早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十一年八月 第二十二巻二号 近詠 俳句

2022-01-04 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十一年八月 第二十二巻二号 近詠 俳句

  淡路洲本より
   海濱名所の松原 昭和九年の暴風雨の損跡甚だし
夏の海の松に昔を失ふも

里人いふ炎天かくも松漏ると

浴衣着てヘルメット帽子旅の晝

草に置くヘルメット帽埋れけり

  麥門、丘艸等と海に入る
海水衣の腹はりきつて借着なり

遠浅をやたらに来たり蝉とおし

遠浅のゴボと探しやひた泳ぐ

泳ぎなど忘れてゐしが下手は下手

  洲本一所の海底に砂茶碗といふものありと知りたるを計らずも二三得たり、砂茶碗とは砂のゴム状に凝土したるそのかたちのものにて丘艸のいふ蛸のなにかするための業のものなりと

海涼し足にまさぐる砂茶碗

砂茶碗ささげて泳ぐおぼつかな

藻のながき足にひかけて炎暑ふむ

乙女等の倦みて裸形をほしいまゝ

   みくま山
斑猫や躑躅は枯れて山のみち

歯朶ふかき茂りに汗を振りにけり

海を附下汗のあぎとの涼しさよ

夕山となるたのしみを蝉の中

登り切って城の石崖夕とんぼ

  洲本町瞰下
茂りして町一望のとゝのひや

暮れを早や梟の來て夏の枝

  頂上の小祠芝右衛門
夏の闇の狸に名あり芝右衛門

句座ひらく三四十人火蛾の下

風なきを悪みつ火蛾を谷に捨つ

町の燈の星を蒔いたる夏夜かな

下山夜はさすがに蛙涼しけれ


  亀城山荘
大卓の百合はあの百合山の百合

日盛りを山羊笑ふやうに鳴きたてり

芝に來る山羊打水に追はれけり

炎天の山からかゝる蜘蛛の糸

此處も涼し藤椅子運ぶ二三たび

海の欄山涼の縁と句座の人

睡蓮の隅なる池の蛙かな

夕蝉の涼しちらちら青すだれ

白蟵にくゞり歸りて山夜かな

蝉聞いて島の朝飯うまきかな

海からや卓上のものみな風に

  旱
旱天の北斗を常と仰ぎけり

旱なほ土用今日から町の屋根

  土用藤
土用藤夜鳥の入ると見たりけり

噴水のとどかぬ空の土用藤

  夜濯ぎ
燈をさげて夜すゝぎと見ゆひと抱へ

夜濯ぎへ投げ與へけり汗のもの

  ストロー
ストローを弄びゐる丂し皎齒哉

ストローに伏目の睫ながきかな

  船料理
鱗屑を艫にながして舟料理

ともしびに流れうねりて舟料理

  卯波
傘を巌にたゝみて卯波かな

語らへば卯波の光り夜となりつ

卯波たる汐木も宵のほのくろし

  羽蟻
山について町まがりよく羽蟻とぶ

  早春社無月六月例會
菖蒲湯の束つくろふて女の子

早春社四月例會
枝に居てねむるさまなり巣立ち鳥

境内は町のひゞかず巣立鳥

巣立鳥雨にまぎれて鳴きにけり

磯菜つみ日の入りてなほ帆のしるし

舟燋での煙にむせび磯菜つみ

磯菜つみ網つくろへるうしろ邊へ



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