早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十一年六月 第二十一巻六号 近詠 俳句

2021-11-12 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十一年六月 第二十一巻六号 近詠 俳句

    近詠
  信州柏原にて
蕗の臺一茶の里のよき日和

山清水走る雪解を杏散る

  一茶少年の寺社の縁下に臥せしこともありしなどいふ社頭に佇みて
囀りを聴く日のぬくゝ縁の下

幼一茶爪噛みてありし萌え遅し

村のさま本陣もありて暮春かな

柏原や雀も一茶つちくれも

  一茶が棲みしあと
家の裏の桑はほ枯れてつかねられ

春陰や一茶が蔵のひとつ窗

四代目の小林彌太郎麥青し

  一茶位牌堂建立の入佛式に列して
ゆかりの來て堂にながむる春の雲

香焚いて冷酒まはしぬ春の晝

  小丸一茶の墓
山帰來いとけなき葉に小丸山

春の日の墓銘に無くも一茶かな

  注:一茶の墓は小林家の一基中に併葬せられあり、その傍に近時見仰ぐる立派なる一茶の墓を建立せられあるも故人にふさわしからず。
古みちや日南生まれて蝶低く

残雪に來てむらさきの燕かな

とある二階に麥蕎をよばれて竹の秋

春深し山の信濃の北の端

   夏五題
  夏匂ふ
夏匂ふ月をさがして竹の中

盤石に座りて夜や夏匂ふ

  黴
黴いふて茶店女何か出してゐる

黴のものいさぎよく捨つる谷ふかし

  川蜻蛉
川とんぼ筏のあとの渦すこし

みづうみやおはぐろとんぼ浮いてくる

  鮎
鮎の水晴れて時雨のやうにかな

水迅しかげし散るもの鮎迅し

  若竹
若竹の朝を往き行く旅路かな

麓來る霧に濡れたり今年竹

   二百十日
二百十日町を歩けば脛の風

二百十日傘干し並べおだやかに

二百十日竹の青さの中にゐる

   毛絲編
末の子にみなが編むなる毛絲哉

あさあさの日南しばらく毛絲編

つゞくるや腕に膝に毛絲あみ

何になると知らで見てゐる毛絲編

   蓮如忌俳句會 福井縣吉崎霊地
芦の角朝を烏の歩りきけり

芦の芽に花のほこりをのがれ來て

網に砂にまみれて跳ねる桜鯛

鯛あみの空は眞晝の雲雀哉

花の雨ぬれぬほどこそ甍ふる

花の雨水には降って闇ぬく

   宋斤先生御來長歓迎句會 長野支社 長野市蔵春閣
   善光寺開帳奉讃全国俳句大会の選者として
人は夜は欄更けし残る春

残春の山あさくして星ぬくし

残春の乙鳥ひるがへる飜る

竹落葉家のぐるりの田舎哉

掃きよせてみなぬれにけり竹落葉

竹落葉行きてふかきに窓高し

   早春社五月本句會 「藤」「苗札」「穀雨」
藤の花それから町の夜明哉

藤の花巫女往来して雨はれし

藤棚に透く細月の夜半哉

野の音に絶間のありて穀雨哉

冷えびえとなほちる花の穀雨哉

苗札の書きにじみたるさしにけり

   雁山妹故喜子一七日追悼句座
ありしことみな夢となり淡雪の

   阪急對市電俳句會
菜の花の中に少年の志

海照りの曇つてくれば花菜にも

梟の杜の夜明けて花菜かな

諸子賣り朝日さすより來りけり





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