早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十五年七月 第三十巻一号 近詠 俳句

2022-07-07 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十五年七月 第三十巻一号 近詠 俳句


   近詠
緑陰を一戸けむらしつゞけゝり

蚊遺の火澄みて卓上百合傾しぐ

桃の籠たちこもる香を土間に詰む

雨足りて胡瓜あだ花なほ黄なり

蝉殻の一心摑むなきものを

羽抜鷽駄嗄れのなかに高音する

鷺飛んで雨は漁翁に霽れにけり

梅雨穴や村に入らずの鎮守徑

青竹を切っては倒す虹の前

露涼し桐の空までぬかご蔓

夕焼けを鳥もたゝねばさへぎらず

徹宵のあるとき奮ふ蝿叩

朝波を端居の胸にうけて居つ

水鳥の涼し傷兵語る背に

鹿の子の雨踏んでゐる蹄かな

うすものと書きしより句の假名ばかり

岡のうへひとすじ小徑老鶯に

夏服に巷の腕は乙女たち

夏の蝶湖またゞ中船とゆく

梅雨出水朝のこゝろを欄に置く

夏やせてよく出る乳よ大きな兒よ

泰山木雨雲ひろく空を退く

石菖にまざり芽生えて外の草

黒松の一鉢梅雨の葉をふかみ

  青桐
青桐の塀をしばらく往く庭ぞ

青桐を空にぬけたる蝶くろし

青桐の一木を風南かな

  春最中
春最中しづかに歩りく竹の裡

柴垣を春最中びと往來して

春最中小雨する日も草つけて

  第十四回楠公忌  六月九日於豊中市走井浄行寺
楠の花けふと仰ぎつ楠公忌

楠の花かほどに散って地の明し

そばえして麥のしみじみ黄なりけり

走井のあとかた埋まり竹ちる葉

もちの垣咲くに肩すり村の辻

   早春社六月本句會  兼題「雑詠」席題「濱木綿の花」「仙人掌の花」
しゃぼてんや小さき鉢に砂あつく

濱木綿の土にくも手のかげしるく

燕の夕苗代の雨を待つ

   二葉會五月例會
松の花鳥居はるかに閑たりぬ

水兵等港の羽蟻なつかしみ
 
   二葉會六月例會
早乙女の濡れ顔雨のなほ打ちて

鳬の子や湖ぞらまひる雲の層

   青鈴會 第参拾七會
花は夜にしろぎばかりを憂き別れ

旅は夜の遍路にくしきものがたり

雨の花遍路の老に行き越され

   青鈴會 第参拾八會
燈にあれば牡丹夜を勞れたり

松蝉の泉壺にひびく頂上亭

街薄暑往来よろしや箒のころ

牡丹園鳥飼はれて紐を飛ぶ













こじ

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