花巻市で、ハナショウブの原種の様子を確認した後、私は車を盛岡市近郊の雫石町へ走らせました。
雫石町で、大学時代の同窓生の大松君が牧場を経営しています。
実は昨春、同窓会の件で電話をすると、彼は脳梗塞を発症し入院することになったと言うのです。
電話の様子は、それほど切迫しておらず、見舞いには行きませんでしたが、今回は必ず顔を見に行こうと考えました。
彼は9年前、九州博多の同窓会に、昼まで牧場で働き、午後の飛行機で福岡に駆けつけてくれました。それ程に誠実な人柄ですから、もう50年以上の付き合いになりますが、一度も彼の悪口を耳にしたことがありません。
しかし私は、雫石へ向かう途中で、大きなミスに気づきました。
今回の旅で会う予定の人達の住所や電話番号を記したメモを忘れたのです。
10年以上前に一度、大松牧場を訪ねましたが、ナビ無しで行ける自信は全くありません。
そこで私は、雫石町交番のお巡りさんに、「岩手山の山裾の大松牧場に行きたいのですが」と尋ねました。
巡りさん達は机の上に大きな地図を広げると、難なく牧場を探し出してくれたのです。
雫石町交番の皆様、その節は本当にありがとうございました。
予定より時間が遅くなったので、雫石の駅前食堂で、腹ごしらえをして牧場へ向かうことにしました。
注文したのは、ご当地名物の「よしゃれそば」です。
そばの上に、この地で採れた山菜がテンコ盛りでした。
都会では味わえない、素朴で奥深いそばで腹がいっぱいになりました。
よしゃれそばを説明するHPを見つけたので、リンクさせて頂きます。
牧場を訪ねると、搾乳作業が19時半頃に終わるというので、再度出直すと、奥様が車椅子で出てこられました。
驚いて話を聞くと、昨年、腰痛症治療の為に脊椎を固定していた金具が外れ、神経を傷つけ、足を動かせなくなったそうです。
大松君が脳梗塞の治療を終えて退院した翌日、奥様が整形外科病院に入院したとのことで、言葉もありませんでした。
さだまさしの「無縁坂」の歌詞にこんな一節があります。
「運がいいとか 悪いとか 人はそれぞれ口にするけど そうゆうことって 確かにあると・・・ 」
そして悲しいかな、私にできることは限られます。
それでも、久しぶりに大松君と会って、積もる話に花を咲かせた後、私は青森港へ向けて車を走らせ、予定通りに、青森港26時発のフェリーに乗ることができました。
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