早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十五年五月 第二十九巻五号 近詠 俳句

2022-07-05 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十五年五月 第二十九巻五号 近詠 俳句

  近詠
起きあがるものを心に春の空

春の日に井あり池ありみなまるき

我が影のあらはれて地に柳絮ちる

風光り船の煙りのちぎれがち

なにとじて机のうへの小はまぐり

照鷽は囀り雨鷽ひとりごと

湖國の空に雲なく峰暑し

薄風邪をこもりて聴くや初蛙

かますごの魚臭焼くべき太りかな

かげろうの照降雨してまたぬるゝ舟

筍の出て市にあり春霖す

櫻漬滂沱たるゝを遺しけり

新参の硝子みがきつ往來見つ

春晝や擬氷の壁に熊白し   (動物園)

  徳庵堤 (三句)
町となり野となり春の堤かな

武器厰に一水此方日永土堤

春の堤蕪村歩りくとふと思ふ

紫雲英花晴るゝとき牛明るけれ

春惜しき昨日たそがれ今日暮れて

砂風の水搏ち花を昨日かな

くゝたちて獨逸薊が夏近し


   螻蛄
螻蛄の來て燈下旅情の疊かな

何処這ふて灰まみれなる螻蛄の來る

螻蛄這ふて巒気は闇につのる哉

   梅雨雲

梅雨雲の鳥を収めて薄す薄すと

空遠く梅雨雲連らね明りけり

梅雨雲の趨るかたちに遏まりて


   早春社四月本句會 兼題「大根の花」 席題「風車」
筆立にさす日もありて風車

人の世の風車賣り老ひ晒れて

風車落花の風を吸ひにけり

いぶせくも住めば燈のもれ大根花

大根の花のひとすみ小風して

大根咲くや寺に事ある人通り

   丹波市(天理)にて
吟行や歩るきはじむる餘寒町

春さむく陶しろく神具賣る

黄水仙朝ぬちの日が塀のすそ

   いそがみへの途上
磴のうへ椿に寺の庭と告ぐ

   官弊大社石上神宮
春の日のしばらく漏れて山の辻

小やすみに社務所借らむか小囀り

拝後なほ去りあえず春の雪らしも

   郡山町
吟行子の面かゝやき春の雪
 
   薬師寺
御佛を美術に弄し春寒し

春日を集印乞食我はせず

  
  仁川辨天池畔  早春社四月吟行

あるがまま土筆に句座に行きおくれ

初蝶を水に見つけて黄なりけり

人晴れて遠く往來す櫻の間

雀子の聲をひろげてボート池

水ひとつまたげば土筆林しぬ

花を來て句座の柱によき疲れ

花あかし散りもはじめず晝更けぬ

池の水にごりはしつれ花の散る





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