松の風

乙鳥の眞晝噴水高からず

庭ふかく噴水の宵まぎれなる

噴水や萩も芒も夏若き

  夏の動物五題
  燕の子 
燕の子幾日か經ぬる道飛べる

  鳥の子
鵜の子飼はれて畑に爺があと

  龜の子
龜の子やおもだかの水淺き邉に

  孑孑 ぼうふら
孑孑に葉そよぐ陰の澄みにけり

  蟻
蟻見れば朝の光りの地にありぬ




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